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【和歌山ファイティングバーズ】西垣彰太のリベンジ

頭から離れない

「本当に悔しくて頭からあの場面が離れないです」
2021年10月26日、首位の堺を0.5ゲーム差で追っていた和歌山。勝てば優勝への望みがつながる試合だった。
登板したのは西垣彰太。しかし、5回に集中打を浴び6失点、7回にもランナーをためて降板。試合は10-3で敗戦。マウンドを降りる西垣は嗚咽交じりで泣いていた。

とは言え、2021年に西垣が残した数字は凄まじいものだった。155イニングを投げ136奪三振。19試合で8完投。11勝を挙げた。
奪三振にこだわり「いつまでもマウンドにいたい」と話す西垣。今年も開幕戦に登板したが、気になった点があった。三振が1つしかない。モデルチェンジなのだろうか。

「三振は取ろうと思ったら取れるんですけど、独りよがりなピッチングはやめました。バックを信じて打たせるときは打たせる。開幕戦はそこまで調子は良くなかったんですが、いい結果につながりました」

大胆な守備のコンバートがあった和歌山。捕手は昨年ショートを守っていた深谷力。そのショートに昨年センターを守っていた佐藤大介が入った。
外野には守備に定評のある藤原楓、二瓶洋輔、そして投手も兼任する石原司が入った。
「石原さんは体を張ってボールを捕ってくれるので本当にありがたいです」

三振を狙うだけではなく、チームメイトへの信頼をのぞかせた。

捨てるこだわり、増やす信頼

4月10日、本拠地開幕戦の先発が決まっていた西垣。しかし何か落ち着かない。
「いや、緊張してずっとグラウンドとトイレを往復しているんですよ……」
これだけ投げる投手でも緊張するのか、と思った。
「この前の開幕戦も、もっと言うなら去年のオリックスとの交流戦も全然緊張しなかったんですけど、地元での開幕戦ということでとても緊張してます……」

が、やはりマウンドに上がったら別人だった。
「初回から飛ばした」という通り、ランナーを出すも三振で切り抜ける、ランナーがいないときはゴロやフライを打たせる。4回に失点をしたものの、後続をきっちり絶つ。

しかし7回に捕まる。先頭の聖にヒットを許すと、パスボール2つも重なり1点を返される。なおも、四球とヒットで二死一二塁。打者は柏木寿志。4回に二塁打を放っている。柏木が捉えた打球は左中間に。抜けたかと思った打球は、藤原が追いついた。

藤原を笑顔で出迎えた西垣

試合中、深谷力が気づいたことがあった。サインを直球主体に変えた。面白いように空振りが取れるようになった。

「兵庫の打線が遅い球を待っているように見えたんで、西垣さんに伝えてストレート押しに変えました」

この二人、試合中もベンチに戻ってもよく話す。
コミュニケーションをとって攻め方を変える。
「正直ストレートだけで投げるのがすごく怖かったんですけど」と西垣は振り返ったが、深谷の考えがハマった。

イニングを振り返りながらベンチに戻る深谷と西垣

9回、今度は川原昭二監督が気づいたことがあった。
「無理やり抑えようとして力んでいたんで、下半身を意識して投げてみろ」
キャッチボールで修正し、そのまま登板。球がまた走り出した。9球で兵庫打線を仕留めた。2試合連続の完投勝利となった。

「去年は自分のわがままで投げるだけ投げさてもらったんですけど、勝てるようにしたいので、監督がダメだと言ったら交代しますし、リリーフには自分より速い球を投げる江口(駿希)さんが控えてます。だから、投げられるところまでしっかり投げようと。今年は投げることに責任を感じています」

試合前に談笑する江口と西垣

責任。去年の最後のマウンドで嫌というほど痛感させられた。投げながら責任なんて感じたことなかった。だからこそ周りの力を借りて万全を期したい。と西垣は思っている。

「やっぱり優勝したいです。野球人生でまだ優勝したことないんですよ。堺に勝ちたい。優勝したい。ただそれだけですね」

―――――――

4月19日、ブルズ戦に登板した西垣だったが、ピッチャーライナーを脚に受けた。とんでもない音が球場に響き、打球もそのまま外野に飛んで行ったほどだったが、そのままマウンドに登り続けた。
しかし、状況はそのまま万全というわけにはいかなかった。4月25日の同じくブルズ戦では痛み止めを服用して登板したが、途中で力が入らなくなり、そのまま5回途中で降板となった。

「悔しい!同じ相手に2回もやられるのも悔しいし、途中でランナーを残してマウンドを降りるのも悔しい!」

試合は0-11での敗戦。
ブルズ相手には3連敗。2試合連続の零封となった。

「2日は絶対やり返そう!20点取ろう!」

チームメイトに熱く語った西垣。次のマウンドがいつになるかはわからないが、リベンジへの思いは消えない。

(文・写真 SAZZY)

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