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選挙に行かなくてケシカランのは、若者ではなく40代だという話

「若者は選挙に行かない」とか言うけれど

若い人の投票率が低いことが問題としてしばしば指摘されますが、若い人の投票率は、上の世代と比べて低くなるのは、いつの時代でも変わりません。

よく見るのはこうしたグラフでしょう。

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 若いうちは自分の暮らしと政治のつながりが見えにくく、実際、ダブルケアに追われる世代が、親世代の高齢者問題も、子ども世代の教育問題も、家計に絡む税金問題も、あらかた気になってしまうのに比べれば、関心が高まりにくいのは、そりゃそうだろうなと。

 ただ、年を追うごとに上の世代との投票率の高低の開きが大きくなっている傾向にあるのは、若者が政治離れしてるのか、はたまた政治が若者離れしてるのか、もうちょっとつなぎとめる手立ては必要そうではある。

 ところで、若者の投票率が低いのは云々とか言いそうないまの中年やシニアは、若いときどのくらい投票に行っていたのか。気になったので2年前に一度調べてみたので、この記事でシェアします。

アラサー時代から40年以上、ずっと投票率70%超えの集団がいる

 2019年時点で75歳の人から10歳刻みで、25歳の人まで、それぞれ何歳のときどのくらいの投票率を維持してきたのかを、衆議院総選挙(第32~48回)のデータを元に年齢別投票率で表にしてみました。

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 すると、若者の政治離れというよりも、政治離れの高年齢化(?)みたいなものが見えてきました。

 2019年時点で75歳の人だと、第32回衆議院総選挙が実施された1969当時は25歳。このときの彼らの投票率は59.01%と高い水準にありますが、この年の実際の投票率は68.51%なので、全体よりは低い数字です。やはりいまの高齢者でも、20代の頃の投票率は相対的には低かった。

 ところがこの世代、彼らが32歳のときに迎えた第34回以降、全体の投票率を超え続けていて、しかも30代以降、一昨年の第48回までずっと投票率70%以上をキープしています。アラサー時代から40年以上、ずっと投票率70%超えの集団。おそるべし。

 ひと世代下で2019年時点で65歳の人たちも、概ね60~70%台をうろうろしながら、36歳のときの第39回以降はずっと全体の投票率を超えています。

第二次ベビーブーム世代は何歳になっても選挙に行かない

 ところが、2019年時点で55歳の人たちになると、40代になってようやく超えるようになり、2019年時点で45歳の人たちは、43歳で迎えた前回の総選挙でもいまだ超えるに至りません。いま35歳の人たちは言わずもがなですが、この世代になると20歳以降に迎えた過去5回の選挙のいずれでも、投票率が5割以下の水準です。

 高齢化が進んでいるため、時代がくだるにつれて若い世代は実数で劣り、全体の投票率を超えにくくなるという事情もありそうなので、必ずしも横並びでの比較は適正でない面はあるにせよ、最後のボリュームゾーンである第二次ベビーブーマーの45歳は、もうちょっと選挙行けよって話でもあります。

 そもそもこの世代、最初の衆院選の1996年の投票率が31.1%で、このときの全体の投票率と比べても、ちょっと低すぎだったんじゃねーかと。

 ちなみに2019年当時の45歳というのは、私と同じ1974年生まれの人たち。冒頭で、ダブルケアに追われる世代が…と書いてみたものの、選挙行ってないのお前らじゃねーかというのは、なんつーか、ズッコケるしかない。

政治をシカトし続け、政治にシカトされ続けた40代

 1974年生まれの人たちは、「山は動いた」(by土井たか子)の頃は中学生だし、1993年の政権交代も19歳で有権者としてはギリギリ体験しておらず、中選挙区時代を知らない第一世代。

 東京・大阪にいた人たちは95年の統一地方選で青島・ノック現象と呼ばれた知事選が、おそらく最初の大きな選挙体験で、「無党派層」なんて言葉がもてはやされるのを見ながら、「支持政党などないのがイマドキなのだ」的な空気感で、政治的な態度作っていったと思われ。

 一方、中高生時代にはゴリゴリの偏差値教育、社会に出ようとしたら氷河期世代、さらにひきこもりだ、非正規雇用だ、あーだこーだ、挙句にロスジェネとか言われ、政治に振り回されるだけ振り回されたまま歳を重ねるも、自分から政治に構いに行く術も知らず、故に政治にも延々と無視され、永田町や霞ヶ関を相手に不毛なシカト合戦を続けている。

 ただでさえ人口多いくせに消費を牽引しないだの、第三次ベビーブームを起こさなかっただの、ひきこもりだの、パラサイトだのetc.若い世代から見たら「何このお荷物世代?」とか思われてるんじゃないかと戦々恐々としながら、30年後には後期高齢者のボリュームゾーンとして老後へ向かっていくぼくたちわたしたち。

 ようやく政治がこっちを向き始めたと思ったら、40代後半になって「人生再設計第一世代」とか言われる始末。そろそろ怒っていいんじゃないか。


「投票したい人がいない」を四半世紀も振りかざすな

 今回の衆院選、我々は当事者だ。どんな社会を作りたいかとかはいいから、自分がどんな暮らしや営みをしたいのか、それを叶えると叫んでいるのはだれか、その一点で投票する先を選んでみたらいいと思う。

 「投票したい人がいない」とか、20代の頃の言い訳を50近くなっても繰り返していては、いい加減かっこわるい。まぁ、少しでもましと思える方に投じるのが選挙だって、教わってないし、自分から身につけにもいかなかったもんね、って、そんなんだからダメだっつの。

 甘利さんが体制選択だと煽り、枝野さんが単独過半数だと荒ぶり、ファーストの会って何ファーストなの?と思ったら撤退ファーストかいっ!とか、政局ネタを消費するのも楽しいけど、そういうのも全部、ぜーーーんぶ、脇に置いといていい。

自分の暮らしから政治的態度を作っていこう

 自分のいまの暮らしを本当はどうしたいか。ただ一点でもう一度、この世代の政治的態度を作っていこうじゃないか。

 会社にしがみつかないといけない人生でも幸せであっていいだろ、とか、自分の子どもが教育格差に押し込められたらイヤだな、とか、最近身体にガタがきてるけどこんなんで人生100年とかどーすんだろ、とか、バブル世代はいつまでおれたちを都合よく使うつもりだよ、とか、「最近の若いヤツはなってねぇ」なんて愚痴ってたらむしろ最近の20代は自分より全然優秀でいつかこいつらに生殺与奪握られるの怖すぎる、とか、なんかあるでしょ。

 40代前半まで衆院選の投票率が5割以下、つまり20年ほど政治をサボっていた我々も、いい加減、人生後半ですよ。さすがにそろそろ動き出さなきゃじゃないか。

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