27歳男性恋愛を諦める⑦

未練と傷

 勤務時間外に会うたびに元彼女のことが好きだったんだと実感させられた。忘れようとするたびに楽しかった思い出が強く浮かんできて辛かった。結局忘れられなかった。職場でも働きぶりを目にしたり、声を聞いたりするともう一度やり直したいという思いが湧き出てくる。その都度、あれだけ傷付けたうえに、更に傷付けるのかと自分を戒める。職場が同じということも忘れられない要因の一つなのだと思う。いっそ転職でもしてしまいたいが、僕の仕事の後任が育つまでは投げ出したくない。自分の気持ちには自分で折り合いをつけるしかない。
 初めての彼女だから忘れられないということもあるかもしれないが、今までで一番好きになった女性ということが大きいと思う。ただ、それ以上に大きいのは傷付けてしまったという罪悪感だ。相手から好きな人が出来たからと振られたり、連絡先をブロックされたりした方がまだ諦めは付いたと思う。一番大事にしたいと思って行動した結果が相手を傷付けたという事実が僕の心を深く抉っている。

期待はしたくない

 今でも職場では普通に会話をするし飲み会の席でも近くに座って会話をすることもある。LINEもブロックされておらず一言程度だが、1日程度で返ってくる。元彼女が言うにはLINEが苦手で1週間程度返さない時もあるという。彼女の同期もそう言っていたから嘘ではないと思う。プライベートで連絡が取れて元彼女の中では早い段階で返信をくれるという事実も僕に淡い期待を抱かせる。どうせなら返信はしないで欲しいし、LINEもブロックして欲しいという思いもある。そもそも僕から連絡先を削除してしまえば済む話なのだが。ぐだぐだ述べているが要は未練がましいのだ。付き合う前の楽しい関係に戻りたいと思うがそれは僕が楽しかっただけで元彼女が楽しかったかは分からない。ただ、再びアプローチをかけたところで傷付けてしまうということはわかり切っている。

分からないことと分かっていること

 元彼女のように他者に対して恋愛感情や性的関心を抱かない人のことをアセクシャルというらしい。名称は聞いたことがあったが、実際に自分が経験すると現実のことなのだと実感する。いや、そもそも元彼女にアセクシャルかどうか聞いたわけではないし、勝手に分類するのは失礼極まりない行為だ。ただ一つ確実に言えることは、元彼女は僕に対して恋愛感情を抱かなかった。それに気が付かなかった僕は彼女のことを傷付けた。それだけだ。

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