時間切れ!倫理
私は高校で社会科(正確には地歴科と公民科といいます)の教師をしています。
社会科には、日本史、世界史、地理、現代社会、政治経済、倫理があります。2年先にはカリキュラム改訂で変更がありますが、同様の分野があると考えてよいでしょう。
さて、我々社会科教員は、みなそれぞれ専門科目があります。私は大学で東洋史を専攻したので、専門は世界史です。とはいえ、教師になればどの科目も教えなければなりません。私でいえば、世界史専門だからといって、世界史だけを教えているわけではありません。
一人の教師が1科目だけ持つことはまずなく、通常2科目、学校によっては3科目以上担当することもあるわけで、ひとつだけは何とか自分の専門科目を教えたい。専門以外を教えるならば、できるだけ馴染み深い科目を教えたいと思うものです。専門外の、初めての科目を教えるには膨大な準備が必要になりますから、できるだけ避けたい。
そんなわけで、毎年3月末、次年度の各科目担当者を決める教科会議では、日頃の和気藹藹(わきあいあい)とはいかなくなることもしばしば。
以上が前置きです。
問題は倫理です。
倫理を専門とする社会科教員は極レアです。大学の文学部哲学科に籍を置いていた人がそもそもレアなうえ、彼らの何パーセントが教師になるのか?なろうとしても、教員採用試験の倫理枠はごくごく少数。倫理よりも日本史や世界史の採用数が多いだろうと、皆さんも思うでしょう。ちなみに私は、これまで同僚として共に働いた倫理専門家は一人だけです。
そこで問題は倫理です。
倫理を誰が担当するのか。
倫理の専門家はいません。
では誰が?
倫理に一番近い科目は?
ソクラテス、キリスト教、イスラム教、仏教。デカルト、カント、ヘーゲル。
これ、世界史の教科書にも載ってるんでないの?
私の専門は世界史です。
というわけで倫理を担当することになった私です。
デカルト、カント、ヘーゲル? ハイデガー、ヴィットゲンシュタイン? これを教える!?読んだことあるん?
準備が十分であろうとなかろうと、週2回のペースで授業の時間はやってきます。
というわけで、時間切れでも、授業はする、のです。
時間との戦いの結末をご報告します。