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東京湾フェリーのすすめ

太陽が沈んでいく。毎日くり返される現象に、こんなにも心動かされるのはなぜだろうか。

ここは東京湾、船の上だ。

江の島、海ほたる、箱根、熱海、伊豆。大学一年の夏休みに運転免許を取ってからというもの、暇さえあれば友人とドライブに出かけてきた。それから二年余りが経ち、車で日帰りできてしっくりくる目的地がなくなってきた。


このマンネリ化した週末ドライブの一服の清涼剤となるのが、40分の短い航海だ。


東京湾フェリーは、神奈川県横須賀市の久里浜港と千葉県富津市の金谷港を結んでいる。

この二つの港の間に通っているのが、浦賀水道だ。
長い航海を終え東京湾へ辿り着いた船、今こそ大海原へ立ち向かわんとする船、ひっきりなしに行き交っている。


短い航海の間に、私は旅立つ者の後ろ姿を見送り、辿り着いた者を迎え入れる。


海原の風に吹かれて、彼らの旅路に思いをはせる。


伊豆半島に沈んでゆく、太陽が時を刻んでいることに気付く。

彼はその輝きだけを残して姿を消した。


振り返ると、そこには淡い紫の空と月があった。



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