黄表紙「無益委記」②~もしもの世界の江戸の町
恋川春町(1744~1789)の作画だといわれる黄表紙「無益委記」は、聖徳太子の未来預言書「未来記」(実在不明)をもじって、現実を茶化して描かれる大人の絵本。全三巻の中巻の現代語訳。
中巻
六
吉原入り口には柳が植えてあるが、それを松に植え替える。倹約のために、ちょうちんをたいまつにする。
客「だいぶ暗いなあ」
七
盆と正月が一度に来て、三河万歳がやってくる。
正月の宝船と、お盆の線香売りがやってくる。
八
客に選ばれるはずの女郎が、女郎のほうから客を選ぶ。
女郎「禿のなみじや、あの客に決めたので、呼んでおくれ」
毎年恒例の俄狂言をやめて、男のまつたけ刈りをはじめる。
歌「君をまつだけ、もめるはきのこ、ながい夜もふけ、ねずみたけ♪」
九
浄瑠璃も下品なりと神楽の歌をうたう。すべて万葉の時代をしたう。
女郎「なんだか法事のお経のようでありんす」
客「いよいよ眠いことよ」
十
遊女はいろいろな芸事をかじりちらして、ついには武芸を習う。
女郎「しげこや、それが終わったら防具を出してきや」
やり手婆は仏心が出る。
やり手「なむあみだぶなむあみだぶ、あれだけ動けばくたびれよう」
十一
猫も杓子も芸者となる。
猫「杓子さんは一本足で、さぞちょちょっところびなさろうの」
杓子「悪いしゃれを言いなさるな」
現実とは逆の、ウソの世界を次々並べ、次回、最終回につづく、
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