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ブランドロゴづくりのよくある問題

第一 はじめに

 以下の文は、何らかの意味で商品企画に関わる方々に読んでいただきたいと思っています。多分、以下には思いもよらないことが書いてあるんじゃないかと思います。

第二 原則、一度決めた商標を使い続けないといけない

 商標登録を受けた場合、どのような商標をどのような商品につけるのかを特許庁に登録することになります。商標登録を受けると、登録した商標を登録した商品について使えるのは商標権者だけということになります。

 ここで重要なのは、商標権者が使えるのは登録した商標そのものだけということです。同じ意味の商標についても使える訳ではありませんし、デフォルメした商標についても使える訳ではありません。

 登録した商標以外の商標が使えないという点については確かに色々例外がありますが、どれがその例外にあたるのかなどということは専門家でもなかなか分かるものではありません。まして常識で分かるものではありません。

 では登録した商標以外の商標の中でも同じ意味の商標を使ったりデフォルメした商標を使ったりするとどうなるか。そういう場合、ときどき商標権が強制的に取り消されます。5年間同じ商標について商標登録を受けられないこともあります。巡り合わせが悪ければ、何十年も同じ商標について商標登録を受けられないことがあります。

 例えば、モノグラムで「ZYXW」と書かれた商標について商標登録を受けたら、活字体で「ZYXW」と書かれた商標を商品につけてはいけないのです。活字体で「ZYXW」と書かれた商標を商品につけたいなら、モノグラムで書かれた「ZYXW」の他に活字体で書かれた「ZYXW」について商標登録を別途受ける必要があります。

 言い換えれば、一度決めた商標は変えずに使い続けないといけないのです。やむを得ない事情は色々ありますが…

第三 よほど注意していないと、信じられないようなことがおきる

 ”「商標権者が使えるのは登録した商標そのものだけ」なんて当たり前すぎる、そんなこといちいち注意して貰わなくてもちゃんと登録した商標を使い続ける”と思う人はいるかも知れません。でも、実際にはそうでもありません。

 新聞で見た実例にこんなものがありました。とあるベンチャー企業の社長さんが商標登録出願をしたところ、見事に商標登録を受けることができたそうです。喜んだその社長さんは早速その商標についてのロゴの作成を発注したそうです。そういう場合はそのロゴができてからそのロゴについて商標登録を受けないといけないのですが。

 ちなみに、ロゴについて商標登録を受ける場合だと、そのロゴのデザインがいつの間にか似ても似つかぬ別物に化けていることも珍しくありません。そんなことになってしまうと手の施しようがありません。

 文字のみの商標についても別物に化けることはよくあります。多いパターンとしては略称にとって代わっているというものがあります。複数の音節があるような長い商標についてそういう傾向があるような気がします。

第四 デザイナーさんには、商標の形態を一切変えないように強く念を押すとよい

 実務に携わる中で薄々と気づいてきたのは、そういう風に商標を化けさせるのはデザイナーさんかデザインに関心の高い方らしいということです。チラシのデザインとか、のぼりその他の販促品とか、そういうものを製作する過程で、どうやら改変が望ましいと判断して商標をアレンジしているようなのです。

 確かに、語感をよくするとか消費者の目を引くようにするとか、そういった意味で商標の形を変える方が良いと感じることはしばしばあります。形が変わる前の商標と変わった後の商標とを比べると後の方が見栄えすることが多いように思います。

 でも、そうだとすれば商標登録の前に徹底して商標のロゴをデザインして欲しいと思います。そして、決まったデザインを尊重して欲しいと思います。上で述べたような「ロゴのデザインがいつの間にか似ても似つかぬ別物に化けている」という事態はいかがなものかと感じます。

第五 蛇足かも知れない商標の意義

 商標はデザインである前に顧客と商品とをつなぐ道しるべなのです。企業が培った信用と顧客とをつなぐ道しるべでもあります。

 例えば、山登りをしたときに道しるべがしょっちゅう変わっているとすれば、その道しるべを信用できるものでしょうか。この「信用」を意識しない限り、いくらブランドブランドと言っても仕方ありません。

 このような感覚はぜひ皆さんに持っていただきたいものだと感じます。

第六 まとめ

 商品につけているロゴや商品名はいつの間にか誰かが似ても似つかないようにデフォルメしてることがありますが、そういう事態が起きないよう管理が大切なのです。兎にも角にも、この点を忘れないでいていただきたいと思います。

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