「作り笑顔が上手ですね」と言われた話
これは遡ること3年前、専門学生だった時のこと。飲食店でアルバイトをしている最中、あるお客様から言われた言葉である。
その時は「なんて失礼な客なんだ」と思った。
店に入りたての新人でもないし、接客だってそこそこ慣れているつもりだった。
接客中は満面の笑みを心がけていた。さらに笑顔で接客すること自体を楽しみながら働いていた。それなのに作り笑顔だなんて言われたくなかった。
接客中はずっと笑っていたと思う。いやむしろ笑いすぎていたのかもしれない。客観的に見て不自然なくらいに。それくらい、私は笑顔で接客するということに強い意識を持っていた。
だって笑顔ってすごくパワーがあると思うから。
高橋優さんの『福笑い』という曲でも、
「きっと此の世界の共通言語は、英語じゃなくて笑顔だと思う」
と歌っているし。
笑顔は、人に安心感や元気、喜びを与えてくれるものだと私は思う。笑顔は「善」である。ただ、これって私という一個人の価値観でしか無いんだよね。
私がやっていたことは「笑顔の押し売り」だったのかもしれない。と、今になっては思う。
押し売りとは、買う意志のない者に対して無理矢理に売りつけること。(Wikipediaより)
あのお客様からしたら、店員に対して満面の笑みなんて求めていなかった。
なのに私は笑顔を押し付けた。
迷惑すら感じていたかもしれない。
「その笑顔、いらないです」を遠回しに言った結果が
「作り笑顔が上手ですね」だったのかな、なんて。
考えすぎな気もする。単純にそのまんまの意味で言ったのかもしれないし。
けれど、あの言葉が心の奥底に棲み着いて消えない。忘れられない言葉ってやつか。もっと嬉しい言葉が良かったな。
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