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【本との出会い 12】「そして星の輝く夜がくる」「海は見えるか」真山仁
なぜか、書店で目に止まってしまった一冊の本。
題名は、「それでも、陽は昇る」。
著者は、あの「ハゲタカ」の真山仁氏。
帯封には、「震災3部作」の最終話と。
震災から10年。先月は様々なメディアで追悼や特集が放送されてました。
被災地に暮らしていない自分たちは、何か、震災のことを少しずつ記憶から削られてきているように感じるなかで、「いま、どうしているのだろう」という思いを巡らすという行為が大切なんじゃないかと感じました。
ほんとにささやかな、ささやかな、被災に思いを馳せる行為として、真山仁さんの3部作を読んでみようと思いました。
今回のnoteでは、1.2作をKindleで読んだ感想を書きたいと思います。
最終話の「それでも、陽は昇る」は、本で読みたいと思い、街の書店に注文しました。
1.子供にフォーカスした震災被災の実態と人間の強さ
震災の出来事、被災者の境遇、行政や教育、様々な人間模様を織り交ぜながら、小学校6年生の目線で、この小説は書かれています。
ちょっとあり得ないよな、と思える主人公の熱血教師は、阪神淡路大震災で妻と娘を亡くしている境遇です。
神戸の仲間、教え子なども、ストーリーの幹を作る重要な立ち位置がある内容は、とても惹きつけられます。
小学6年と言う年代を、いずれのストーリーも共通して位置付けていることは、卒業、思春期、特有の出会いと別れに揺れる意外に、震災がもたらしたそれらが加わっていることがとても切なく感じます。
2.現代の児童教育、家庭問題に、教員としての関わり方
この主人公、小野寺鉄平という教師は、現代ではあまり見かけなくなったはちゃめちゃ熱血教師です。
関西弁で、被災した子供たちに前を向いてもらおうと、時には乱暴な、そして心からの本音で、接していきます。
それは、例えば被災地でなくても、現代の教育環境では、問題になりかねない行為とも見られ、行政や保護者、子どもたちとも摩擦が生じる場面が多々あります。
大人よりもこころが柔軟だからといって、彼らは本当に元気なわけでも、前向きな考えができるわけでもない。ただ、全てを失って呆然としている大人を見かねて、迷惑をかけないようにという無意識の遠慮が働いているに過ぎないのだ。 教師 小野寺鉄平
3.家族を、友人を亡くすという悲劇と、それでも生きるということ
この小説の構成は、主人公と子供たちのそれぞれの出来事を、ショートストーリーで組み合わせています。
救助支援にあたった自衛官、転校でふるさとを離れること、巨大な防潮てい、東京電力の社員を父に持つ児童…
どれも、実際にある境遇の話です。
そのどれもが、いまだ、解決はされていないでしょう。
それでも、子供たちは育ち、そして巣立ちます。
4.震災を風化させないことで命を守る
2作目の「海は見えるか」で巻末の解説を書かれた松本氏の着眼がとても考えさせられる内容です。
阪神大震災から東日本大震災まで、そして新形コロナウィルスの現在。
災害と災害の間、災間を生きていると。
震災を風化させないことは、またくるであろう次の震災に備えることにもつながるから、著者は、災害時の悲劇、光景ではなく災後を小説にしたのだと。
ネタバレになりますが、ストーリーの「てんでんこ」では、卒業生の作品に、津波で流された二宮金次郎の石像を、津波から逃げる壁画を加えて修復することを決めます。
「てんでんこ」とは、方言で各人がと言う意味だそうです。
津波がくるときは、誰かの様子を見に行ったりせずに、各人で必死に逃げろ、というメッセージです。
震災を風化させないメッセージです。
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