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キャロットケーキの贈り物

キャロットケーキへのラブコールは
noteでもinstagramでも
散々ぐらいにしている。

そんな中
先日のデザートコース(前々記事参照)の
パティシエさんが、
私のキャロットケーキ好きを知ってくださり
わざわざ作って送ってくださるという…!


恐縮すぎる気持ち半分、
嬉しくて飛び跳ねそうな気持ち。

「公言しててよかった~!!」
と思ってしまう
なんてゲンキンな私。





届く予定のその日、
私はちょうど家を留守にしていて
受け取れないということで
同居している祖母に受け取りをお願いした。

祖母も彼女のデザートコースを食べているので
もはや彼女のファンだ。

ケーキ送ってくださるって!
と言ったら
またあの日のように目をキラキラさせていた。
御年80。


いやちょっと待てよ。
冷凍便で到着予定のそのケーキを
祖母が受け取ってくれた後を想像してしまった私は、


"ほとんどそれを見ずに冷凍庫に入れてほしい"


という
大人気なさすぎる無茶なお願いをした。

「私がまず見たいの!」と言わんばかりに
自分が勝手に留守なくせに、
子供かと突っ込みを受けること間違い無しのわがまま。


自称心の広い祖母は
「わかった!じゃぁ、梱包されたそのまま
 あまりじろじろ見ずに冷凍庫入れておくわ。」

と言ってくれた。
配達員さんから受け取ったあと、
玄関から冷凍庫まで
薄目を開けてそろりそろりと運ぶ
祖母の姿を想像したら笑えた。
(いや、もしかしたらガン見してたかもしれんけど)



そして帰宅後、
送り状まで見事にそのまま冷凍された
袋を開封した。
御年80に負けないくらい
キラキラな眼(まなこ)だったと思う。

中には箱に丁寧に入れられた
それはそれは綺麗なキャロットケーキと
手書きの素敵なお手紙。
お手紙まで冷凍されてしまっていたが、
その内容が温かくて、字から温度が伝わってきて
あっという間に溶けた。


翌日、
前夜から冷蔵庫で解凍しておいた
ケーキが気になって気になって
楽しみに起きた。

この美しいケーキを写真に収めたくて、
仕事道具でもあるミラーレス一眼を
パリに忘れてきてしまった私は
相棒のiPhone片手に、
まるでモデルさんを撮るかのように


「おいしそう…!美しい!」
「うーん素敵!」


とキャロットケーキに声掛けしながら
写真に収める。

なんか、やばいヤツにしか思えん。


見た目から、
優しくて丁寧で
シュっとして、でもスタイリッシュすぎない
彼女らしさが伝わってくる。



早速一口。

人参は千切りでたっぷりと。
人参臭さは無いものの、
その自然な甘みだけがうまく引き出されていて
私の苦手な
砂糖の甘さキーン!!!!
を全く感じない。控えめな、優しい甘さ。


それを引き出している立役者が
スパイスたち。
彼女らしい、繊細で丁寧な味の中に
思ったよりもスパイスがしっかりと効かせてあった。
まさに、ギャップ萌え というやつか。


それは絶妙な配合で、
特に際立つ香りを感じて、彼女に聞いてみたところ
どうやらその子はカルダモン。
スパイスカレー界でも
「スパイスの女王」と評される
その芳醇な香りが特徴のカルダモンは、
北欧本場のシナモンロールにも使われるくらい
甘いものとの相性がいいのは知っていたけれど、
キャロットケーキに入っているのは初めて。

だからか。なんだか今までのキャロットケーキにはなかった
マイキャロットケーキヒストリーの
新たな扉が開かれた感覚があった。


ふんわり、というよりかは、
ぎっしり凝縮しているのに決して重たさはなくて
初日より2日目、2日目より3日目と
日に日に口の中で感じる滑らかさが増す気がした。
そしてフロスティングも
すっきりとした酸味があるからか
全くもってくどさも感じない。

「完成された」
と言ってしまうと、
なんだか敷居の高いものな感じになってしまうのだけど
完成されていて、
繊細で洗練されているのだけど、
お高く留まっていないこの感じ。
寄り添ってくれるこの感じ。
素晴らしいな。美味しいな。




実は昔から、感受性が強すぎるのが悩みだ。
どんな出来事や、物や、人に関しても、
ほんの少しの変化にも気付き、感じて受け取ってしまうのが
辛い時がたくさんある。
のだけど、
一つの食べ物からメッセージを受け取ったり
作ってくださった背景を感じては、気持ちが温かくなり。
そういったことは、
感受性が高いおかげなのだと思うと、
ちょっと嬉しくなる。
だからついつい、食べ物のことに
熱くなって語ってしまいがちなのだけど。




私がこれでもかとキャロットケーキに
メロメロの眼差しで向き合って食べていたからか
家族も興味津々でガン見。


「ちょ~っとだけ、頂戴!」と母。
父に関しては
欲しいと言えずにいて、
電子タバコを吸いながら
横目で見ている視線を感じた。

祖母に関しては
もう当たり前に自分も食べる気満々でいた。
(あげるとはまだ言っていない。)


ということで結局、
父と母用にカットして職場に持っていき、
祖母用にもおやつにカットして
冷蔵庫に入れておいた。


祖母は、実は
チーズ類が苦手で
さらには、食べ慣れないスパイスの味も得意ではない。
なので、
私が家で作るキャロットケーキには
絶対に手を出してこない。

なのにも関わらず、
自ら進んで食べたいと言い出し、
なんなら最初からもう食べる気満々でいて、
食べた感想は、

「うん!スパイス効いてるね!イケるイケる!
 チーズも全然大丈夫だわ!さっぱりしていておいしい。
 これは食べられるわ!」

とペロリと平らげた。

私のは、作っている時点で
「チーズか・・・」「スパイスか・・・」
と残念そうにしているのに、

めっちゃチーズとスパイスへの好感度
上がっとるやないかい。

おそらく祖母、
作ってくださった彼女への信頼が厚いらしい。
(私への信頼は皆無)

苦手でも、
食べてみたいと思わせる
魅惑のケーキだ。


仕事場で休憩時間に食べていた母は、
「お母さん、甘い普通のケーキより
全然こっちの方が好きだわ〜
あんたのを食べたことないから知らんけど、
このキャロットケーキ美味しいわ〜」

と。
私のは食べようともしんかったやないかい。

父は同じく休憩時間に
私が包んであげたラップからそのまま
豪快に頬張っていた。
「うん、美味しい美味しい!」

どうかフォークくらいは使っていただきたいところだが。




あくまでもこれは
個人的な感想と、
オタクバリの食への飽くなき執念から
勝手に記録している文章で
いろいろお許しいただきたいのだけど、
大袈裟ではなく、お世辞でもなく
素直な私と家族の感想。

写真と文から想像力を掻き立てて、
読んでくださった方にも
美味しさや温かさが
伝わったらいいなぁ。


ということで
一瞬にして無くなったキャロットケーキ。
今はまだ、
その余韻に浸っている。ほっこり。

ごちそうさまでした。



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