寒竹泉美
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じゃあ、わたし、女じゃなくていいやって言ってみたい。|『〈トラブル〉としてのフェミニズム「取り乱させない抑圧」に抗して』 藤高和輝・著(青土社)
ノンバイナリーという言葉がある。自分の性は男でも女でもないと認識していることだ。初めてその言葉を聞いたとき、何を言っているのだ? と思った。さっぱり意味が分からなかった。自分の体の性と心の性が不一致なトランスジェンダーとはまた違う。ノンバイナリーを自認する人にもいろいろなパターンがあるだろうけれど、たとえば、女の体に生まれたけれど、女の特徴は受け入れたくなくて、かといって男になりたいわけではない、
もっとみる自然体の謙虚さを身に着けたくて考えた結果
わたしが尊敬する人は、みんな謙虚だ。すごい人たちなのに自然体で、無理してる感じとか、嫌な感じが少しもしない。ちょこんと、きょとんと、ただそこにいる感じ。殺気を消している感。
そんなふうになりたいのに、最近のわたしは何だか傲慢で不遜で偉そうな嫌な感じだ。漫画とかで、主人公にやられる役で出てくる、ちょっと腕っぷしに自信がある下っ端のチンピラみたいに、オラオラしている。歳をとって経験が増えて、いろんな
第29話 暇人とブライダルフェア|2022年5月
久しぶりに佐々木から電話がかかってきたと思ったら、第一声が「幸彦、お前、いま暇だよな」だった。質問ではない。確信に満ちた堂々たる断定だった。
「なんでだよ」
幸彦は、むっとして不愛想な声で答えた。ゴールデンウィークに入って、どこからどう見てもまごうことなき暇をもてあましていた幸彦だったが、実態がどうあれ、人を勝手に暇人だと決めつけるのは失礼だ。
「だって、甲本さん、新しいビジネスで連休は
ブランディングとは自分じゃない誰かになることなのかもしれない
最近ずっと自分迷子。ライターとしても小説家としても。noteに1つ記事を書いては1つ解脱している感じなんだけど、まだまだ脱ぎきれない呪いが山ほどある。
先日、大学院時代の同級生で研究を続けて教授になった友人の取材に行かせてもらった。研究内容も面白かったし、大学院生のときにどんなことを考えていたのかも初めて知ったし、しばらく会っていない間の人生の試行錯誤も垣間見えて、なんかもう刺激がいっぱいすぎる
自分の能力を因数分解したら、強みと弱みが見つかった
photo: ame
わたしも所属している理系ライター集団チーム・パスカルのメンバーの森旭彦さんと雑談をしていて、ふと、森さんが「ブランディングって因数分解なんだよね」と言うので、「何それ!もっと!」と盛大に食いついたら解説してくれました。
「因数分解って、4+6=2×(2+3) みたいに共通の要素でくくりだすことで、たとえばダイソンは掃除機で有名だけど、コアにあるのは『空気を動かす技術』でし
第28話 カニ尽くしと生き返り大作戦 | 2021年12月
甲本結季は果穂のリフレクソロジーのサロンで施術前にフットバスで足をあっためていた。冷え切って金属の棒のようになっていた足がお湯で溶かされていく。結季は久しぶりに自分の体を取り戻したような気持ちがした。
「生き返った」
結季が言うと、
「ゾンビみたいなこと、言わないでよ」
と、果穂が返した。
「いや、ゾンビはそんなこと言わないと思う」
思わず結季は真面目に突っ込んだ。ゾンビ