断捨離と積読
2年前の夏、持っていた冬服を殆ど棄てた。学生時代に買ったキーボードもメルカリで売った。文庫本は軽くて小さいので、キッチンのゴミ箱にも手軽に捨てられた。本をゴミ箱に捨てる瞬間に心拍数が跳ね上がった、写真や人形を捨てる時のあの感覚に襲われた。死ぬ為の断捨離。突発的に死ねる様なタイプの人間では無いので、最低限の迷惑(手間)で済むように蔵書を捨てた。集めた本をどんどん捨てた。大切なモノを捨てれば捨てるほど身軽になった。死なずに2年が過ぎた。
生きる為の積読。捨てた本を買い戻した。読みたい本へ湯水の如く金を使った。装丁の美しい本は、所有するだけで効能がある。古書店を巡り、予算を決めずにどんどん買う。メルカリと云う悪魔の様なアプリのお陰で稀覯本にも直ぐ手が伸ばせる。本棚が潤っていく。自分の本棚を眺めるだけで心が満たされる。毎日一冊持ち出し、仕事の合間に頁をめくる日々を過ごしている。新刊もどんどん買う。予約もする。此の田舎で話の合う人間など居ない。本棚の前だけが何時も平和で、自分の頭の中そのものを映し出している。神奈川の古家具屋で古い本棚を買った。家族の漫画は置かせない。私だけの本棚を手に入れた。
G.バタイユの特集が載ったユリイカを、土浦の古書店で見つけた。その日は他に4-5冊買って帰宅したけど、他の本は取り敢えず積み、特集をとにかく隅々まで読み、自分の本棚に足りない一冊を思い出した。
それがコレ。
直ぐ買った。美しい装丁。耽美。山本六三の挿絵の魅惑。以前読んだ時はこの装丁では無いモノだったので、此の一冊はかなり所有欲を満たしてくれる。買って良かった。買って損した事は一度も無いんだけれど。本当に買って良かった。
ここ数週間の憂鬱は、夏バテと云う事にして諦めた。本を読み、救われようと思う。
夏生まれ、冬派。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?