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No.6 C-INKの秘密兵器、試作プリンターはこうして生まれた

はじめまして、C-INKの金原正幸と申します。
C-INKはこのたび、2度目の株式投資型クラウドファンディングによる資金調達への挑戦を決めました。

このnoteでは事業の裏話についてお伝えしていければと思います。今回は、ついに完成!?念願の試作プリンター!の裏側をお伝えします。

※C-INKのクラウドファンディングは2024年1月25日(木)19:30から開始します。募集ページは以下のURLからご覧いただけます。


なぜ試作インクジェットプリンターが必要?

C-INKが供給するインクジェットでのプロセスは新しい方法で、多くの顧客候補は馴染みがありません。インクジェットを触った事がない方に普及を促すには、簡便にインクジェット試作を行える環境を用意する必要があります。これまでは、精度の良い試作プリンターを購入するには1000万円程度は必要でした。この状況を変えて、しかも量産プリンターまで同じスペックで引き継ぎができるプリンターは必要不可欠と考えていました。

それに、多くの顧客は、まず手持ちの材料に良い精度で印刷して欲しいと考えます。C-INKにもそうした要望が寄せられますが、C-INKでは精度の良いプリンターは持っていませんでした。長い間、家庭用プリンターと同じくらいの精度で印刷して対応してきましたが、やはりこれでは間に合わなくなってきていて、もっと精度の良い印刷、例えば線幅で100μmを切るようなパターンを要求されるようになってきました。C-INKとしても、クオリティの高い試作プリンターは必要不可欠なフェーズに入ってきていました。

苦い失敗から

C-INKは創業間もないころ、試作プリンターを自社開発しようとした時期がありました。当時はハードウェア開発は初めてで、資金計画も当然甘く、なんとか形になるまでは作る事ができましたが、顧客に販売できるレベルにするまで完成度を高める前に資金が底をついて断念した苦い経験があります。とはいえ、展示会に未完成のプリンターを持っていってデモしているときに、このままで良いから売ってくれという中国の方がいらっしゃったり、ニーズはやはりあると確信していました。

新たな開発開始!ところが、、

以前の苦い経験から、自社で全て開発するのはやめて、ベースとなる良いプリンターを改造する方向で動くことにしました。まず日本国内で探すと、物は良くても価格は700万円くらいは最低でも必要でした。これでは結局従来と同じ状況です。なので日本製は諦めて、文字通り世界中を探して気が付いたのは、インクジェットプリンターの先進国は中国という事実です。世界の工場は伊達ではありません。その後も、中国のものづくりの強さをヒシヒシと感じる事になるのですが、それはまた別の機会に。

さて、中国メーカーにターゲットを絞って探し始めたのですが、まず壁で立ちはだかったのがコミュニケーションの難しさです。中国にはインクジェットプリンターメーカーが無数にあり、初期のコンタクトはほぼ全員がテクノロジーに疎い受付用窓口が対応してきます。こちらのニーズをいくら伝えても、要領を得ない返信ばかりでそろそろ半分くらい諦めて来た頃に、ようやく英語でスムーズにコミュニケーションできる担当者に出会いました。理解も早く、もうこの人しかいないんじゃないかと思いました。そのメーカーのプリンターのスペックを調べると、行けるかもしれないな、そう思えるものでした。

早速1台を購入して、C-INKの銀ナノインクを使ってテストを開始しました。まず問題となったのが、インクの無駄使いです。当初の状態では、なんと98%のインクが捨てられて、印刷に使えるのはたった2%でした。C-INKは銀や金のインクなので、普通のカラー印刷用インクよりもだいぶ高価です。2%しかインクを使えないプリンターは困ります。それに、インクジェットで必須のメンテナンスがものすごく大変な構造でした。少なくともこの2点を解決できなければ、気軽に使える商品にはなりません。

C-INKにはこれを解決するアイディアがいくつかありました。早速、メーカーにこんな構造に改造をして欲しいのだけど、パーツ製作は可能か打診しました。できるというので任せると、一向にできて来ません。確実に後回しにされてるヤツだ、、何度もプッシュして、数ヶ月してようやく完成した部品は、結局使い物になりませんでした。パーツに関しては自分たちで解決しないと無理だと分かりましたので、ここは日本国内の試作メーカーに依頼して、3Dプリンターでパーツを作りました。何度かトライアンドエラーを繰り返して、商品化できるレベルのパーツ作成に成功しました。ここまで来るのに1年近くかかっています。そして、当初解決可能と考えていた印刷品質がいまだに未解決なのには非常に嫌な予感がして来た頃、メーカーができないと言い出したのです。結局、当初予定していたメーカーは諦めざるを得ませんでした。

ついに完成へ!

とはいえ、C-INKはその間に様々なノウハウを獲得していました。失敗は成功への過程に過ぎない、まさにその通りでした。

以前にプリンター探索を行ったときの受付とのあの不毛なコミュニケーションを思い出して少しブルーになりつつ、メーカーの再探索を開始しました。そうすると、割と簡単に次のメーカーが見つかったのです。しかも、C-INKが右往左往していたこの1年の間に、新しい設計の素晴らしいプリンターがちょうど発売された時期だったのです。なんというラッキーが待っていたのでしょうか。諦めが悪いと良い事があるのですね。以下の画像は、線幅50μmのデータで描画した結果です。ご覧頂けるように、このレベルの細線をキレイに分離して描く事ができます。このクオリティは、数千万円クラスの産業用インクジェットプリンターでようやく実現できるレベルです。C-INKは、世界最高レベルの試作プリンターを供給できる見通しが立ちました。これをなんと!3-400万円で全世界に供給します。このプリンターによって、ナノインクの普及速度は大きく加速するでしょう。C-INK試作プリンターによってどんな物語が産まれるか、続報をお楽しみに!

線幅50μmのテスト描画結果


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