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卒業式の前日の散髪

「ほとんど、みんなが髪を切ってたよ」

閉店ギリギリに、長男を1000円カットに連れ込んだ。

待合イスで彼がそうつぶやいた。

そりゃ、そうでしょう。

明日、長男は小学校の卒業式を迎える。

6年間で、体も、気持ちも本当に成長した。

自分の同じ頃を思い出し、比べてみる。

自分は、卒業式の前日に、床屋に来ただろうか。

彼と私は、圧倒的な違いがある。あると思う。

それは、

たぶん自分は、6年生になった頃には、床屋に1人で行っていた。

そして、「横と後ろを短くして、前髪あまり切らないで」という注文をしていたはずだ。 

まあ、そろそろ色気付いてきてたということだ。

彼とのこの違いは、なんだろう。

今日、明日が卒業式なのに、髪がボサボサだということを気づく親も親だが、

今日、ほとんどの同級生が、土日に散髪してきだことを知りながら、自分の頭髪を気にもしない6年生。

もうすぐ中学生。

カット担当の男性は、私にこう言った。

「お父さん、どのくらい切りますか?」

私は、答えた。

「それは、本人に聞いてください。」

とは、言えなかった。

これまで、彼に

「そろそろ、床屋は自分で行くようにしたらどうか」

など、言ったことがなかったことに気づいたからだ。

当たり前のヘアスタイルを、わたしがいつもの通りに注文した。

そのとき、変なことを思い出した。

自分が髪型を気にするようになったきっかけだ。

親父の整髪料、

資生堂アウスレーゼのヘアリキッドをつけてみたときからだ。

彼には、そのきっかけがなかったのだ。

あっただろうけど、動機付けには至らなかったのだろう。 

そうだ、こうしよう。

明日の朝、早起きさせて、私の整髪料を使い、セットの仕方を教えよう。やらせてみよう。

それを、コロナ対策で、母親に卒業式参観を譲った父からの卒業祝いにしよう。

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