【 #球春到来 】兵庫ブレイバーズ
笑い声と叫び声と熱量
この日のキッピースタジアムは雪混じりだった。さすが近畿のシベリアと呼ばれるだけある三田だが、選手たちの熱量はすさまじいものがあった。
まずはこの日から合流した古屋剛投手が選手の前で歌を披露。雰囲気が明るくなったところで練習が始まった。
「しっかり駆け抜けろ―――!!!!」
走る選手に向けて山川和大監督の声が響く。
「コラー!!!!抜くなって言うてるやろー!!!!」と選手の動きは見逃さない。一人一人の名前を呼びながら選手を見ている。
「選手はここまでよく頑張ってると思いますよ」
山川監督は選手を見ながらここまでの練習を振り返った。次に始まったのは体幹トレーニング。そこで山川監督は選手にこう告げた。
「昨日の紅白戦でヒット打った選手と0で抑えた投手はメニュー半分!」
選手が口々に「よっしゃー!」「えー・・・」と言いつつ次のメニューに進んでいった。
昨年現役引退したばかり、28歳の新監督は選手とよく話しよく笑い、そしてメリハリをつけて練習をリードしていた。
声
この日は守備メインの練習メニューだった。
投内連携、ノック、投手はブルペンにも入った。
「しっかり声出してよー!」と山川監督。練習中に選手が場を盛り上げることに期待していた。
当然監督自らノックで声を出していく。
「一発で決めようぜー!!!!」「オッケー!!!!ナイス送球!!!」
選手たちも乗せられて動きがよくなっていく。届かなかった打球にも次には追いつけるようになる。そこで声が出る、ムードがよくなっていく。
「あんまり自分から声を出すメンバーじゃないので、そこは意識していきたいですね」と浸透させるつもりだ。
構想
「まだ誰を使おうか、というところには至っていないんです」
大体こういう風にはなるだろうなというぼんやりとした完成図はあるが、オープン戦が終わるまではメンバーの固定をしないと明言した。
「でも、田中だけは1年間出て、盛り上げてほしいって伝えてます」とキーマンに今季のキャプテン、田中悠聖を挙げた。
ノックでもその他の練習でも前に出て盛り上げている姿が印象的だった。聞くと昨年の最終戦の後、山川監督直々に「キャプテンやれ!」と言われたそうだ。
「あとはドンちゃん(金東俊)がものすごくいいバッティングするんですよ。紅白戦で(練習参加している)久保(康友)さんから右中間に二塁打打ってたんで、もうちょっと秘密にしときたいですね」
「ピッチャーも坂下(空)さん、古屋(剛)オガ(小笠原智一)熊本(翔弥)といるから、先発はそろってるし、悪くはならないと思う。去年自分はいたのはいたけど、『去年までの成績は知らんから』と選手には伝えているので、いいアピールをしてほしいですね」
リーグ最多の40名が在籍するチーム、競争に期待したい。
じゃんけんとメンタル
練習を締めくくったのは球場隣の陸上競技場の外周を走るランニングだった。
既定のタイムに走り抜けたら合格、タイム外になったらもう一本走る、というものだった。
そして、最後に差し掛かったところ、山川監督が一人一人とじゃんけんを始めた。
「最後の1本、選手が山川監督にじゃんけんで勝ち越せたらランニングなし」というものだった。
選手が必死な顔をしてじゃんけんをする様はさながら某賭博黙示録漫画のようでもあった。
「こういう時に自分から出てきてじゃんけんに勝つ選手って試合でもここぞというときに抑えたり、チャンスの時に打ったりすると思うんですよね」
おとなしい選手が多いと山川監督が評したチームだが、確かにじゃんけんの時の盛り上がりと目の色は異様だった。
「練習の結果でメニュー変えたり、こういうじゃんけんを間に挟むことでメリハリもできますし」
と、言いつつ必死になって走る選手を山川監督は見つめていた。
キャプテンの田中悠聖は、山川監督のことをこう見ている。
「去年も現役でプレーしてますし、年も近いので何かあったとき言いやすいですね。練習量は格段に増えましたけど、充実しています」
40人いる選手の中には山川監督より年上の選手も数人いる。そんな選手たちにも分け隔てなく、フランクに選手とコミュニケーションを取る姿は印象的だった。
「強いチームを応援してもらえるように、ブレイバーズ野球を楽しんでもらえるように頑張りたいと思います」
新任監督山川和大の挑戦が始まる。
練習風景
(文・写真 SAZZY 2月16日 キッピースタジアム)
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