寒竹泉美

京都在住の小説家です。医学博士(京都大学)です。理系ライターもやっています。 お仕事や活動履歴などはHPにあります。 https://kanchikuizumi.amebaownd.com/

寒竹泉美

京都在住の小説家です。医学博士(京都大学)です。理系ライターもやっています。 お仕事や活動履歴などはHPにあります。 https://kanchikuizumi.amebaownd.com/

    マガジン

    • 考えていること

      日々、考えたことを少し長い文章で。まだまだ人として未熟だからきっと考えは変わっていくのだろうけれど、その途中過程を書いておきたい。

    • 【読書エッセイ】読んだり語ったり

      読書して語ります。

    • 【連載小説】ちょうどよいふたり

      日本リフレクソロジスト認定機構会報誌「Holos」で連載中の連作短編小説です。1年に3話更新されます。作中の人物も4カ月ごとに成長していきます。

    • 短い小説いろいろ

      公開OKの短い小説をいろいろ集めました。また発掘したら随時アップします。

    • 【期間限定で無料公開】月野さんのギター

      版権を所持しているデビュー作を期間限定で無料で掲載してみます。無料公開なので面白かったら広めてくれると嬉しいです。全部で12章あります。 表紙絵は漫画家の黒谷知也さんに描いてもらいました。

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    2021年の仕事と創作を振り返る

    あっという間に師走で、なのに仕事は全然終わっていなくて、心がすさんでいる日々です。1つの原稿に取り組んでいるときはそのことばかり考えているけれど、終わったら、全…

    寒竹泉美
    8か月前

    じゃあ、わたし、女じゃなくていいやって言ってみたい。|『〈トラブル〉としてのフェミニズム「取り乱させない抑圧」に抗して』…

    ノンバイナリーという言葉がある。自分の性は男でも女でもないと認識していることだ。初めてその言葉を聞いたとき、何を言っているのだ? と思った。さっぱり意味が分から…

    寒竹泉美
    2週間前

    自然体の謙虚さを身に着けたくて考えた結果

    わたしが尊敬する人は、みんな謙虚だ。すごい人たちなのに自然体で、無理してる感じとか、嫌な感じが少しもしない。ちょこんと、きょとんと、ただそこにいる感じ。殺気を消…

    寒竹泉美
    2か月前

    第29話 暇人とブライダルフェア|2022年5月

     久しぶりに佐々木から電話がかかってきたと思ったら、第一声が「幸彦、お前、いま暇だよな」だった。質問ではない。確信に満ちた堂々たる断定だった。 「なんでだよ」 …

    寒竹泉美
    2か月前

    「きれい」を無邪気に楽しみたい

    42歳になった自分の容姿と心の折り合いがつかない。普通に生きているだけで太ってくるし、アプリで加工しないと顔がぼよーんとしてるし、可愛らしい服も似合わなくなるし、…

    寒竹泉美
    3か月前

    自分がどう生きたいかで進路を決めたらいいよって若者にアドバイスしてたら、自分ができていないことに気づいた話

    科学のことを分かりやすく伝えるサイエンスコミュニケーターや理系ライターの仕事に興味があるので話を聞かせてほしい、という連絡が理系の学生さんや博士課程在籍中の大学…

    寒竹泉美
    3か月前

    努力していないから嫉妬する権利がない、ということに気がついた

    活躍している小説家や本屋に並ぶベストセラーと銘打たれた本を見ると、嫉妬で苦しくて逃げ出したくなる。つらくて情けなくてみっともなくて、そんな自分が嫌になる。 どう…

    寒竹泉美
    3か月前

    誰の役にも立たない自分ひとりの欲望から始める方がいい

    桜が咲くと、空気が塗り替わる。美しい花はいろいろあれども、ソメイヨシノみたいにあらゆるところに植えてあって、一斉に咲いて、あんなにたくさんの人の心を浮き立たせる…

    寒竹泉美
    4か月前

    ブランディングとは自分じゃない誰かになることなのかもしれない

    最近ずっと自分迷子。ライターとしても小説家としても。noteに1つ記事を書いては1つ解脱している感じなんだけど、まだまだ脱ぎきれない呪いが山ほどある。 先日、大学院…

    寒竹泉美
    4か月前

    [掌編]彼女の言葉

    彼女は探している。 脈を打つ、あたたかい、生きた言葉を。 街にも、書にも、 大きく飾り立てられた言葉があふれている。 彼女はそれらの言葉に一応話しかけてみるが、 返…

    寒竹泉美
    5か月前

    称賛や承認をエネルギーにしたら続かない。続けた人だけがたどり着く場所へ。

    小説家の友人馳月基矢さんが楽しそうに活動しているのに影響されて、小説投稿サイトカクヨムに登録した(寒竹のページ)。カクヨムにはたくさんの小説書きがいて毎分何作も…

    寒竹泉美
    6か月前

    バズりたくない

    photo: sayoco 小さいころ、引っ込み思案で泣き虫で言いたいことも言えない子どもだった。それなのになぜか「目立ちたい」とか「大勢にちやほやされたい」と思っていた。…

    寒竹泉美
    6か月前

    自分の能力を因数分解したら、強みと弱みが見つかった

    photo: ame わたしも所属している理系ライター集団チーム・パスカルのメンバーの森旭彦さんと雑談をしていて、ふと、森さんが「ブランディングって因数分解なんだよね」…

    寒竹泉美
    6か月前

    第28話 カニ尽くしと生き返り大作戦 | 2021年12月

       甲本結季は果穂のリフレクソロジーのサロンで施術前にフットバスで足をあっためていた。冷え切って金属の棒のようになっていた足がお湯で溶かされていく。結季は久し…

    寒竹泉美
    6か月前

    わたし今日から25歳になるわ、と思ってみたら、たくさんのことに気が付いた

    『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』という本を読んだ。日本では2020年に発行された比較的新しい本。脳関係は結構チェックしているので、知っていることも多…

    寒竹泉美
    7か月前

    呪いに満ちたこの世界で、希望をもって世界を想像し創造する、比較的簡単な方法について

    明けましておめでとうございます。新年1発目のnoteのタイトルが「呪い」ってどうよ(笑)希望を持つことについての話を書こうとしているので、まあ、目をつむってください…

    寒竹泉美
    7か月前
    2021年の仕事と創作を振り返る

    2021年の仕事と創作を振り返る

    あっという間に師走で、なのに仕事は全然終わっていなくて、心がすさんでいる日々です。1つの原稿に取り組んでいるときはそのことばかり考えているけれど、終わったら、全部頭から振り払わないと、次の原稿に取り掛かれない。だから、いつも手ぶらで、身一つでいる。気を抜くと虚無感のようなものに襲われてしまう。

    過去に書いたものも、いったい誰が書いたのだろうと不思議に感じる。でも、スケジュール帳や写真を見て振り返

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    じゃあ、わたし、女じゃなくていいやって言ってみたい。|『〈トラブル〉としてのフェミニズム「取り乱させない抑圧」に抗して』 藤高和輝・著(青土社)

    じゃあ、わたし、女じゃなくていいやって言ってみたい。|『〈トラブル〉としてのフェミニズム「取り乱させない抑圧」に抗して』 藤高和輝・著(青土社)

    ノンバイナリーという言葉がある。自分の性は男でも女でもないと認識していることだ。初めてその言葉を聞いたとき、何を言っているのだ? と思った。さっぱり意味が分からなかった。自分の体の性と心の性が不一致なトランスジェンダーとはまた違う。ノンバイナリーを自認する人にもいろいろなパターンがあるだろうけれど、たとえば、女の体に生まれたけれど、女の特徴は受け入れたくなくて、かといって男になりたいわけではない、

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    自然体の謙虚さを身に着けたくて考えた結果

    自然体の謙虚さを身に着けたくて考えた結果

    わたしが尊敬する人は、みんな謙虚だ。すごい人たちなのに自然体で、無理してる感じとか、嫌な感じが少しもしない。ちょこんと、きょとんと、ただそこにいる感じ。殺気を消している感。

    そんなふうになりたいのに、最近のわたしは何だか傲慢で不遜で偉そうな嫌な感じだ。漫画とかで、主人公にやられる役で出てくる、ちょっと腕っぷしに自信がある下っ端のチンピラみたいに、オラオラしている。歳をとって経験が増えて、いろんな

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    第29話 暇人とブライダルフェア|2022年5月

     久しぶりに佐々木から電話がかかってきたと思ったら、第一声が「幸彦、お前、いま暇だよな」だった。質問ではない。確信に満ちた堂々たる断定だった。

    「なんでだよ」

     幸彦は、むっとして不愛想な声で答えた。ゴールデンウィークに入って、どこからどう見てもまごうことなき暇をもてあましていた幸彦だったが、実態がどうあれ、人を勝手に暇人だと決めつけるのは失礼だ。

    「だって、甲本さん、新しいビジネスで連休は

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    「きれい」を無邪気に楽しみたい

    「きれい」を無邪気に楽しみたい

    42歳になった自分の容姿と心の折り合いがつかない。普通に生きているだけで太ってくるし、アプリで加工しないと顔がぼよーんとしてるし、可愛らしい服も似合わなくなるし、白髪が増えてくるし。

    どうやって受け入れたらいいのだろう。自分大好きなうえに、時代のルッキズム(外見至上主義)の呪いにどっぷり浸かって、その呪いも振りまいて生きてきたツケを、どうやって払えばいいのかわからない。

    話は少し変わるけれど、

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    自分がどう生きたいかで進路を決めたらいいよって若者にアドバイスしてたら、自分ができていないことに気づいた話

    自分がどう生きたいかで進路を決めたらいいよって若者にアドバイスしてたら、自分ができていないことに気づいた話

    科学のことを分かりやすく伝えるサイエンスコミュニケーターや理系ライターの仕事に興味があるので話を聞かせてほしい、という連絡が理系の学生さんや博士課程在籍中の大学院生の方から同時多発的にきて、20代の人たちってどんなこと考えているのかなと思ってZOOMでお話しをしたりなどした。

    博士課程在籍中、わたしも進路にとても悩んでいた。博士まで来たのだからそこから先は研究者になるべくがむしゃらに邁進したらい

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    努力していないから嫉妬する権利がない、ということに気がついた

    努力していないから嫉妬する権利がない、ということに気がついた

    活躍している小説家や本屋に並ぶベストセラーと銘打たれた本を見ると、嫉妬で苦しくて逃げ出したくなる。つらくて情けなくてみっともなくて、そんな自分が嫌になる。

    どうにかならないものかと思って、ダメもとで裏紙に自分の気持ちを書きだしていたら、タイトルの結論にたどり着いた。わたしは小説を書く努力をしていないから嫉妬する権利がない、と。

    努力をしていない、と言い切るのは難しい。そんなことない、がんばって

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    誰の役にも立たない自分ひとりの欲望から始める方がいい

    誰の役にも立たない自分ひとりの欲望から始める方がいい

    桜が咲くと、空気が塗り替わる。美しい花はいろいろあれども、ソメイヨシノみたいにあらゆるところに植えてあって、一斉に咲いて、あんなにたくさんの人の心を浮き立たせる花は他にないと思う。

    まあ、やつら、クローンですからね。同じDNAですからね。同じ環境で一斉に咲きますよね。※ソメイヨシノは種ではなく接木で増やすからみんな同じ遺伝子。

    毎年わたし、桜が咲くと「ああ、わたしも桜になりたい」と心底思うので

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    ブランディングとは自分じゃない誰かになることなのかもしれない

    ブランディングとは自分じゃない誰かになることなのかもしれない

    最近ずっと自分迷子。ライターとしても小説家としても。noteに1つ記事を書いては1つ解脱している感じなんだけど、まだまだ脱ぎきれない呪いが山ほどある。

    先日、大学院時代の同級生で研究を続けて教授になった友人の取材に行かせてもらった。研究内容も面白かったし、大学院生のときにどんなことを考えていたのかも初めて知ったし、しばらく会っていない間の人生の試行錯誤も垣間見えて、なんかもう刺激がいっぱいすぎる

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    [掌編]彼女の言葉

    彼女は探している。
    脈を打つ、あたたかい、生きた言葉を。
    街にも、書にも、
    大きく飾り立てられた言葉があふれている。
    彼女はそれらの言葉に一応話しかけてみるが、
    返事はない。
    代わりにガラス玉の空っぽの瞳が
    彼女の顔を映している。

    この世の言葉のほとんどは、オートメーション工場で生産されるようになってしまった。技術は発達し、見映えがよくて、安全な言葉が大量に安価に作られるようになった。ひとびとは

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    称賛や承認をエネルギーにしたら続かない。続けた人だけがたどり着く場所へ。

    称賛や承認をエネルギーにしたら続かない。続けた人だけがたどり着く場所へ。

    小説家の友人馳月基矢さんが楽しそうに活動しているのに影響されて、小説投稿サイトカクヨムに登録した(寒竹のページ)。カクヨムにはたくさんの小説書きがいて毎分何作も投稿されている。投稿しても5分もすれば、新作リストから外れてしまうほどだ。

    以前はそういう場がしんどかった。たくさん読まれている作品に嫉妬したり、自分が見てもらえないことにやきもきしたりしていた。だけど今は、書いたり読んだりする人がこれだ

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    バズりたくない

    バズりたくない

    photo: sayoco

    小さいころ、引っ込み思案で泣き虫で言いたいことも言えない子どもだった。それなのになぜか「目立ちたい」とか「大勢にちやほやされたい」と思っていた。

    これは親から何度も聞かされたエピソードだけど、わたしは毎日幼稚園で泣いていたらしい。しかも、ちょっと男の子に軽く押されたとか、その程度で。わたしもちゃんと覚えている。何かを言われたりされたりしたときに、上手く言い返せなくて

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    自分の能力を因数分解したら、強みと弱みが見つかった

    自分の能力を因数分解したら、強みと弱みが見つかった

    photo: ame

    わたしも所属している理系ライター集団チーム・パスカルのメンバーの森旭彦さんと雑談をしていて、ふと、森さんが「ブランディングって因数分解なんだよね」と言うので、「何それ!もっと!」と盛大に食いついたら解説してくれました。

    「因数分解って、4+6=2×(2+3) みたいに共通の要素でくくりだすことで、たとえばダイソンは掃除機で有名だけど、コアにあるのは『空気を動かす技術』でし

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    第28話 カニ尽くしと生き返り大作戦 | 2021年12月

     

     甲本結季は果穂のリフレクソロジーのサロンで施術前にフットバスで足をあっためていた。冷え切って金属の棒のようになっていた足がお湯で溶かされていく。結季は久しぶりに自分の体を取り戻したような気持ちがした。

    「生き返った」

     結季が言うと、

    「ゾンビみたいなこと、言わないでよ」

     と、果穂が返した。

    「いや、ゾンビはそんなこと言わないと思う」

     思わず結季は真面目に突っ込んだ。ゾンビ

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    わたし今日から25歳になるわ、と思ってみたら、たくさんのことに気が付いた

    わたし今日から25歳になるわ、と思ってみたら、たくさんのことに気が付いた

    『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』という本を読んだ。日本では2020年に発行された比較的新しい本。脳関係は結構チェックしているので、知っていることも多かったけど(知っていても面白かった)、初めて見たのが、20代のころの思い出に浸ると脳が健康になるという研究成果。当時の思い出の写真や20代のころに流行していた音楽やテレビなどに囲まれて、昔を思い出して、心や五感を動かす時間を定期的に過ご

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    呪いに満ちたこの世界で、希望をもって世界を想像し創造する、比較的簡単な方法について

    呪いに満ちたこの世界で、希望をもって世界を想像し創造する、比較的簡単な方法について

    明けましておめでとうございます。新年1発目のnoteのタイトルが「呪い」ってどうよ(笑)希望を持つことについての話を書こうとしているので、まあ、目をつむってください。呪いを祓って希望をもたないと、正しく願うことはできないから。

    ずっと気になっていた本『小説家になって億を稼ごう』松岡圭佑・著(新潮新書)を読了して元気が出た。この本にはまったく小説を書いたことがない人が小説を書いてデビューして大ヒッ

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