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生物はなぜ死ぬのか~小林武彦~(講談社現代新書)

最近ビジネス本とか株の本ばかり読んでいたので、大学時代に自然科学を勉強していた頃を思い出し、生物と死という永遠の関係のタイトルに魅かれ、読んでみました。個人的に面白かったという内容を備忘録も兼ねてブログに記録しておきます。

<「この世の始まり」を見る方法>

  • 宇宙は138億円ほど前に「ビックバン」と呼ばれる大爆発から始まった。

  • 宇宙には無数の銀河があるが、宇宙のあらゆる方向で銀河が地球から遠ざかる動きをしており、宇宙が膨張していると考えられている。

  • その膨張の始まりは138億年前の小指の先ほどの大きさに集約されると言われている。

  • TMT(Thirty Meter Telescope)という口径30mもある巨大な望遠鏡が出来れば138億光年離れた星を見ることが出来るかもしれない。138億年光年離れた星を見るということは、138億年前に発せられた光を見ることになる。つまりビックバン直後の情景を見ることが出来るかもしれないということ。

  • これはロマンがありますね。ちなみに太陽は地球から光速で8分19秒離れた場所にあるので、我々が見ている太陽の光は8分19秒前に発せられたもの。尚、現在観測出来る最も遠くの星は2018年にハッブル宇宙望遠鏡が捉えた90億光年前のイカロス。

<地球に生命が誕生した奇跡>

  • 地球に生命が誕生した最も大きな要因は、太陽からの距離。恒星(自ら光を発する星)の太陽と近すぎず遠すぎずで、生命が誕生出来るほど良い距離を持つことが出来た。

  • 宇宙には、約10の22乗(1,000億の1,000億倍)以上の恒星があると推定されている。その恒星の周りに地球のような惑星がそれぞれにあるとすると、人類以外の地球外知的生命体がいないと証明することは出来ない(=いるかもしれない)。

  • 但し、地球が出来て45億年経つが人類が存在しているのは、そのごくわずかな時間。そう考えると他の惑星で知的生命体がいたとしても、時間軸の問題で邂逅出来る可能性は非常に小さい。

  • 知的生命体と言わなくても、最近のようなシンプルな生物の存在する可能性のある星の数は、銀河系だけでも生物がいる可能性のある惑星は1,000くらいあるのではないかと予測されている。

<大絶滅>

  • 地球上の過去5回の大絶滅は5回あった。理由は、隕石の衝突や大規模火山噴火、酸素濃度の変化等、さまざまな理由があったものの当時の生物種の約70-95%の生物が絶命したと言われている。

  • 絶滅により、進化が起こり、多様な生き物が存在し、それらが常に新しいものと入れ替わりが起こってきた。生物の多様性があるのは絶滅があったから。

<死は生命の連続性を支える原動力>

  • 生き物にとって死とは、進化、つまり「変化」と「選択」を実現するためにある。「死ぬ」ことで生物は誕生し、進化し、生き残ってくることが出来た。

  • 生き物が生まれるのは偶然だが、死ぬのは必然

  • 死は生命の連続性を維持する原動力。死は絶対的な悪の存在ではなく、全生物にとって必要なもの。生まれてきた以上、私たちは次の世代のために死ななければならない

<ヒトの未来>

  • AIの出現で人類の進化の方向が変わる??AIは、ある面においては、ヒトよりはるかに優れている部分もある。

  • ある研究者は、「シンギュラリティ(AIがヒトの能力を超えてしまうよう技術的な転換期)」が起こり、ヒトの仕事の半分近くはAIに取って代わられると予測している。

  • AIとうまく共存していかないと、逆に生きにくくなる可能性があり、AIは便利な道具というよりもヒトよりも知能が進んだエイリアン的存在になるかもしれない。

  • AIはヒトよりも合理的な答えを出すことは出来るが、その結論に至った過程はブラックボックス。使い方を間違えるとヒトの「考える」という行為が激減し、一度考えることを止めた人類は、AIに頼り続け、「主体の逆転」が起こってしまう。ヒトのために作ったはずのAIにヒトが従属してしまう事態が発生するリスクがある。

  • あくまでAIはツール(道具)で、それを使う主体はリアルなヒトであるべき。

  • AIの一番の問題点は、”死なない”ということ。同様にヒトに影響力があり、かつ存在し続けるものに宗教がある。もともとの開祖は死んでしまってもその教えは生き続ける場合がある。AIも将来、宗教と同じようにヒトに大きな影響を与える存在になるのかもしれない。

  • 宗教は、付き合い方を間違えると、戦争やテロにつながるのは歴史から明らか。但し、宗教のいいところは、個人が自らの価値観で信じるかどうかの判断を自分で決められる。それに対し、AIは、思考回路がブラックボックスなのでヒトがAIの答えを評価することが難しい。

  • ヒトがAIに頼り過ぎず、人らしく試行錯誤を繰り返し楽しく生きていくには、私たち「人」とはどういう存在なのか、ヒトが人である理由をしっかりと理解することが重要。人を本当の意味で理解したヒトが作ったAIは、人のためになる、共存可能なAIになるのかもしれない。

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