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鬱病の私から見た、躁鬱病の彼『躁鬱大学』感想

私は鬱病と診断されている。
しかし近しい人から「気分の波が激しい、躁鬱ではないか?」と言われたため、この本を読んでみた。

ちなみに、今は「躁鬱病」ではなく「双極性障害」と言われる方が一般的らしい。

全て個人的な意見・感想です!

軽い内容紹介

本書は躁鬱病である著者が、「大学の講義をする」という設定で書かれた本である。
躁鬱病を病気としてでなく「体質」ととらえ、具体的にどのような体質なのか、どのように対処していけばいいのか、コミカルな軽い文体で「講義」がすすめられていく。

①「躁鬱人」の生態

結論、自分は躁鬱でないことがわかった。
なぜなら、全然共感できないから。

表紙の『気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません』という部分に惹かれて読んだのだが、全く理解できなかったため、私の気分の波はあくまでも鬱病の範囲での波だということがわかった。

というわけで、以後は「躁鬱病ってこういう病気なんだね〜」という気持ちで読んでいった。

著者は躁鬱病とは言わず『躁鬱人』と呼称しているため、著者風に言うと、「躁鬱人の生態を知る」ような気持ちだ。

ところで、1番気になることがあるのだが、それは「躁鬱病の人って本当にみんなこんな感じなの?」ということだ。

著者は読者(躁鬱病の人を想定している)に向かって、「めっちゃ共感できるでしょ?まるで自分のことが書いてあるみたいでしょ?」みたいなことを繰り返し語りかける。

しかし、それがあくまで「著者の症状」なのか、それとも、「躁鬱病に共通する症状」なのかは、自分が躁鬱病でないため判断がつかなかった。

この本を読んだ躁鬱病の人がいれば、ぜひ教えてほしい〜!!!

とりあえず以下は著者の言うとおり、「著者の症状=躁鬱病共通の症状」として捉えてみる。

②躁鬱人にとっての「鬱」とは

「躁鬱病」は名前のとおり、「躁状態」と「鬱状態」を繰り返すものだが、躁鬱病にとっての「鬱状態」と、鬱病にとっての「鬱状態」は全然違うものなのではないかと感じた。

著者は、「鬱になったらすぐオナニーする」「鬱になっても、綺麗なお姉さんが一方的にエロいことしてくれたら、すぐ鬱から明ける」(要約)と言っている。

でも、鬱病って性欲減退することない???

少なくとも私が鬱状態の時って、性的なこととか全然考えられなくて、むしろ嫌悪感。

鬱の時に綺麗なお姉さんとエロいことしたいな〜!!という発想なんて出ない。

また、精神科での問診票にも、「性欲が減退したかどうか」をチェックする項目があり、「減退した」にチェックを入れた場合は鬱が疑われる(もちろんそれだけで判断するわけではない)。やはり鬱の一般的症状として、「性欲がなくなる」ことが多いと思う。

そう考えると、鬱になっても「オナニー!お姉さんとエロいこと!」という思考ができる躁鬱病にとっての「鬱」と、鬱病にとっての「鬱」は全く違うものなのではないか。

だとすると、「躁鬱病」のネーミングはやはり良くない。鬱病の「鬱」になるのだと思われてしまう。
「双極性障害」になってよかった〜。

③躁鬱人の「エロ」に対する認知

躁鬱病は「気持ちがいいこと」に弱いので、快楽に弱い。つまり、エロいことが大好き(要約)。ということを著者が述べているが、これも躁鬱病共通なのか、怪しい。

本書を読んでいると、性的なことに対する捉え方が、私と著者では大きく異なるな、と感じる箇所がちょくちょく出てくる。

それこそ「鬱になったらオナニーする」「お姉さんとエロいことすればすぐ鬱明けする」というのもそうだ。

「性的に気持ちいいこと」に、鬱を抜けさせるほどの強いパワーが果たしてあるのか……と思う。

また、風俗嬢に対して「自分の体でお客さんを喜ばせる、躁鬱病にとって最適な仕事(要約)」と言ったり、「添い寝をしながら女の子を励ましてあげる会社を立ち上げようとした」とか、なんだか性的な価値観がズレているような……。

風俗については、貧困•病気•障害•虐待など、理不尽なバックグラウンドがある人が搾取されやすい形態を持っているという、社会の構造や女性の立場の弱さを象徴する、大きく複雑な問題であるため、「体でお客さんを喜ばせている」などと安易に肯定できるものではない。

また、「風俗は躁鬱病の女に最適」という言説も不思議だ。「病気だったり働けない女は、風俗やればいい」という風潮に加担しているように思う。

そして、「女の子に添い寝して励ます会社」については全く意味がわからない。
なぜ女に限定しているのか。なぜ添い寝をする必要があるのか。なぜ自分が女の子に添い寝をしたら喜ばれると思ったのか。

それ以外にも、女の子と話したい(著者には妻がいるが、おそらく妻以外に)という描写がしばしば出てきたり、「女性に性的サービスをする仕事につきたい」など、この人は性依存なのではないか?という印象が残った。
それか単純に彼の認知が歪んでいるのか……。

実際に精神病持ちで、風俗で働かないといけなくなる可能性のある私としては、読んでいて不快なものだった。

④躁状態が楽しそうに見える

なんだか著者の書き方だと、「躁状態」がとても楽しそうに見える。
実際に楽しいのかどうかは知らない。しかし実に楽しそうに見える

万能感にあふれ、たくさん仕事をこなし、自尊心が高い。躁状態のときの自分がこなした仕事を見て、また仕事の依頼がくる。

鬱状態さえ乗りこなしてしまえば、健常者よりもすごいことができそうじゃないか?と思った。

ただ、病院の先生から聞いた話だと、希死念慮をかかえた躁鬱病の患者は、鬱状態より躁状態の方が自殺リスクが高いらしい。
それを考えると結構危険な状態ではいるのかもしれない。

そうは言っても、鬱で何もできないことに悩んでいる私からすると、一時的にでも「すごく色々なことができる」状態になれるのが羨ましい。
会社員みたいな、必ずこの日この時間にここにいなければならない、という仕事形態は無理でも、著者のようなクリエイティブな仕事であれば、躁鬱でも全然やっていけるなと思った。

クリエイティブな才能のある著者が、鬱病でなく躁鬱病であったことは、不幸中の幸いかもしれない。

おわり

著者の症状が躁鬱人一般に当てはまるのからわからないが、自分の知らない躁鬱人の生態を知れて面白かった。

躁鬱病の人が読んだら果たして共感できるのだろうか、気になる〜。

鬱病の私からみた躁鬱人への感想でした。

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