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吉村君はヒキが良い

 「私だけかもしれないレア体験」というお題があるということで私も自分の過去を振り返った。

 男子校を出て工学部に進んだ私には当然高校大学の青春時代に甘酸っぱいレア体験などあるはずもなく。

 私の高校時代は大学受験と部活に塗りつくされていた。青春とは甘酸っぱいものだと巷では聞くのだが、私にとっての青春とは猛暑と極寒との日々を激しい稽古(剣道部だった)に費やす実にオツカレな代物であった。青春とは辛いものだと身体で分からされたのがあの日々である。よく剣道部監督(我々は師範と呼んでいる)が「高校時代何をしとったかと卒業後に聞かれて答えられるような生活をせなアカン!」と言っていたが、まさに何をしていたか明確に答えられる高校生活だった。その割に剣道はヘタクソのまま終わったのだが。

 工学部4回生で私が配属された研究室には1人の女子学生も配属されていた。彼女は、私が所属した学科132名のうち3名しかいなかった女子学生の1人である。彼女とはまったく色気のない友人関係のまま今日まで付き合いが続いている。彼女は同じ学科の別の研究室の男子学生と交際したのだが(ちなみに彼らはその後結婚した)、交際が始まったときに曰く「アンタらアタシのこと一切そういう目で見んかったやん」と。あの麗人と毎日顔を合わせて一切そういう気がおきなかった私はきっと何かを間違えて生きているのだろう。

 こうして書いてみるとレアなのは体験ではなく人間性なのではないかと思えてくるのだが、ちゃんとレアかも知れない体験は持っている。ぜひとも披露させていただきたいレアな体験が色々とあるのだが、それは叶わない。なぜなら、秘密を守る義務の下で体験したことだからだ。

 一方、秘密を守る義務がない体験もある。ある人に「吉村君はヒキがえぇなあ」と言われたことだ。ここで言うヒキの良さとは「弁理士として資格を取得するにあたり知識として習得はするけれども実際に体験することはまずない経験を持っている」ということを意味する。

 例えば私には公示送達の経験がある(経験回数は披露できないがそこはご容赦いただきたい)。いわゆる裁判沙汰になろうとするのに相手方の住所が杳として知れない場合、この公示送達の手続が取られる。裁判沙汰の場合には相手方に書類を送る必要がある。相手方の住所が杳として知れない場合には書類を送ることができない。でも、公示送達が認められれば、裁判所の掲示板に書類を掲示して一定期間が過ぎることで相手方に書類を送ったのと同じ法的効果が得られる。書類が送られなければ裁判が進められないのでこの公示送達は便利な制度と言えるのだが、やってみると簡単に利用できる制度ではないのだ。

 2023年1月現在でも多分変わっていないと思うのだが、私が公示送達を体験した当時に特許庁が公示送達を認めるためには、相手方の住所が杳として知れないということにつきある程度の証拠を提出する必要があった。つまり、住所が杳として知れない者を相手にして裁判(正しくは審判)を私が使用とする場合、私はその者の住所が杳として知れないという証拠を特許庁に提出しなければならない。それがなければ公示送達どころか裁判手続(正しくは審判手続)自体が却下されてしまうのだ。杳として知れない証拠をどうやって作るのかという疑問が生じることと思うが、作り方はあるのである。当然守秘義務が関わってくるのでその具体的な体験談を披露することはできない。

 ひとつだけ、これは守秘義務の範疇ではないと思うので披露させていただくと「厳冬の朝5時に縁もゆかりもない土地の公園でひげを剃っていたら、たまたま通りかかった人に不審者を見る目で見られた。」というのがある。スケジュールの都合上このタイミングでしかひげを剃れなかったのだ。あとの証拠づくりの一般的プロセスは・・・特許庁に問い合わせたら教えてくれるかも知れない。知らんけど。

#私だけかもしれないレア体験

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