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5月26日は「源泉かけ流し温泉の日」

大浴場に入ると、ものすごい湯けむりで夢の中にいるようだった。肌に感じるもわっとした熱さ、全身にまとわりつく感じが、温泉に来たなと実感する。

裸足で慣れない石畳の床を滑らないようにして歩きながら、まずは体を洗う。おじいさんらしき人が一人、頭を洗っていた。ここにきて早くもいつもの迷いが生じる。眼鏡を温泉でつけるかどうしようか問題だ。眼鏡をご愛用の方は分かっていただけると思うのだが、はじめて入る温泉で、眼鏡をつけなければ前後不覚の上、下手したら入浴すら危ぶまれる状態になる。かといって、眼鏡をしたこともあったが、なにせ曇る。それから温泉の成分が眼鏡を錆びさせたり、痛めるとも聞いたことがあり、どうしようか悩んだ結果、今回は眼鏡をしないで入浴することにした。

あぁ、どちらがシャンプーかボディーソープか分からない。そして、なによりも眼鏡と関係がないが、シャワーの水圧が強い。小さな子供だったら吹き飛ぶぞこれは。ここのシャワーは全部ケルヒャーかと言いたくなる。しかし、この水圧も旅の醍醐味だと思い、なんとか頭を洗い、体も洗った。

そして、ついにお楽しみの温泉タイム。あたりを慎重に見渡し、湯舟を探す。どうやら外湯もあるようで、まずはそちらを堪能することにした。曇ったガラスの向こうに人影が一人だけ。まぁ、一人ならいいかと外湯へと続く扉を開けた。

温泉にはアルパカが先に入浴していた。気持ちよさそうにくつろいでいる様子は、その愁いを帯びたまつ毛が語っていた。まさか外まででて、そのまままたすぐに室内に入るのも違和感丸だした。わたしは湯舟の端からゆっくりと入浴した。

アルパカと二人。いや一匹と一人の混浴。

しばらくすると、アルパカは「ここのお湯は良いお湯です。神経痛にききます」とわたしにいった。

しゃべれるのかと思ったが、一人いや一匹で入浴しているのだから当たり前かとも思う。

「そうなんですね」と私。それからアルパカ氏に質問をしてみる。

「あの、アルパカさんはここにはいつも来られるのですか?」となぜか大変目上の人に話すしゃべり方になった。なんせアルパカ氏の年齢が分からない。わたしより年上の可能性もある。失礼がないようにしないと。

すると氏はこう言う「アルパカではなくラマです」と。

言葉遣い以前の問題でした。アルパカ氏だと思っていた生き物は、ラマ氏でした。大変失礼しました。

「あ、あのすいませんでした」と温泉の効用の汗か、申し訳なさの汗か謎の汗が噴き出す。

「いえ、よく間違われますので。似てますもんねアルパカとラマって」

その後はラマ氏の休日の趣味や、最近なんでもピクルスにすることにハマっているなどの話で盛り上がった。

5月26日は「源泉かけ流し温泉の日」


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