見出し画像

トイレの『音消し』を考察したら、カフェがタンポポの園になったり、クラブになったりした話

飲食店なんかのトイレを利用する時、「音姫」なるものがある場合があります。
公共の場ですので、ものすごく丁寧な言い方をすると『致し』の時に伴う音を誤魔化す、いわゆる「音消し」というものです。一般的には、流水の音が一定時間流れ続けることが多いですよね。
昔入ったとある喫茶店で、僕がこの音消しボタンを押すと、サラサラとしたお気持ち程度の流水音と共に「チュンチュン」「ホーホケキョ」といった、小鳥たちののどかな鳴き声が流れてきた時は、ちょっとウケてしまいました。
店内の人からしたら「ホトトギスが今トイレを利用しているのか?」と思われたことでしょう。

僕の『致し音』が日常より小鳥の囀(さえず)りのような音であれば成立するかもしれないな、とその時は思ったのですが、これはむしろ間違っています。
その考えに則ってしまえば最適な音消しボタンは、押せば『スーパーストレートに『致し音』が流れてくる』最悪な代物となってしまいます。
ブーブークッション以来の衝撃です。
これではむしろ「音消し」ではなくて「音増し」となってしまいます。
それはそれで面白い用途はありそうだな、と思ってしまうのですが、 音消しという目的からしたら適切ではありません。
どのような音消し行為が、最適だと言えるのでしょうか。

『致す』という行為をそれとなしに伝える隠語として「お花を摘む」というものがあります。これを利用できないでしょうか。 この言い回しが広く使われているということは、「花を摘む」という行為が私たちにとって、トイレと双極を成す概念だという共通認識があります。
つまり、花を摘むことをイメージさせることで、『致す』ことを想起させないことが可能になります。

そこで、トイレ内の音消しボタンを押すと、店内放送にて 「(ピンポンパンポーン)当店をご利用のみなさま。目を閉じて、想像してみてください。あなたは今、お花畑の真ん中にいます。あちらには、黄色いタンポポの花が咲いています。タンポポの花言葉は「真心の愛」。ぜひ一つ、お摘みください。あなたにとっての真心の愛が、あなたの手の中にあります。」 と流れる装置はいかがでしょうか。
利用客の脳内および心象風景をお花畑にすることができますので、トイレの存在を忘れさせます。

いっそ花摘みに駆り出させても良さそうですね。 「(ピンポンパンポーン)当店をご利用のみなさま。ご起立ください。お花摘みタイムです。当店の前にございます、タンポポの園に集合ください。」 これで店内は無人。無遠慮に『致す』ことが可能です。店内の利用者もたんぽぽを摘むことができますので、みんなハッピーですね。 誰かがトイレを利用するたびにお花摘みタイムが発生するため、タンポポの園を維持運用させることに課題がありそうでしょうが、まぁなんとかなるでしょう。タンポポの繁殖力すごいし。

他には、どのような音消しが最適なのでしょうか。 トイレの方から何かしらの「音消し音」が流れてきても、それは外部の人からしてみたら、その音が聞こえてしまうため、(今誰かが『致し』ているな…)と考えてしまうのです。直接的な音でなくても、そのイメージを想起してしまうことは、避けたいものです。

そこで、逆の発想で「店内の音楽のボリュームが一時的に上がる」というのはいかがでしょうか。これであれば平常状態との差異はあまりありません。『致す』ことを察知されずに済むのではないでしょうか。
トイレの中にボタンがあり、押せば店内BGMが一時的に上がります。

しかし、この方法においても、他の人たちの共通理解として、『致す時には店内BGMのボリュームが一時的に上がる』ということが知れ渡ってしまえば、同じことです。(あ〜、今致されているな〜)と、想起してしまうわけですよ。もっと良い方法はないのでしょうか。

これらの考えを元に、一つの解決方法が見えてきました。 それは「常に店内BGMのボリュームを最大にしておく」ことです。 これであれば、完全な音消しが再現可能です。 もはや、トイレ内には何も装置が必要なくなりました。 追加コスト0ですね。

そして流す音楽は、ゆったりヒーリングミュージックでは無くて、EDMなどの激しめなものが良いでしょうね。大事なのは、致す音の音消しですからね。 利用者の意識をより音楽に逸らすために、店長さんはフロアの盛り上がり具合に応じたリミックスミュージックをDJブースからかけると良いでしょう。

いかがでしょうか。 僕のせいで、全国のおしゃれなカフェが、激しめなクラブみたいになってしまいましたが、無事に音消しに成功しました。 この解決方法がここから風に乗って広がっていき、多くの困っている人を救い出す芽となりますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?