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【兵庫ブレイバーズ】島田魁人と染矢啓士郎~開講・染矢塾~

弟子入り

ある日の試合前からこんな光景が見られるようになった。
兵庫ブレイバーズ2年目の島田魁人。試合15分ぐらい前になると素振りをする。その素振りを見守っているもう一人の選手がいる。染矢啓士郎。今季から兵庫入りした選手だ。

ペットボトルを持っているのが染矢、バットを持っているのが島田

島田がバットを黙々と振る。一振り一振り、丁寧にスイングしていく。打球を飛ばす方向を意識して、素振りをする。

「顔の向き、外野のフェンスのどこかに目印をつける感じのほうがいいよ」
「おおっ!いいねぇ!今日いい一本が出そうな気がするよ!」
染矢も素振りをする島田を盛り上げる。

ペットボトルを持って身振り手振りで指導する染矢

試合の始まる直前までこのやり取りは続く。染矢がアドバイスし、島田がその通りに振る。まるで師匠と弟子のような姿だ。

「やっぱりバッティングうまくなりたくて、社会人野球で実績のある染矢さんに教えてもらいたいなと思って声を掛けました」
島田がそういうと「実績なんかないよ」と染矢が苦笑する。
ただし、染矢は社会人野球時代、強打のキャッチャーとして鳴らしていた。投手になってまだ1年も経っていない。

投手転向直後の染矢投手の様子はこちら

指導の成果

しかし「本人がうまくなりたいと言っているので」と染矢も試合前の時間を使って島田のバッティングを見ている。

下半身を意識したり、打球の方向を意識したりと、素振りの種類だけでも何種類にもわたる。染矢がそれを指示し、島田がそれに合わせてバットを振っていく。

染矢が「おお、いいじゃん!これならホームラン行けるね!」と太鼓判を押した試合では大抵島田のバットからも快音が響く。

ある試合では練習後「今日絶対打ちます!」と島田が宣言。その言葉通りタイムリーヒットを放った。その様子を見て染矢も「本当に打った!」と目を細めていた。

7月10日の和歌山戦。ホームランとはいかなかったがライトへタイムリー二塁打を放った島田

「ホームラン狙っていけるかも!」と島田自身も試合前に明るく話す。

試合直前のこの時間が島田の力となり、自信になっていっている。

結果意識も変わる

島田の打撃内容が変わってきた。

6月までの島田の安打の内訳はほとんどがセンターからライト方向。レフト方向へのヒットは1本だけだった。しかし7月以降にレフト方向へのヒットが増えていった。8月に入るとついにホームランが出た。

この8月の躍進を島田本人に聞いてみた。
「1本目のホームラン(8月19日)は木製バットで初めてのホームランだったので、とても気持ちよかったです。2本目(8月25日)は『レフトの頭を越すかな』と思った当たりが伸びて入った、そんな感じでした」

レフト方向の当たりについても染矢のアドバイスがあった。
「右方向に打てるのは相手もわかっているから、引っ張ったほうがいいと言われました。レフト方向への意識も、スイングもそのように染矢さんと変えていきました」

この島田と染矢のやり取りは、開幕前から約半年続いている。ここにきて成果という形で目に見えるようになってきた。

「バッティングだけじゃなくて、守備の送球の部分なんかも教えてもらってます。あとは人間性の部分。当たり前のことかもしれないですけど、挨拶とかゴミ拾いとか、染矢さんにできていないと言われたら本当にできていないんだと思います。そんな日常生活や日ごろの心構えなんかも学んでいます」

8月30日、この日染矢は不在だったのだが、試合前の練習では染矢から教えてもらったことをひたすら実践していた島田

「この後はとりあえず柏木(寿志)にホームランの数を追いつきたいですね。あと、右方向にホームランを打ちたいです。これも染矢さんから次のステップとして教えてもらっている途中なんですが、感覚がつかめたらいけそうな気もします」

そんなことを言っていた島田だが、その試合でライトにあと一歩でホームランという二塁打を放った。とんでもなく飲み込みも、吸収も速い。

ライト方向へ二塁打を放つ島田

今年は残り数試合となった。掴んだ感覚を次につなげることができるか。
二人三脚はまだ続く。

(文・写真 SAZZY)

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