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医療のゴールと資本主義の矛盾 - 利益追求のはざまで

こんにちは、皆さん。
今回のブログでは、医療の究極のゴールと資本主義のゴールについて考えたいと思います。資本主義のシステムの中で、病院は利益を追求しなければならないのですが、これは医療の究極のゴールと矛盾することがあります。それについてどう考え、どう向き合っていけば良いでしょうか。さっそく詳しく見ていきましょう。

医療の究極のゴール - 予防医療の重要性

以前もご紹介しましたが、孫子の兵法に「よく兵を用うる者は赫赫の功なし」という言葉があります。

その意味するところは、優れた戦術家は戦いが起きる前に相手より優位に立つ事ができるため、相手は攻めてくることができず、戦わずして勝つことができる。その結果、目に見える功績は得られないが、功績がないように見える戦術家こそが実は最も優れているということになります。

これを医療に置き換えて考えるとどうなるでしょうか。
優れた医療は地域の人が病気になる前に対策が打てるため、病院にかかる人が出てこない。その結果、病院は儲からないが、そんな地域が最も医療レベルとしては優れていると言うことになります。

そこから考えると、医療の究極のゴールは、地域の人々が病院の世話にならない社会を作ることです。これは、予防医療の重要性を強調するものであり、病気になる前から対策を打って、病院に行く人が減ることを目指しています。予防医療が進めば進むほど、病院は儲からなくなりますが、それこそが真の医療の目的であると言えます。

資本主義のゴール - 病院における利益追求

一方で、資本主義のゴールとは何でしょうか?
それはお金を増やし続けることです。
資本主義システムの中では、病院も利益を追求しなければならないのが現実です。
病院が儲かるためには、患者が続々と訪れることが必要であり、予防医療が進むと病院の利益が減るという矛盾が生じます。

今の社会はその矛盾に目を伏せている

つまり究極の医療のゴールと資本主義のゴールは必ずどこかで矛盾にぶつかります。

質の高い医療を追求しようとすればするほど、予防医療に重点が置かれるため、人は病気になりにくくなり、患者は減ります。

予防医療は一次予防(病気になることを防ぐこと)が最も大切です。
一次予防は、食事、運動、睡眠などの生活習慣を整えること、つまり養生のことです。基本的に自分で出来ることであり医療費はかかりません。かかるとすると予防接種や禁煙外来などぐらいでしょう。一次予防がしっかり根付いた社会では、病院は儲からないわけです。

その矛盾を今の社会は曖昧にして、考えないように、見ないようにしている節があります。むしろ、医療の目的である私たちの健康よりも、資本主義というお金を増やすことの方が重要とされているようにさえ感じます。なので、本来社会で共有すべき科学的に分かっている健康を維持するためのノウハウがメディアでも学校でも教えられず、テレビでは流行を刺激してお金を消費させるための戦略で溢れています。それに流された私たちは、甘い誘惑に引っ張られて、健康に良くないものに誘導されてしまっているように感じます。矛盾しているとは知りながら、何とかその中でうまく立ち回ることばかりになってしまっています。

資本主義と医療、両方のゴールを同時に追いかけることは本来不可能なのです。

どう向き合うべきか - 矛盾を乗り越える方法

この矛盾をどのように乗り越えていくべきかが問われています。

医療の目的である私たちの健康は、資本主義という大きなシステムの前に妥協すべきもの、犠牲にされるべきものなのでしょうか?

これには多くの人は本来、「No!」と思っているはずです。

では資本主義システムを一気に変えることは出来るでしょうか?
それもなかなか難しいでしょう。

しかし、大きな流れとしては社会は中央集権型から分散化の流れが来ているように、きっと資本主義システムも徐々にシフトしてくると思います。

それまではステップバイステップで変えていくしかないと思います。
まずは、予防医療の推進と病院の利益追求が共存できるシステムを構築することが重要です。

例えば、政府が予防医療に投資を行い、病院に対して予防医療の取り組みを奨励するインセンティブを提供することが一つの方法です。

また、医療従事者や病院が予防医療を推進し、地域住民の健康状態を改善することで、病院の評価や評判が向上し、結果的に病院の収益にも貢献することが期待できます。患者さんはすぐには減らないでしょうし、病気も一瞬にしてなくなることはないでしょう。

さらに、病院が予防医療を行うだけでなく、企業や地域コミュニティが健康増進を目指す取り組みを行い、健診・検診で引っかかった人が病院に紹介されます。それによって病院の利益追求と予防医療のバランスを保つことが重要です。

それと同時並行で、おそらくAI使ったHealth Tech企業がどんどんと増えることで医療は病院で受ける事がメインではなくなり、日常の中で自己観察と養生、さらにテクノロジーを使って自分たちで健康管理していくことになると思っています。そういう意味では医療は徐々に民主化していくでしょう。

その流れの中で、恐らくどこかで病院の役割はおそらく急性期医療と終末期医療がメインとなり、規模も縮小していく流れになると思います。

まとめ

本来健康はすべての人にとって十分に享受されるべきものです。

テクノロジーの進化は競争によって発展させても良いと思いますが、
人の健康を提供する医療は患者さんを減らす努力をすべきであり、
患者さんを増やすために努力をするという資本主義システムとは必ずしも相性が良くないと思います。

医療の究極のゴールと資本主義の矛盾は、確かに存在します。
しかし、私たち医療従事者や政府や企業、地域コミュニティが予防医療の推進に取り組むことで、この矛盾を乗り越え、徐々に資本主義社会を別の社会システムへとシフトさせていくことになるだろうと思います。私も医師として予防医療を推進しつつ、社会の変革に少しでも貢献できればと思っています。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

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