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10月16日は「辞書の日」

おびただしい数のそれは、もはや生前の尊厳もなく捨てられ放置されていた。生前は尊敬され人々の役に立っていたのに、その面影は微塵も感じない。ただ、むなしく捨てられている。

ここの管理を任されて随分と経つが、運ばれてくる数は年々増える一方である。そのうちここも満杯となり、また別の場所に新たに廃棄場を建設するという噂が流れている。それにしても毎日毎日よくぞこれだけの量が運ばれてくるものだ。

なんとここは東京専用の廃棄場らしい。東京だけで毎日これなのだから、日本全国では一日にどれだけの量になるのだろう。

そんなことを考えていると、見回りの班かれ連絡が入った。どうやら廃棄場の一部で崩れてしまった箇所があるそうだ。応援に向かうことにする。

事務所から出るとそこは一面の辞書の山だ。それも言葉が何も書かれていない空の辞書ばかり。

毎日無駄に消費される言葉は辞書からどんどんと消え、すぐに一冊を消費してしまう。

専門家に言わせると、ここまで言葉を一日に消費する時代は大変珍しいらしい。

明日もまた大量の辞書がここに運ばれてくる。

10月16日は「辞書の日」

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