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夏の思い出

「こんな夏が永遠であってたまるか」でお馴染み、2022年の夏。
お盆も明けて、私を含めた多くの社会人が再び仕事(またの名を「本当のことを言えない場所)へと戻っていきました。

そもそも夏って2つ意味があるじゃないですか。
季節としての夏と、それを含む概念としての夏があって、
20代も真ん中に差し掛かってきた僕が、後者の夏を得る機会というのは相応の努力をしないと難しいと感じるんですよ。

今年の夏も相変わらず容赦ない暑さ、雨が降ってじっとりと体に張り付くような不快な蒸し暑さが来たかと思えば、
セミの鳴き声と太陽がどんどんと顔を出してきて、一つの季節が過ぎ去ったかのような錯覚を起こすけど、明日も明後日もまだまだ暑くて。

今回は「夏」というものの暴力性、についてまとまりもなくつらつらと書いていこうかなと思ってます。
いや、夏は暑いから暴力的だ、とかそんな話ではなくて。
夏という一季節から止揚した概念としての夏は、あまりに僕の人間性と相性が悪く、ぼくはもう人生の秋を迎えてしまったのだな、と振り返るお話。

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中学生や高校生の頃は楽しかった。
友だちと夜に集まって手持ち花火をしたり、自転車を漕いで川に行ったり、少し気になっている子と花火大会に行って、帰り道ドキドキしながら二人で帰って、告白をするかしないかで迷って、結局出来なくて、
みたいな、「これが青春」というものを味わったように思える。
だけどその頃の僕はあまりに未熟で、小さな世界で生きていたから、その儚さに気づくことが出来なかった、かも。

実際のところ僕は、他の友人と比べて気づいていたように思えていたし、
「これは今、青春をしているんだ。
だからこそ、僕は今この瞬間を楽しまなきゃもったいない」
みたいな、三人称視点で青春をしていたような気がする。
本を読んで磨かれたのが、こんな擦れた客観性だったのは悲しいけれど。

だけどそれでも「こいつ何にも分かってないわ」って今になって思う。
青春という希少性を前にして、あまりに能動的でなかった。
そんなんだから、車を運転しているときに高校生カップルを見て、尋常じゃない深いため息をついてしまうんだよ、君は。

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絵の具でベタ塗りしたような、どこか奥行きのない空に飛行機雲が一筋かかる。青と白。
その色を明確に映し出す、という最低限の目的を果たしながら、
一向に働くことをやめない太陽。
陽炎が揺れて、セミが鳴き、道端には小さくも色鮮やかな花が咲いている。小さいから色鮮やかなのかもしれない。

景色のひとつひとつに生命が宿っているような力強い季節に対して、ぼくたちが、はじけるような笑顔で迎える、それ以外にこの季節を楽しむ方法はないように感じさせられて、それも暴力性の一端だな。と思う。

これは僕の考え方なのかもしれないけれど、笑顔になっているときって気づかないことが多くて、
意識して笑顔を作っているとき、というのが笑顔の思い出になってしまっている。

いまふと『勇気100%」の歌詞が頭に流れてきて、Aメロの「君」に話しかけてくる奴、ぼくはあんまり好きじゃないな~って思ってしまった。


夏には笑顔で抵抗することが出来ない自分が悔しい。
みんなが浮かれて、それ自体は素晴らしいことだと思う。空も太陽も草木も花もみんなが笑顔でいるんだったら、ぼくが少数派になってしまう。
ワンピースのキャラクターが「勝者が正義」って言ってたけど、まあそれに近いところで、みんなが楽しそうなのに、一人だけ無理して笑ってたり、仏頂面をしてたら、それはもう悪なのかもしれない。
夏に夏らしいことをしたい気持ちはあるけれど、はしゃぐことに恥ずかしさや後ろめたさのようなものがあって、「疲れちゃう」「汚れちゃう」
みたいな理由をつけて避けてしまう。
平穏を求めてみるけど、何もしないのは平穏じゃなくて退化だと言うことをもう少し肝に銘じたほうがいいのかもしれないな。


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夏曲にも3種類くらいあって、太陽ギラギラ、青い海と白い砂浜、水着でパーリーみたいな曲(好き)もあれば、
夏の暑さが子供の頃の原体験を連れてくるような、ノスタルジーを感じさせる曲(好き)もある。
後は少し聞いてて苦しくなるんだけど、
夏の終わりを疾走感にて表現するような曲(結局これも好き)もある。

夏の曲を聴いていると、夏が終わることがとんでもない喪失であるように感じられて怖くなる。
季節の移り変わりとして、夏が終われば秋が来るにもかかわらず、曲の中では夏が終わった後のことを全然教えてくれない。一曲でそこまで言えないんだろうけどね。。

夏が終わったとしても、僕も君もこの世界も続いているはずなのに、夏というのは他の季節と比べてグラデーションがはっきりしているからなのか、それが独立したものとして捉えられていて。

僕は毎年その夏を楽しむことができず、
気付かぬうちに、夏の終わりの疾走感に巻き込まれて追い出されていく。
だけど僕の全てが流されるわけじゃないから、
気づいた時にはひと夏の亡霊になってしまう。可哀想すぎるだろ。

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本当にだらだらと書いてしまった。
今年の夏はもう終わってしまったんだ、一足先に秋の準備をしておこう。


追伸

ちなみにこんな僕の好きな季節は冬だ。
別れの季節の、緩やかな苦しみが長く続くのは、
僕は耐えられる気がする。やがて来るはずの春を待つのさ。


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