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10月28日は「読書週間『カバーおかけしますか?』」

「カバーおかけしますか?」

「はい、お願いします」

日本中の本屋で本を買うとき毎日のように行われるこのやり取り。その日も僕は何も考えることなく「はい、お願いします」と言った。

この書店のブックカバーは本屋の名前が入ったシンプルなもので、特につけても、つけなくてもいいのだが、僕はいつもついカバーをかけてもらっている。それにしても書店員さんのカバーをかける手さばきは本当に見事。いつもまったく時間をかけずに綺麗に本を包んでくれる。

「今キャンペーン中でして、特別なカバーをおつけしていますが、そちらでよろしいですか?」

いつもは聞かれないことを聞かれて、少し戸惑ったがその時も特に何も考えず「あ、はい」と答えてしまった。そこから、なぜか普段より待たされることになった。書店員さんの手元はちょうど見えないが、いつものようにカバーをかけている……動作に見える。しかし時間がかかりすぎている。

レジで待たされるのはなんだか気まずい。後ろにはレジを待つ人の列ができ始めていた。僕と同じタイミングでお会計をはじめた隣のレジの人はもうお会計を終え去っていた。まさか、特別なカバーを断ったのか。失敗だった。僕も特別なカバーを断ればよかったのだ。いったいどんなカバーなのかは知らないが、どうせどこかの商品の宣伝が入った広告カバーか、もしくはちょっとオシャレなデザイナーがデザインしたカバーか。そんなところだろう。

「大変お待たせしました」

ハッとして、書店員さんの方を見ると目の前にはカバーがかかった本が差し出されていた。そのカバーにはこんなことが書かれていた。

「カバーおかけしますか?」

「はい、お願いします」

日本中の本屋で本を買うとき毎日のように行われるこのやり取り。その日も僕は何も考えることなく「はい、お願いします」と言った。

この書店のブックカバーは本屋の名前が入ったシンプルなもので……

10月28日は「読書週間」




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