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【兵庫ブレイバーズ】山科颯太郎~復活の理由~

開幕前の山科

「監督、A班に上げてほしいです!」「とにかくまずはバッター相手に投げてみんとなぁ」

山科颯太郎投手。昨年の成績は4試合に投げて防御率38.57。2回1/3イニングしか投げていないにもかかわらず、四死球15、暴投12という荒れぶりだった。

選手層が厚い兵庫ブレイバーズでは投手陣を主力組のA班、それ以外のB班に分けている。山科はB班スタートだった。

が、合同練習が始まったところ、山科の動きは悪いものではなかった。ブルペンでは威力のある直球を投げ、投手陣全員に課せられたトレーニングメニューも軽くこなしていった。

他の投手を引っ張って走る山科

橋本大祐監督も「颯太郎がええんよ。もちろん実戦で投げてみんとわからんねんけど」と評価をしていた。

そして冒頭の山科と橋本監督のやり取りはオープン戦半ばまで続いた。

好調の要因

山科と言えば入団前から「トルネード投法」が話題になっていた。
しかし、今季少し腕を下げ、サイドスロー気味にしてみたところ、制球が大幅に改善された。ストレートの威力も増した。

「オフの間にいろいろ試したけれど、うまくいかなくて半分遊びでサイド気味に投げたら指にうまく引っかかって。練習をしてみたらいい感じになってきました」

元々横ぶりのフォームだったこともあり、そこがうまくハマった。
サイドというよりはスリークォーター気味のフォームから投げ込まれる速球は146キロを計測した。
「サイドのほうが球速のアベレージも出るようになりました」

現在の山科のフォーム

こうしてオープン戦などを経てブレイバーズの勝ちパターンの一角に現在君臨している。

「本当にサイドに変えただけで、他には特にないんですよね」と山科は言うが、橋本監督は別の要因を挙げた。

自分でやろうと思った時にやったほうがいい

「元々ポテンシャルはある投手。今は自信もあるからどんどん投げられてる。メンタルの部分が大きいかな」

メンタル部分と横ぶりのフォームについても橋本監督は指摘していた。「変則フォームのほうがプロの目に留まる」とも。しかし、フォームを変えることについては強制はしなかった。

「他人に『やれ』と言われてやるのと、自分で進んでやるのとは全然違う。短い野球人生なんだから自分でやろうと思った時にやったほうがいい。誰々に言われたけどできませんでした。だったら悔いしか残らない」

結果、山科は自ら腕の位置を下げ、自信を取り戻した。
オープン戦の最中、ブルペンで様子を見ていた久保康友投手も「このボールは右打者は相当怖く感じると思う」と太鼓判を押していた。

3月、ブルペンに入る山科

登板を重ねるごとに内容もよくなっていった。ストライクが入り、打者に向かっていく投球ができている。

5月12日、巨人との交流戦のメンバーにも名を連ねた。
「ストレートで押して通用するか試してみたい」と試合前に語っていた山科。1回を9球で三者凡退に抑えてみせた。直球の最速は144キロを記録した。

「正直調子は良くなかったんですが、抑えられてよかったです」
とは言いつつ、その顔は充実感に満ちていた。

交流戦のマウンドに立つ山科

その後も中継ぎの一角として投げ続けている。投げるごとに自信を深めているように見える。

課題を見つめ、自分で取り組み自信をつかんだ。これが山科颯太郎復活の理由だ。

改めて橋本監督に山科について聞いてみた。
「あと5キロは球速出てほしいかな。そうなると……151キロ?山科のポテンシャルならしっかり取り組めば出るよ」

今年21歳。大学3年生になる年だ。まだまだ伸びる可能性は十分にある。

6月4日、堺戦の7回、堺っ子体操を踊るShrikeGirlsを見ながら一緒に堺っ子体操を踊る山科(右は中村巴瑠投手)

(文・写真 SAZZY)

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