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〖短編小説〗1月14日は「どんと焼き」

この短編は812文字、約2分で読めます。あなたの2分を頂ければ幸いです。

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「えー、明日はdon't焼きだから、皆さんが書いた書初めを盛大に燃やします。明日忘れずに書初めを持ってくるようにしてください」

担任の先生がそんな説明を帰りの、学校も活動しだいで楽しくなるよの会。通称「学活会」の時に話していた。書初めを忘れないことを忘れないようにしなければいけない。

でも、なぜ書初めを燃やすのか?don't焼きってなに?先生は説明してくれなかった。一緒に帰ろうと約束していた、あかべこに聞いてみた(あ、ちなみにあかべこはあだ名で本名は知らない)

「なんで明日、書初め燃やすの?」

「ストレス発散」

あかべこは基本無口。口が無いと書いて無口。でも一応飾り程度に口はある。そんでもって、質問の答えもめちゃ短い。そういう男を高倉健だか、ぽっぽやとか言うんだって、近所のばあちゃんが言っていた。

「ストレスって何?高倉健」

「高倉健って誰?」

「ストレスって何?パート2」

「一生分の幸せを使い果たしてしまった死ぬ寸前の状態」

あかべこの口から死ぬなんて言葉が出てきて、僕は目の前がずーんとなった。やだやだ、死ぬのは怖い。飼ってた犬も、うちのばあちゃんも死ぬ寸前は神のごとき優しさだった。急に優しくなる人まじ注意。そして否応なくストレスは怖いと実感。

死のイメージ払しょくキャンペーンを行うことにしたぼくは、楽しいメリーゴーラウンドよろしく回転しながらの質問「あかべこは、書初めなんて書いたの?」クルクル

「忖度」クルクル

「また知らない言葉だ」クルクル停止

まてまて、あかべこよ。うちら小学生なんだから、あんま難しい言葉よそうよ。その言葉が今年の目標なの?家に帰ったらかーさんかアベノミクスに聞こう。

「Youはなんて書いた?」珍しくあかべこからの質問。

「放し飼い」

「ふんふんふんふん」

あかべこが笑ったよ。ふんふんふんふん笑ったよ。笑うんじゃないよ。大好きな国語辞典から選んだんだから。意味知らないけど。誰か教えて。

1月4日は「どんと焼き」




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