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彼女たちは幸せ?それとも不幸せ?『ばにらさま』感想
女だけが背負っている宿命がある。
そしてそれは、女にとって望ましいものではない。
私はずっとそういう感覚を抱えたまま生きていた(他の女性がどう感じているかは知りませんが)。
そんな「女」たちの人生の一部を切り取って描いた短編集が本書、「ばにらさま」だ。
本書に登場する「彼女たち」が、幸せなのかそれとも不幸せなのか、人によって意見が分かれると思う。
あらすじ
冴えない主人公にできた初めての恋人。
彼女は真っ白で、体が冷たくて、バニラアイスみたいだった。
僕の前では優しく微笑んでいる彼女だけど、本当の気持ちを僕は知っている……。
短編6篇を収録。
恋人は幸せへのキップじゃない
『ばにらさま』を読んだ感想としてまず思ったのが、男に依存して生きるとろくな目にあわないよね、ということ。
男の人(恋人)を、自分のつまらない人生の一発逆転カードみたいに思って、愛されることに重きを置くと、必ず失敗する。
なぜなら相手は他人だからです。
あなたの人生を幸せにするために存在するわけじゃないからです。
これを体感としてわかってない人間はわりと多くて、特に恋愛経験の少ない人間は「恋人=幸せ」という図式を頭の中に刻まれている。
『ばにらさま』に登場する女性の多くに、そのような気配を感じた。
でも実際は、恋人がいることによって生じる不幸もたくさんある。また、人間同士なので様々な軋轢が生じ、ストレスの原因になったりもする。
「恋人=幸せ」だと思ってる人たちって、その辺が頭から抜けてるというか。
「プラマイプラス(の場合もある)」であって、「オールプラス」なわけではない。
その辺をちゃんとわかってないと、恋人ができても不幸になるだけだと思った。たぶん「ばにらさま」はそれがわかってなかった気がする。
不幸も幸せも誰が決めるの?
「菓子苑」の胡桃なんかはただただ不幸なわけじゃなくて、客観的な事実を見ると不幸そうなのに、本人はわりと楽しそうにしていたりする。
逆に、「20×20」の主人公は、客観的に見て幸せそうなのに、本人の内心はどこか不幸そうなオーラがただよっていたりする。
『ばにらさま』に登場する女性たちには、そんなちぐはぐさを感じた。
幸せも不幸せも、一体誰が決めるんだろう。
客観とも主観とも言い切れないと思う。
客観的に不幸でも、本人が幸せなら幸せだ、と思う人が多いと思うけれど、私はそう思わない。
客観的に不幸なのに、主観的に幸せな人って、世界がめちゃくちゃ狭かったりする。だから、別の世界を知ってしまうと、あっさりと不幸を感じ始める。井の中の蛙みたいな。
ブータンなんかまさしくそうだ。ブータンって、豊かじゃないのに国民の幸福度ランキングが世界一高くて、「世界一幸せな国」って言われてた。
けど、国民がスマホを持つようになって、他国の豊かさを知るようになると、幸福度ランキングが急落した。
そういうことって往々にしてある。
なので、主観的幸せ=真の幸せではないと思う。
じゃあ客観的幸せこそが真の幸せか、って言われたらそれも違うと思うけども。
何がほんとの幸せかわからないまま、それでも各々の「幸せ」を追い求めて生きていかないといけないのだなあという感想です。
私はどちらかというと、客観的に見たときに幸せになりたいなあ。
理想の生き方
「20×20」と「子供おばさん」の主人公の生き方はかなり理想的だなと感じた。
「自立した女性」ってところがキーワードで、女がされがちな世間的評価(結婚しているか、子供がいるか)の部分はどうでもいい。
1人で生計を立てていて、精神的にも誰かに依存していないというところがすごくうらやましい。
まだまだ男尊女卑が根深い世の中で、女性が「自立」することは、選ばれた一部の特権であることが現実だ。
男性が当たり前に「自立」できるくらいに、女性も「自立」できる可能性を当然に与えられる世界になってほしい。
私の理想は、夫を専業主夫にしてあげられるくらい稼ぐことなのだが、現状私が主婦なのがすごく辛い。
夫に「いつでも仕事辞めていいよ!私が稼ぐから安心してね」って言いたい。
まあ私の場合は、性別以前に病気だの障害だのトラウマだのを克服しないといけない気がするが……。
夫一馬力に頼る生活じゃなくて、夫婦二馬力とか、あるいは妻一馬力とか、そういう選択肢が私たちにもあると嬉しいな、と思っている。
おわり
なんとなく手に取ったものの、思った以上に良い作品で、この本に出会えてよかったなあという気持ち。
ハッピーエンドかわからない、でもバッドエンドでもメリーバッドエンドでもない、そんな絶妙に「人生」を体現したような読後感だった。
ここまで読んでくれてありがとう。
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