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ふっかつのじゅもん

さっきょくか すぎやまこういち がこちらをみている
  かれのおんがくが すき
▶ かれのおんがくが とてもとてもすき

作曲家の『すぎやまこういち』先生が新しい世界に旅立たれた。

僕は夕方にこのニュースを知って衝撃が走った。事前に病気を患っていたとか知っていれば心の準備もできていようが突然の旅立ちだったため、一気にすぎやまロスに陥ってしまった。帰りがけにスマホでドラゴンクエスト序曲『ロトのテーマ』を流す。いつ聴いても懐かしい。

小学生の頃に夢中で遊んだドラクエ。僕は当時人気だった「ドラゴンクエストI・II・III」をプレイした。どれもメチャメチャ面白いと聞いていたので、借りたり買ったりして、それぞれ手に入ったときは家に帰るなりすぐにファミコンのスイッチを入れる。そして流れたのがこの曲である。

当時のファミコンは和音とかないが、それでも子供の僕には十分すぎる。いきなりこんな曲が流れたら、ワクワクしっぱなしである。

ドラクエは勇者が悪のモンスターと戦って勝つ、いわゆる王道の物語。ゲームの中も、お城とか街並みが中世のヨーロッパ風。このゲームに当時のファミコン主流のピコピコ音源は微妙だ。

とにかく他のゲームとは音楽の雰囲気が違っていて、それはゲームでは珍しいクラシックを取り入れたからだと後で知った。今ではオーケストラで演奏なんて当たり前になってきたが、昭和の時代にクラシックをゲームに持ってきたのはすぎやま先生らしい発想だ。

当時は「一日一時間」というスローガンが流行っていたが、子供たちはゲームをこっそり長時間遊ぶ。だから長時間聞いても飽きない音楽が必要だ。主人公、すなわち勇者となった「僕」が1人で冒険の旅に出る。よって、そんな気分を盛り上げる曲が大切。それが『広野を行く』という曲だ。

この曲はカッコイイ。『広野を行く』を聴きながら、僕は魔物から世界を救うたびに向かう。現実世界での小学生には、そんな大それたことはできないけれど、ドラクエの中ではできる。この曲を聴きながら道なき道を進むと気分が高まるのが自分でも感覚的に分かっていた。ゲームに音楽はとても重要だ。それを僕らに教えてくれた気がした。

とくに楽しかったのがドラクエ2。このゲームは、続きをやる場合『ふっかつのじゅもん』なる物をいれる。実はドラクエ2にはセーブ機能がない。そのため続きを入れるには、謎の暗号文が画面に出される。しかも、超絶長い。これを子供たちはノートに書きとっておく。それを次回やるときに画面に入力するのだが1文字でも間違ったら復活しないので、結構時間がかかる。そのため「ふっかつのじゅもん」を入れるときは苦痛だ。だけども、僕は苦痛には感じない。なぜなら、暗号を入れるときの音楽がすごく素敵だったからだ。曲の正式タイトルは『LoveSong探して』。

この呪文を入力する作業、ゲームを始めるのに10分以上かかるのである。これを聞きながら、軽快に呪文を入れていた気がした。ドラクエは、続きをコンテニューとか言わず「ふっかつのじゅもん」としたのも素晴らしい。なんだか、自分が魔法使いになった気がする。

本当に名曲で、今思うと当時の思い出がよみがえり泣きそうになる。僕は、しまむらで買った半袖半ズボンの洋服を着て、炭酸の抜けかけたコーラの甘い香りを横におき、自分の家や親せきの家で「ふっかつのじゅもん」を唱えるのだ。これが楽しかった。すごく楽しかった。

今思うと、この「ふっかつのじゅもん」は、カセットが違ってもできるわけで、今も呪文を書いたノートさえあえば、当時の僕がどこまで進めたかがわかるわけで、ローカルなシステムだけれど考え方によっては、どこでもできるので時代を超えて場所を超越する画期的なシステムかもしれないと思う。「ふっかつのじゅもん」を偉大な形に導いたのはまちがいなく、すぎやま先生の名曲があってこそだ。今聴いても懐かしく、そして気持ちが落ち着いてくる。すごく不思議な曲だ。

そんな思い出が満載のすぎやまこういち先生が、新たな冒険の旅に出られた。たしかに、レベル90御年90歳 卒寿まで到達されたので、しっかり頑張ったと思われるがファンの僕としては、せめてカンストのレベル9999歳 白寿まで新曲を作っていただきかかったが、それは贅沢なファンの願いだ。

最近、かつてのCMを見たら、いつの時代も一緒なのかと思った。

ブラウン管のテレビにファミコンをつなげて遊んだ。当時は16インチくらいのテレビでも、なぜか今自宅にある32インチのよりも大画面でやっていた気がする。映像も3Dでなく2D。音楽も和音もなかった。なんであんなに楽しかったんだろうと思うほど、とてつもなく充実していた時間だった。あれからだいぶ時間が過ぎたが、今でもきっと楽しく遊べる自信がある。

2020東京オリンピックでの選手入場でも使われたドラクエの序曲。ロトのテーマが流れたとき選手達が勇者に見えた。そう思えたのは、間違いなくドラクエを遊んでいて、ロトのテーマが心に刻まれていたからだ。おかげで、入場行進のシーンは最高に感動した。

CMのセリフと一緒で「あの頃、僕らは勇者だった」。
きっとこれからも僕らは、ロトのテーマを聞いて勇者となり自分の人生という冒険の書を開いて進めていくと思う。思い出と共に新たな冒険を、これからも僕は続けていく。

----- ふっかつのじゅもんを いれてください -----

ざおり く


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