27歳男性恋愛を諦める⑥

失恋

 週末に電話をする機会があった。けれど、以前のように彼女から話題を振られることも話を広げるようなこともない。僕からの問いかけに一言、二言返して後は無言が続いた。どれくらい電話を繋ぎっぱなしにしていたかわからないけれど、彼女から話があると言われた。涙声で。
 「先輩と後輩に戻ってください」とお願いされた。ある程度予測はしていたのですんなり受け入れることは出来た。ただ、こんな魅力的な女性が初彼女という事実が僕を醜くも食い下がらせた。理由を聞くと彼女はやはり答えてくれた。「今まで恋愛感情を持ったことがない事、彼氏を欲しいと思ったことがない事、告白されたときはかなり戸惑ったこと、本当は手を握られるのも嫌だったこと」。これまでの僕と彼女との関係を真っ向から否定された気がした。同時に僕も過去の僕自身を否定したかった。先輩としての優位性を利用して彼女に近付いただけではないかと思ったりもした。「嫌いになったわけではないし、他に好きな人が出来たわけではないんです。2人で出掛けているときは本当に楽しかったけど、先輩と後輩としての楽しさだった思います。ごめんなさい」と彼女は何度も謝ってきた。年下の女性にこんな辛い思いをさせたことに不甲斐なさと憤りを感じた。
 7月に一緒に祭りに行く約束をしていた。彼女もそのことを覚えていたため、一度は先輩と後輩に戻るけど、7月に改めて気持ちを確認させてほしい、とお願いをした。彼女は受け入れてくれた。
 時間が解決してくれるのを待つしかない、と思ったがよくよく考えると問題を先延ばしにしただけで彼女はその間も苦しむのではという疑問が浮かんだ。考えるうちにそれは僕の中で確信に変わった。
 彼女に一方的なLINEを送った。「気持ちを確認させてほしいと伝えたことはなしにしてほしいこと、これまでの交際もなしにしてほしい事、会社では普通に接してほしい事。受け入れられないことがあるなら返信してほしい、返信がないなら受け入れたということにします。最初から最後まで傷付けてごめんなさい」と自分勝手な要求を送った。彼女からの返信はなかった。

今まで通り・・・?

 こうして先輩と後輩に戻ったわけだけれどもやはりどこかぎこちなさは残る。ただ、彼女が気を使ってくれたおかげで職場では今までのように接することが出来た。これで少しずつ彼女への思いを断ち切れる、そう思っていた。
 3月末の金曜日に元彼女の同期と別の部署の後輩を飲みに誘った。元彼女は誘わなかったが、元彼女の同期が彼女のことを誘った。僕の名前を出して。社内では交際していたことは秘密にしていたので元彼女の同期も僕たちの関係は知らない。だからこそ彼にとっては普通の行為だった。さすがに断るだろうと思っていたら返事はまさかの「行く」だった。かなり混乱した。適当に用事があるとか言って断れよ、と思ったが僕に彼女の行動を制限する権利はないので飲みに行った。割と普通に話せた。彼女のことが分からなかった。
 会社の先輩からGW中に趣味の集まりがあるから来ないかと誘いを受けた。元彼女も同じ趣味を持っているから出来れば誘ってほしいと言われた。先輩の指示を裏切ることは出来ないので体裁を保つために聞いた。GWだし来ないだろうと思っていたが「行きます」とのことだった。益々彼女のことが分からなくなった。



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