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労働者供給事業とはなにかーー労働組合などが行う案件紹介事業ーー

前の記事でSES業務を行っている人に対して労働者供給事業を紹介する文章を書いた。だが、あまり馴染みのないこの事業について、一度だけの説明ではよく理解できないと思う。そこで今回は労働者供給事業についてわかりやすく書いてみようと思う。
簡潔に書くので、完全に正確な内容ではないかもしれない。あくまでも事業に数年参画している一組合員の考えとして受け取って欲しい。
前回も記したが、今回の記事の内容も個人的な見解だ。組合全体が合意した内容ではありません。より正確な情報は各組合にお問い合わせください。

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労働者供給事業 = 労働組合などが行う案件紹介事業

わかりやすく書くとしたが、すでにタイトルに書いてある。
労働者供給事業とは、労働組合などが行う案件紹介事業だ。
これも前の記事に書いたが、IT技術者に限らず、港湾労働者や音楽家、ドライバーといった労働者が作る労働組合が案件を受け取り、その案件を労働者に回す。労働者は働いて賃金を受け取る。
ここで重要なのは、労働組合は非営利組織だということだ。つまり営利企業のように利益を出さない。利益を出さないということは、その分だけの金額が労働者に回る。
さて、では働いた単価分が丸々労働者に行き渡るのかといえば、たしかにそうではない。(おそらくどの組合も同じだろう。)いくら非営利組織といえども、案件や労働者への賃金支払などの管理業務などを行っていただく専従職員に対しての給料や、事務所があるならその賃料も必要だ。経費は当然かかる。そこで単価から組合費を収めるということになる。
しかし、その組合費も営利企業のマージンに比べて非常に少額だ。なぜなら非営利組織なので、例えば専従職員には現実的な金額しか支払ってはならないし、会計には抜き打ちで行政の監査が入る。おかしな金額の支出があれば事業の停止に追い込まれることになる。

なぜ労働者供給事業は広まらないのか?

さて、ここまで書くと、どうしてこうした労働者供給事業が広まらないのかと疑問に思う人もいると思う。
第一に個人的に思うのは、単純に組合の広報能力が不足しているからだろう。非営利だけあって、広報をきちんと行う動機が営利企業に比べて不足する。また、そもそも労働組合にはそれぞれの職業に就く人が集まるのであって、できることに限度がある。例えばIT技術者は当然広報マンではない。すると、どうしてもビラ配りぐらいしか思いつけないということになってしまう。この点については私自身も能力不足が悔やまれる。
第二に、労働者供給事業へ参画するということは、結局フリーランス的な有期雇用になるからだろう。もちろん働いている間は労働者としての権利は保証されるし、切られても雇用保険に加入するので給付金が一定期間出る。セーフティネットは保証されているが、とはいえ正社員よりかは当然不安定な有期雇用である。
IT業界は案件が豊富にあるので、コンピュータ・ユニオン内で生活に困ったという組合員の話を聞いたことはないが、外部の立場から考えれば不安に感じる点だろう。

もし労働者供給事業が広まったとしたら?

さて、こうやって書いてみると、私はもっと労働者供給事業が広まったときのことを夢見てしまう。
だが、そんなことは可能なのだろうか。というか、例えばIT案件を労働者供給事業が奪うわけだから、現在のIT業界に対する破壊的取り組みではないのかと私企業から疑われても仕方がない気もする。例えば技術者派遣を行うSES企業やITフリーランス案件を扱う企業から、我々組合の労働者供給事業は毛嫌いされるのではないか?
労働者供給事業についての認知が広まっていない現状において、毛嫌いなど全く起こっていない(組合は関係会社と連携して案件を労働者に紹介している)ので、そのような不安を抱くことは全く問題外ではある。しかしこの点に関しての思考実験は重要だと私は思う。
このことは次の記事で書こうと思う。個人的には、そうした私企業と労働者供給事業は共存できるだろうと考えている。そしてこの労働者供給事業が、日本の労働市場に対する労働組合の一つの必要かつ重要な役割だと思う。

ちなみに私が加入しているコンピュータ・ユニオンのウェブページにも労働者供給事業についての説明は記載してある。参考にしてほしい。
労働者供給事業について

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