「迷惑をかけないようにしたい」禁止!
新人刑務官の指導をしてて思っていたこと
いわゆる警察学校と同じようなものが刑務官にもあります。矯正研修所といいます。
そのうち、東京府中にあるのが幹部を育成する中央研修所になります。新しく刑務官として採用されたら、全国8カ所にある矯正研修支所で初任者研修を受けることになります。
私はそこで3年間ほど教官をしていました。
そもそも、刑務官ってどんな仕事か、実は私も採用になるまで知りませんでした。警察官の親戚と思ってたし。
端的にいうと、法務省の職員のうち、刑務所等において被収容所(受刑者とか被告とか)の取り扱いを専門に行う人で、制服が支給されて階級がある人ということになります。なんか余計わかんないよね。
まぁ、それ以上にわかんないのは外の世界と全然違うこと。刑務所の中には刑務所でしか通用しないルールとか常識があって、新しく入った職員はもう大変。
で、初任者研修に来て自己紹介や抱負を述べてもらう時に、ほとんどの人が言うのが
「早く一人前になって、迷惑をかけないようにしたいです」
もう、耳にタコだしこの言葉、大嫌い。
そもそも「迷惑をかけない」は目標ではない
刑務所というところは、(施設によりますが)非常ベルが1日に何度も鳴り響きます。
「非常」というのは「通常で非ず」なので、そういったところはそもそも異常なのですが、それが常識です。そう言えば敬礼する時の掛け声は「異常なし!」でしたねぇ。異常がないことを確認してるのですよ。
非常ベルが鳴るとどんな感じかというと、全ての職員が現場に駆けつけます。よくあるのは刑務作業をしている工場なんかです。駆けつけると、成人男子が怒号を発して殴り合っているので、黙らせて引き剥がして制圧します。
一般社会では、大の男が本気で殴り合いの喧嘩をしている状況というのを見ることなんて滅多にないと思いますが、それが日常的に発生しています。
そんなところに、「迷惑をかけない」人がいても邪魔なんです。というか目障り。できることはいくらでもあります。
こっちは、暴れる男をひっ捕まえて連行しているのだから、扉を開けるとか通路を確保するとか、それができないのなら、関係していない受刑者にこっち見ないように監視するとか、第二弾が発生しないように警戒するとか・・・・
だから、「迷惑をかけないようにしたい」とか言われてもムカっとするだけです。
居場所を作る努力は迷惑なんかじゃない
学生の時は、一人に一つ、ちゃんと学籍番号があって椅子と机とクラスが用意されています。
とりあえず、空気を読んでそこに存在していれば、それが居場所になります。「迷惑をかけない」ことで安全に期間を過ごすこともできます。
しかし、社会ではそうはいかない。皆それぞれに自分の居場所を作るために必死で戦っているのです。
それがわかっている大人は、必死で居場所を作ろうとしている人を馬鹿にしたり迷惑に思ったりしません。
「迷惑をかけるな」という大人は、あなたが作ろうとしている居場所を独占しようとして、あなたに脅威を感じて怯えている意気地なしと思って差し支えありません。
あなたが本気になれば、あっという間に倒せる「雑魚キャラ」です。蹴散らしてやりましょう。
あなたが新しい居場所を作れば、世界はそれだけ広がります。あなたの努力が世界を変えるのです。
ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん
新しく入った職員は、多分、後ろ向きな気持ちで言ったわけではないでしょう。
職場に入って、それまで見ていた社会とは全く違う世界を無理やり見せられます。例えば、受刑者の入浴場にずーっと監視しとけ、と言われて立たされて、様々な刺青を見せつけられて、さらに、チンピラに睨み返されたり、訳のわからないことを話かけられてびびらされたり。
単に、暇つぶしにからかわれているんだけどね。
教える方も教える方で、優しく丁寧にというようなタイプはいません。
あまりにもそんな異常な世界で堂々している先輩を見て「迷惑をかけてはいけない」と思うのも当たり前です。
だから、自己紹介にケチをつけたりはしませんが、迷惑をかけないなんてことを目標にせず。ここで生きていくと決めたのであれば、必死で食らいついて欲しいです。
「迷惑をかけますがよろしくお願いします」でいいんじゃないかなぁ。
続きを書きました
記事が好評なので、続きを書いてみました。
こちらです。
生きるエネルギー
以前に書いた「迷惑をかけないようにしたい」禁止!という記事に、「いいね」が140個以上ついてすごく評価されています。
特に若い方からの反応が良いのです。
ある意味、それくらい若い世代が「迷惑をかける」ことに恐れを抱いているのかなぁ。と思ってちょっとかわいそうになります。
そこで、自分自身が若い頃はどうだったかということについて考えてみました。
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