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刑務所とドキュメンタリーとこれからのメモ

無期懲役受刑者

昨日(6月6日)のTBS報道特集で、岡山刑務所に収容されている無期懲役受刑者についてのドキュメンタリーが放送された。
岡山刑務所には3年間勤務した関係で、今回の報道では、懐かしい映像とよく知っている職員を拝見することができたので、そういった意味で、個人的にはいい番組だったと思う。
私が勤務していた際にも岡山刑務所には取材が何本か入ってきて、その対応をさせられる機会があったのだけれども、個人的な意見を言わせて貰えば、マスコミの無期懲役の取材が一面的なのだ。
打ち合わせにくるプロデューサーと話をするとよくわかるのだけど、本人たちには放送日と予め考えているストーリーがあって、それに合うような絵を撮りたいという意図しか感じられない。
そこで、こちらもその意図に合わせてスケジュールを提案する。予定調和である。
で、結局できあがるのは、お涙頂戴のストーリーである。一方、Twitterなんかを見てみると、予想通り、「すぐ死刑にすればいいのに」とか「犯罪者を外に出すな」等の無責任で無意味な書き込みの羅列だ。
まぁ、そんなもんなんですけどね。

報道を受け入れる意義と違和感

多分、「警察24時」的な番組を見ている警察の皆さんも同じように思っているのではないかと思います。要は、一時的な興味のための刺激的な消耗品を流れ作業で作って放送しているだけです。
こっちとしては、そうであっても何人かでも興味を持って、その映像の先にあるものを感じてくれる人がいることに希望を持っているのだけれども、どっちかというと無力感の方が強い。
若い記者さんと話す機会が多いのだけど、その際に、「刑務所のドキュメンタリーをちゃんと腰を据えて作れば、ぜったいにいいものになる」って言うのだけれどあまりそういった話にはならない。
確かに、自分の見てきたものを振り返ると、そう簡単にまとめられるものでもないのかなぁ、とも思うのだ。

そこにある人生

刑務所と言うものは、入ってくる原因も、入っている間も、出所した後も含めて剥き出しの人間がさらけ出されるもので、特に初犯の長期受刑者を収容している岡山刑務所の雰囲気は他の施設と全く違う。こういった場所は他にはない。
特殊な人間が収容されているのだと、受刑者を別の種類の人間と思っているうちはまだいい。受刑者という法的地位と、統一された受刑者の服にまどわされるが、自分と同じ人間だと感じ始めた時点で、冷静には分析できなくなる。
前にも書いたと思うが、報復と更生、本人と被害者、刑務所の中と世間の様々な断絶と矛盾がない混ぜになり、解答がないまま澱のように塀の中に溜まっている。
そして、それはそれぞれの人生をかけたものだ。
私ができたことは観察者としてそこにいただけなのだ。
でも、それでいいのかなぁと考えていた。

何ができるのか

無期刑ではないが、ちょっとした知り合いの受刑者から時々手紙が届く。
社会でのコロナ騒動について心配した書き出しから、受講している職業訓練のこと、次に受ける予定の国家試験のことなど。出所したら会いたいというような話・・・・
たわいもない話だが、便箋の右端の下には検閲したことを示すスタンプが押してある。
考えてみれば、人の私信を読むなんて仕事、他にはなかったよなぁ。と、現在は一般人の私は感慨深く思う。
今の仕事の状況や元気でがんばるように返事を書いて投函したが、何度もやりとりしている手紙の中に、本人が起こした事件のことや、妻や子供のことがいつまで経っても記載されていないことに、私は気がついているし、本人もそのことはわかっている。
彼は何度も少年院や刑務所を行き来しているが、再犯の原因はそんなところにあるのだろう。

手紙に書いたこと

保護司になって1年が経過しました。現在まで保護観察対象者の担当にはなっていませんが、やっぱり長いこと仕事をしていたせいで、何か更生保護にかかわることもやってみたいと考え始めています。
ここは、職種を選ばないなら仕事はありますし、物価も安いし家賃等についても格安です。ヤクザの事務所もありませんし、覚醒剤犯罪もありません。刺激はありませんが、環境は非常にいいです。
もっと先になるとは思いますが、空き家を利用して、自立準備ホームをやってみてもいいかなぁ、と最近考えています。
そんな感じでのんびり過ごしています

 一般論として、元受刑者の社会復帰については社会的に意義があることだと多くの方に賛成いただけるのだが、現実としては、ほとんどの方が自宅の近くにそんな場所ができてほしくないと思うんだろうと。
 そんなことをつらつら考えていると、ひょっとしたら自分がやらないといけないのじゃないかと考え始めてしまった。というか、多分やりたいのだろう。
当然、地域を説得したり、出所者の受け入れや指導は私の仕事で、相当に困難なことだと理解しているのだけれど。
 できないかもしれないけど、まぁ、とりあえずこんなことを考えてると書き留めておこうと思う。
 絵本屋を始めようと思った時もこんな感じだったから、多分、私がここでやることに意味があるのであれば、自然とそんな方向に行くのであろうと思っている。


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