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スリランカ #4 / 列車の旅


列車が来ると信じられない勢いで人が乗り込んでいった。

それはもうすごい勢いで、我先にと押し合いへし合いし東京の通勤ラッシュよりも激しい争奪戦に目が点になる。

詰め放題の野菜みたいにぎゅうぎゅうになって、後ろから前から押され嘘でしょ?ってくらいの乗車率で出発した。

個人的には200%の乗車率だったと思う。本当に。

車掌室に当たる車両から乗り込んでしまったため、一般車両に乗れと後ろから押されまくった結果、私は車両連結 部分に落ち着いた。もうこれ以上半歩たりとも前に進めない。

ま、でもさすがに途中で空くだろうと思ったのが甘かった。

しばらくすると私はその場に座り始める。この状態で長いこと過ごすことになるだろうという判断だった。

向こう側は身動きすら取れなそうな人たちでいっぱいで、むしろここでラッキーだったのかもしれないと思う。

5歳くらいの女の子を周りからかばうように立っていたお母さんがその子を私の隣に座らせた。

車掌さんが見かねてその家族を車掌室部分に乗せるまでその女の子はニコニコしながら私の膝に手を乗せたり寄りかかってきたりしてとても可愛かった。

目の前はフランス人のカップルで、期待していた景色は列車と列車の間の小さな隙間からチラチラ見えるだけ。

無心で越えようと目の前で上下に重なった鉄の板がぶつかり合う部分を眺め、ここに足が挟まったら痛そうだなとすぐ近くにある自分のつま先との距離を測る。

そう思ってから5分後、それは一瞬の出来事だった。想像していたより自分に近づいた鉄板につま先が挟まったのだ。

!!!!!!!!!!!!!!

想像してほしい、これがどんなに痛いか 泣

あまりの痛さに、声も出ず1人で悶絶し、とっさになかったことにしようとも痛すぎて、きっと血もでてるし、指が折れてるかもしれないと思うほどだった。

これが割と列車の旅の序盤に起きてやっぱりこれは無心で乗り越えるしかないと決め込んだ。

途中であれだけ厳しく車掌の車両に入ってくるなと言っていた人の態度が次第に和らぎ、彼らの車両から顔を出して風景を見たり写真を撮らせてくれた。(ちなみにこの列車 窓もなければドアもない)

外を覗くとドアの部分で体 半分出てる人たちも多く、うん、やっぱりこれは乗車率200%だと確信した。

まるでジブリ映画のように緑に囲まれた山の中を列車が抜けていく。

本当に本当に美しかった。

なかなかハードな状態だったけどやっぱり列車に乗ってよかったなと思った。

いくつか駅を過ぎても全然 人は減らなかった。みんなキャンディを目指しているのだ。

この車両連結部分に座る状態がなんと4時間も続いた。

左足を引きづりながら駅のホームに降り立ったのは午後2時過ぎ。

前に進むのが大変なほど人で溢れた駅で「どうかどうか誰も私の左足のつま先を踏みませんように」と祈りながゆっくりと外へ向かった。

続く

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