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教科書の俳句① 春風や闘志いだきて丘に立つ 高浜虚子

 光村図書中学国語3年に載っている俳句作品を紹介する。

 テレビの「プレバト」で夏井いつきが俳句を解説し、それがブームになった。っていっても、今の子どもたちはテレビなんて見ない。YouTubeを見ている。そこで夏井いつきもYouTubeチャンネルを持っている。


 そんな映像を教室で強制的に見せれば(自主的に見ようと思う小中学生はほとんどいないだろうから)俳句に興味を持つだろうか。テレビでは芸能人の作った俳句を添削しているが、教科書では日本語の、言葉の教科書となるべき有名な俳句を学ぶ。

 「うっせぇうっせぇうっせぇわ/あなたが思うより健康です」という日本語もおもしろいけど、15年後の子どもたちには、「うっせぇわ=うるさいわの俗語。当時は若い人たちが使った」という解説が必要になるだろう。言葉は変化している。




 noteでもたくさん作られ、今も通用する俳句の世界を、中学生の子どもたちはどう学んでいるのだろう。中学校の教科書に載っている俳句を紹介する。教科書には何年も読み継がれた過去の有名な俳句が並ぶ。次々変化する日本語の中で、ずっと続く言葉の歴史を示す句。
 暗記して、日本語の手本としたい句が多い。


春風や闘志いだきて丘に立つ  高浜虚子

 よし、がんばるぞ、という闘志を抱きながら風に向かう。習字のお手本にも使われる句。春風が季語で、季節は春。入学式の季節だ。
 高浜虚子(たかはまきょし1874~1959)は、正岡子規に師事していた。

流れ行く大根の葉の早さかな  高浜虚子

 冷たい冬の水の中で、大根の葉が流されていく。昔は川で洗い物をしていた。大根を洗っていたのだろう。川は大きくなく、水も澄んでいる。そこで緑の葉が流れる。そんな情景が浮かぶ。季語は大根で、季節は冬。
 えっ、大根なんて一年中スーパーに並んでいる。いやいや、大根の旬の季節は冬。同じく冬が旬の野菜は、白菜やネギ(葱)がある。寒い日の鍋物に入れる野菜だ。野菜や自然についても学びたい。


いくたびも雪の深さを尋ねけり  正岡子規

 芭蕉が作った俳句も、与謝蕪村などはいるものの、その後は細々と続いていて、芭蕉ほどの作者は生まれていない。大ブームにもなっていない。それを現代につながるものとしてよみがえらせたのが正岡子規(まさおかしき1867~1902)。歌論「歌よみに与ふる書」で「写生」ということをとく。


鶏頭けいとうの十四五本もありぬべし  正岡子規

 これなどは、絵画の写生のように、画面が思い浮かぶ表現だ。教科書の作品は、絵に描いてみたらわかりやすい。写生をとなえた正岡子規の系統の作者が多いので、絵にしやすい作品が多い。鶏頭は赤い花が多いが、黄色の花はあっただろうか。そんなことも想像できる。鶏頭は秋の季語。

 「いくたびも~」の句は画面は病床だろうし、深い雪は真っ白だろうが、情景は思い浮かぶ。病床で動けず、外の雪の様子を「どのくらい降ったのだろう」と何度も尋ねている。季語は雪で、季節は冬。

 正岡子規は、34歳で亡くなっている。病床につく前、血を吐いた。血を流しながら鳴くといわれるホトトギスは「時鳥」「不如帰」と書くが、「子規」とも書く。そこで、それを自分の名前とした。

正岡子規小




 正岡子規は、友人の夏目漱石(1867~1916)にも俳句を教えていた。漱石はこんな句を作っている。

すみれほどな小さき人に生まれたし  夏目漱石

 道端に咲くスミレほどの小さい人に生まれたい。日本には、いろんな種類のスミレがあるが、漱石の見たスミレはどんなスミレだろう。どのように咲いていたのだろう。そんな想像をしながら絵にしてみたい。「写生」の句は、絵にしたらよくわかる。季語は菫で、季節は春。


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