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〖短編小説〗12月23日は「東京タワー完成の日」

この短編は640文字、約2分で読めます。あなたの2分を頂ければ幸いです。

これが東京かと思う。これが今の東京なんだと。

こんな高いところから見ると改めて、今の東京が分かる。今まで地面から見てきた景色と同じはずなのに、地上から見る景色はどこか違っていた。美しさすらある。なぜ高いところから見ただけなのに美しいのか。

遠くのものはみな美しいと昔、誰かが言っていた。確かにそうかもしれない。一面何もなく、あるのは所々に瓦礫の山だけ。そんな景色なのに美しいと感じるのは遠くにあるからだ。

今見ているこの景色が神さまの景色だったなら、神さまもなかなか良いものだと思ってしまう。神になどなれるはずもないのに。

神の視点か、、、あっちに街をつくろうとか、ここに道路をひこうとか思うのだろうか。ただ所詮は神の視点。ここからの視点だけでは人間は生きてはいけない。

また、あのホコリと何かが燃えるような匂いが酷い場所に戻らなくてはいけない。地に足をつけ生きねばならない。そこが我々の住む場所だから。

ここに来ても、今の状態をなにひとつ具体的に打破できるとは思ってはいない。ただ見てみたかったのだ。惨状という言葉では表しきれない東京の様子をもっともっと、よく見ておきたかった。

東京の街は元に戻るのだろうか。むかし大戦があり、東京は焼けたと聞く。そこからの復興は目覚ましかったとも。

偽りの神の視点しか持たない、いや持てなかった人間にこれから先の未来があるのかは分からないが、とにかく長くここにいるものではないなと思う。

早く降りよう、なにもない東京に。

12月23日は「東京タワー完成の日」



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