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高知と神戸の旅 上
いつもお読みいただき、ありがたうございます。旅とやまとうたを愛するサウナーの玉川可奈子です。
Amazonの手先のやうなアカウントからたくさんフォローされてゐたのですが、宣伝がわづらはしいので片端からブロックしました。悪しからずご了承ください。
以前、管理栄養士などを騙るデリヘル業者のアカウントがありましたが、似たやうなものですね。
げにわづらはし。
一、序
さて今回の旅は、羽田空港から始まります。高知県の宿毛市まで行きます。目的は…、ただ電車に乗るだけ、土佐くろしお鉄道、とさでん交通、阿佐海岸鉄道、そして神戸市内の鉄道に乗ることです。史跡、歌枕、観光地はほとんど訪ねてゐません。
この上編では、出発から神戸に着くまで、高知県と徳島県でのことを記します。最後までお読みいただけたら幸甚です。
期末勤勉手当をいただき、少しは気が楽になると思ひきや、日々の業務により身体は疲れてゐます。公務員も楽ではありません。公務員は安泰で楽、といふのはウソです。絶対に騙されないでくださいね。
まして、霞が関はブラック中のブラックです。
正午を過ぎた羽田空港。仕事をいつもよりかなり早く終へて、電車を乗り継いでここまで来ました。搭乗手続きを済ませ搭乗口の近くで待機してゐると、早くも出発が遅れるとの放送が入りました。
羽田空港といへば、「飛行機が好き」といふ人とデートで来たことがありました。
空港つて、色々な施設があつて面白いんですよね。大きな発見でした。しかし、その方とお付き合ひはしませんでした。否、できませんでした。その人の好きなものは、私の嫌ひなものでした。そして、私はその人がそれを好きなことが許せませんでした。話し合ひもしましたが、結局、彼はそれを捨てることができませんでした。譲り合ふことができず、別々の道を進むことになりました。少なからず後悔もあります。
さうしたことを思ひ出すと、私はつくづく恋愛には向いてゐない、誰かと一緒にゐてはいけないと感じます。マア、それでも良いのです。
出発前、同僚のある人に、断捨離にコツを聞かれました。私は、次のやうに答へました。
「旅、ですね。一週間程度の旅行に何を持つて行くかを思ふと、荷物を減らせるでせう。そして、その旅行に使ふカバンは小さいものを選ぶのが重要です。本当に使ふものだけを入れ、さうでないものは入れない。カバンには容量の限りがありますから必然的に少なくなりますし、その一週間の旅に持つて行かないものは、結局、今後の人生で使はないものになるでせう」
その人は納得してゐる風には見えませんでした。
二、羽田空港を発つ
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十四時三十二分、定刻(14:15)より遅れて飛行機(JAL)は動き出しました。三人掛けの真ん中なので、外を見ることはできませんが、その分、読書をして過ごしてゐました。
両隣には、よく肥えたおぢさんが座りました。左隣の人は、高橋洋一の本を読んでゐます。右隣の人はスマホを眺めてゐます。そして、客室乗務員のお姉さんが、忙しなく動いてゐます。飛行機は、この忙しなさが苦手です。
離陸後、しばらく目を閉じてゐました。わづかな隙間から外を見ると、相模の海が見えました。しかし、間もなく雲の中、白妙なる景色となりました。さすがに疲れてゐたのか、少し寝てしまひました。
今の世は 神にあらずとも 天雲の 雷の上を 翔けにけるかも 可奈子
車内サービスが来て、アイスコーヒーをいただきました。そして、十五時四十六分、高知龍馬空港に着陸しました。
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ところで、私はこの空港名があまり好きではありません。
高知龍馬空港の龍馬。坂本龍馬を指してゐるのはいふまでもありませんが、坂本龍馬つて、そこまで偉大な人でせうか。私はその点でかなり懐疑的です。彼はカルト的な人気を誇る福田定一の小説や、武田鉄矢原作の漫画などにより必要以上に有名になり、本来の実力以上に評価されてゐるやうにしか思へません。彼もそれなりに活躍をしたでせうが、それよりも、武市瑞山や中岡慎太郎、瑞山の師であり『万葉集古義』を著した鹿持雅澄。さらに、古くは谷秦山先生(子孫に谷干城将軍)や野中兼山ら、もつと実力者がゐるでせう。
マア、私なら『土佐日記』にちなんで、高知貫之空港にするでせう。
学校の教科書執筆者とかが好きさうなネタとして、高知自由民権空港も思ひ付きましたが、自由民権運動は過激な運動なので却下です。
繰り返しになりますが、福田定一の書いたものに読む価値はありません。「中学生になつたのなら司馬遼太郎くらゐ読め」ではなく、「大学生になつても司馬遼太郎など読むな」です。
むしろ、古典を読みませう。
閑話休題、高知は雨でした。そして、降りる時、詰まつてなかなか出られず、さらに幼児がギャンギャン泣く…。何度も書いてゐますが、玉川、子供の泣き声は本当に苦手です。
急いで空港の外に出ました。外はモワつとしたムシ暑さ。すぐにきつぷ(740円)を買ひ、リムジンバスに乗り込みました。車窓は、そぼ降る雨。青々とした田のかはづは、この雨を喜び歌つてゐることでせう。
降る雨に 田のものかはづ さはに鳴く 声をし聞けば 夏は来にけり 可奈子
三、あしずり9号
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食品の隣で喜ぶ細菌、といふと可愛げがありませんね。
高知駅前に着きました。駅は、地元の高校生で混雑してゐました。急いで、自動券売機で宿毛駅までのきつぷと特急あしずり9号指定席券を買ひました。ホームに行き、少し待つとあしずり9号がホームに入線してきました。
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前回の松山の旅で乗つた2700系、二両編成です。
高知駅から先に行くのは大学生の時以来です。旭駅を出ると藤川球児の母校である高知商業前駅を車窓左手に迎へ、列車はのんびり進みます。
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朝倉駅、伊野駅と小さな駅にちよくちよく停車して行きます。車内に目を向けると、スカスカです。
伊野駅のあたりから、景色が田園風景になつてきました。
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背の低い山と、田んぼ。都の騒がしさから離れ、ひなさかる田舎に来ると、落ち着きますね。
本来は清き流れの仁淀川を渡ると、あしずり9号は速度を上げ、特急らしくなつてきました。
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佐川駅は、特急が停まるやうな駅には見えませんでしたが、数名の客が降りて行きました。次の多ノ郷駅も、特急停車駅には見えません。駅の目の前にはパチンコ屋と思しき店舗が見えます。
まともな日本人なら、パチンコなどしませんよね。
多ノ郷駅を出てすぐに、海が見えてきました。そして、須崎駅到着。出発してすぐにトンネルを出たり入つたりしますが、出たときに見せる太平洋の景色が見事です。雨の影響で、南国といふ感じはしませんが、雄大なのは変はりません。
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土佐久礼駅を出ると、しばらくトンネルが続きます。海を離れ、山の景色が主になり、もやのかかつた幻想的な車窓が目を楽しませてくれます。
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放送と車内メロディが流れ、窪川駅に着きました。ここで数名の乗客が降りて行きました。前に来た時は、次の若井駅に行き、予土線に乗り宇和島に抜けました。その時、四万十川の清流をトロッコ列車で堪能しました。
トロッコ列車は、今も運行してゐます。
今回は、若井駅のさらに西に向かひます。四分ほど停車し、中村駅から来たあしずり16号と交換した後、列車は出発しました。ここからJR四国から土佐くろしお鉄道に入ります。車窓の右手には、四万十川。流石の清けき流れも、けふの雨でひとときの濁りを見せてゐます。
寒暖の差でせうか、窓が曇り外が見え辛くなつてきました。土佐佐賀駅を出ると、再び太平洋が見えてきます。トンネルが多いのが残念ですが、小さな漁港は見てゐて癒されるものがあります。しばらく海岸を楽しみました。
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そして二分遅れて、土佐入野駅に着きました。ここで海岸の車窓とはお別れです。しばらく山の中を走ります。次の中村駅は、土佐一条氏により小京都として栄えたことで知られてゐます。また、土佐くろしお鉄道の車両基地もあります。
中村駅は瀟洒な駅舎でした。窪川駅行きの普通列車と交換し、二分遅れで出発しました。徐々に暗くなりつつある中、トンネルをくぐり四万十川橋梁を渡ると、年配の女性車掌がきつぷを回収して行きました。
ところで、高知県は愛媛県や香川県と比べ圧倒的に田んぼが多いやうに感じました。麦畑をほとんど見てゐません。
雨が強く降り、薄暗くなる中、宿毛駅に着きました。
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宿毛といへば、元関脇の豊ノ島さんの出身地。三役経験者さへも、角界に残れない現状に違和感があります。角界も「少子高齢化」が深刻です。
駅前からタクシーに乗り、宿泊するホテルに着きました。秋沢ホテルといふ地方の小さなホテルです。
早速マッサージを呼びました。三十分ほどで現れたおぢさんマッサージ師、私を一目見るなり、
「左肩ですね」
と言ひました。
「おゝ、何故わかつた!」
いきなりの発言に期待できます。すると、仰向けの状態で、鎖骨の下あたりを揉みはじめました。小胸筋といつて、ここが肩こりの原因とのことです。施術後、首周りが楽になつたやうに感じました。料金は、四十分で五千円でした。旅の楽しみの一つは、各地のホテルでマッサージを受けることですね。
「痛みの原因はすべて筋肉です。筋肉の緊張をゆるめてあげれば、体の痛みはなくなります」
と述べてゐたことが印象的でした。
そして、すぐに寝ました。
四、とさでん交通
…翌朝。
「あゝ、眠い」
四時半頃に起き、すぐに準備をして歩いて宿毛駅に向かひました。
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けふも雨です。歩いて十分ほどで駅に着き、ホームに停まつてゐた中村駅行きの始発列車に乗りました。
五時三十二分、定刻に列車は宿毛駅を東へ向けて出発しました。
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乗客は三名ほどゐました。それにしても、車内が寒い。冷房が効き過ぎです。極度の冷え性で、寒がりの玉川には、この寒さは堪へます。
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マッスルチヌが気になります。
中村駅から、五分の乗り換へ時間で隣のホームの特急あしずり2号に乗ります。昨日と同じく、2700系。けふは三両編成です。反対側のホームには、かつてのあしずり、2000系気動車が停まつてゐました。
1号車の指定席車には、私を含めて三名の乗客がゐました。昨日同じ路線ですが、反対方向になるので見える景色も変はります。路傍のドクダミが花を付けてゐるのが見えました。
浮鞭(うきぶち)駅あたりから太平洋が顔を出します。
今乗つてゐる、土佐くろしお鉄道宿毛線、そして中村線は第三セクターの鉄道ですが、かつては国鉄およびJR四国の路線でした。宿毛線は平成九年に開業した比較的新しい路線で、手元のJTB『時刻表』(昭和六十三年三月号)にはまだありません。
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そして、伊野駅まで来ました。
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ここから今度はとさでん交通に乗ります。私の好きな路面電車です。とさでん交通伊野駅は、木造の風情ある駅舎でした。
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八時二十分を過ぎたところで、列車はやつてきました。
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車掌から、一日乗車券(1,000円)を買ひました。
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八時二十九分、伊野駅を出発しました。駅間が短いので、しばしば停車します。短いところで、北内駅と伊野商業前間の100m。長くても、宇治団地前駅と咥内駅間の900mです。さらに、車両がかなり古いのか車内も吊り革も揺れまくりです。少し眠くなりますが、我慢が必要です。
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はりまや橋駅まで三十三駅あり、しかも一時間近い乗車です。長い…。車窓右手には、土讃線の線路が見えます。
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しばらく列車は道路沿ひを走り、変はり映えしない景色が続きます。県庁前駅では高知城の天守閣が見えてきました。そして、はりまや橋駅で桟橋線に乗り換へます。
桟橋線の道は、かつて桂浜から自転車で帰る時に走つたことがありました。そして、この道沿ひには自由民権運動関係の施設があります。桟橋車庫前駅のすぐ近くにとさでん交通の車庫があり、路面電車がたくさん停まつてゐました。そして、終点の桟橋通五丁目駅に着きました。
桟橋通五丁目駅に再び乗り、今度は高知駅前に向かひます。
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高知駅前ではすぐに折り返し、同じ車両ではりまや橋駅に戻ります。
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折角なので、はりまや橋の写真を撮りました。
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対岸にはペギー葉山の「南国土佐を後にして」歌碑もありました。
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ペギー葉山と「南国土佐を後にして」については、私の拙い言葉よりも、門田隆将氏の以下の書をどうぞ。
せめて、この本の紹介文だけでも引用いたします。
望郷と鎮魂の歌が織りなす「奇跡」
2017年4月に急逝した戦後日本を代表する歌手・ペギー葉山。
愛した人々に見守られ、彼女は代表曲『南国土佐を後にして』の「譜面」を胸に抱いて天へ召された。
彼女の人生を大きく左右することになった同曲のルーツは、戦争中に中国戦線の兵隊たちによってつくられた
『南国節』にさかのぼる。
元兵士が述懐する極限の戦場、生と死の狭間にいた若者たちが異国の地で故郷を忍び、
家族に思いを馳せながら歌い継いだ「望郷の歌」は、同時に仲間への「鎮魂歌」でもあった。
ペギーが、激戦に次ぐ激戦のさなかに生まれたこの歌に出会ったのは、偶然だったのか、それとも必然だったのか。
「死」の4か月前、ペギーが筆者に対して語った数々の述懐は、その謎を解き明かし、はからずも彼女の「遺言」となった。
自身もまた戦争に翻弄された少女時代を送ったペギーによって新たな「命」を吹き込まれた
『南国土佐を後にして』が国民的なヒットとなったことで、新しい曲が発見された。
そしてその曲が、東日本大震災の被災者たちを勇気づけ、大きな影響を与えていく。
戦地の若者が口ずさんだ歌の誕生から実に80年近くを経ても、多くの名もなき人々が共鳴し合う奇跡の物語は脈々と続いていた。
丹念な取材と構成で明かされる、忘れ去られていた日本人の優しき心とは――。
可能ならば、以下の書も併せてお読みください。
はりまや橋の地下通路には、高知が産んだ偉人について貼られてゐました。植木枝盛のやうな「気違」が偉人とは…。
中江兆民は東洋のルソーと呼ばれてゐるさうですが、いくらなんでもルソーのやうな産んだ子供を孤児院に置いてくる露出狂のあたおかと兆民を一緒にするのは可哀想です。考へさせられます。
山内一豊つて、出身地、尾張だよね?
谷秦山先生や、谷干城がゐないところが残念。後藤象二郎や吉田東洋がゐないのもナア。私なら、植木枝盛を捨てて吉村寅太郎を入れるけど。
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はりまや橋から後免町駅行きに乗ります。
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「ごめん」と謝罪してゐるかのやうなヘッドマークを付けた車両が来ました。ここから三十二駅は長い…。
車内では、「南国土佐を後にして」を聴いてゐました。
十一時過ぎ、後免町駅に着きました。これでとさでん交通は完乗です。あとは、土佐くろしお鉄道を残すのみ。後免町駅から後免駅まで、コミュニティバス(NACOバス、200円)に乗ります。地元のおばあさんと二人で乗りました。
五、ごめん・なはり線とDMV
そして十一時四十三分、後免駅から土佐くろしお鉄道の阿佐線こと、ごめん・なはり線に乗ります。列車は転換式クロスシートで、進行方向右側に座りました。
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痛切な反省の意と心からのお詫びの気持ちは伝はりません。
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この路線は平成十四開業なので、かなり最近できた路線です(古くは、ほぼ同じ区間に土佐電気鉄道安芸線といふのがありました)。高架化にあり、車窓がよく見えます。なんとなくですが、鹿島臨海鉄道に似てゐるやうに感じました。
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「次はあたおか」といふから、なんだと思へば「あかおか」でした。ここから海が見えるやうになります。小さな漁港が見え、あかおか駅に着くと、車窓右手には太平洋が広がります。
次の香我美駅も海の目の前です。
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灯台が見えてくると、バタやん(田端義夫)の「ふるさとの燈台」が思ひ出されます。
夜須駅前には、道の駅やすがあり行つてみたいと思ふのですが、けふは乗り潰し優先です。
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夜須駅を出てしばらくトンネルに入り、抜けると砂浜が広がります。これが見事な景色です。
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次の西分駅は松林を隔てた向かう側にあります。
土佐の海の 清きなぎさに 寄する波 いやしくしくに 思ほゆるかも 可奈子
右手に太平洋を見ながら、飲むコーヒーはたとへ缶コーヒーでも美味しく感じます。
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球場前駅は、猛虎魂あふれる駅です。阪神タイガースがキャンプに訪れます。おーん。
しばし太平洋を離れ、安芸市内を走り、安芸駅到着。しばらく停車しました。発車して間もなく、また太平洋が見えてきました。
そして、十二時五十九分。終点の奈半利駅に着きました。
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これで、四国の鉄道は全線完乗です。と、言ひたいところですが、困つたことに、阿佐海岸鉄道を乗つたかどうか、記憶が定かではありません。そこで、乗ることにしました。室戸方面に行くバスに乗り、甲浦駅を目指します。
まづは奈半利駅前から、室戸世界ジオパークセンター行き(高知東部交通)のバスに乗ります。乗客は私を含めて三名でした。竹ケ谷バス停の前あたりから太平洋が見えてきましたが、雨と雨によるしづくが窓をつたふため、あまりよく見えないのが残念です。
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小さな漁港で、雨の中、釣りをする人がゐました。磯もとどろに波が寄り、割れて砕けて裂けて散つて行きます。
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室戸世界ジオパークセンターで乗り換へ、甲浦方面へ向かひます。
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途中、室戸岬を一瞬だけ見ることができました。
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私の命が幸くあるならば、また来る機会もあるでせう。
我が命し 真幸くあれば 行きて見む 室戸の崎に 寄する白波 可奈子
コミュニティバスのやうな小さなバスに乗り、ここから甲浦方面に向かひます。
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途中、むろと廃校水族館といふ施設がありました。行つてみたいものです。
また、立派な夫婦岩もありました。この土佐浜街道を行くお遍路さんを見ました。私が乗つた時点で四人の乗客がありましたが、気が付いたら私一人になつてゐました。
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海の駅東洋町に着きました。
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十分ほど待ち時間があつたので、食糧を調達しました。海鮮丼とお寿司(1,200円)です。後ほどいただきます。
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雨の中、海を見てゐたら、来ました来ました。DMVです。
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DMVは、バスにも鉄道にもなるといふもので、世界初ださうです。詳しくは、以下のサイトをどうぞ。
指定の席に座り、定刻の十五時に発車しました。私を含めて五名の乗車がありました。しばらく走ると、甲浦駅が見えてきます。
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来たことがあるやうなないやうな…。
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専用道路を上り、線路の前でモードチェンジします。
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阿波踊りの曲とともに、車輪が変はり、線路の上を走るやうになります。
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いざ走り出すと、それなりに揺れます。景色を見てゐて、見覚えがないので、やはり来たことがないのでせうか。マア、仮に来たことがあつたにせよ、なかつたにせよ、結果的にかうしてDMVに乗れたのだからヨシとしませう。
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宍喰駅で数名の乗車がありました。
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次の海部駅は、明らかに見覚えがありました。
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そして、阿波海南駅の直前で、再びバスモードになりました。そして、阿波海南駅で下車。無人駅です。
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牟岐線の線路は阿波海南駅で切れてゐるんですね。阿佐海岸鉄道とは離れ離れ、なんだか寂しく感じられました。
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先ほど買つたお寿司と海鮮丼を、阿波海南駅の待合室でいただきました。
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ご飯にお酢が効き過ぎてゐるきらひもありますが、ネタがとても美味しい。ス⚪︎ローやく⚪︎寿司よりも美味しいです。
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特に、石鯛(白身の魚)がコリコリして美味しいです。
そして、iPhone SEの充電が切れました…。
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十六時八分。阿波海南駅から、二度目の牟岐線に乗りました。進行方向右手に座り、ウトウトしながらも海の景色を堪能しました。
途中、小松島は大学時代の親友が住んでゐます。元気にしてゐるでせうか。
十八時十一分、徳島駅に来ました。徳島ラーメンと行きたいところですが、高速バスに乗り神戸に向かひます。無事に神姫バスの十八時半発のバスに乗れました(3,400円)。乗客は私含めてわづか二名。徳島大学前で二名の若い女性が乗つてきましたが、それでも四名です。
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バスの魅力は、街中に入つて行き、都市の生活の息吹を感じられる点にあるとは以前書いたことですが、徳島市内も眺めてみると楽しいものです。
四国三郎として知られる吉野川を渡りました。河口の川幅は、見事な大きさです。
松茂・徳島とくとくバス停で若者二人が乗りました。これで、全員で六名になります。
高速鳴門バス停に向かふころには、天気も落ち着いてきました。高速鳴門で、さらに二名乗客がありました。それでも十名です。しかも、そのほとんどが若い女性でした。
売り上げ、苦しいですね。
バスは、淡路を経由して神戸に向かつてゐます。淡路にいざ入らんとするその瞬間、橋の上から見事な景色が見えました。
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高速バスの車窓から見た淡路は、緑に囲まれたそれはそれはうるはしきところでした。
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まさに、淡路はくにのまほろばです。夕日の美しさに、涙が出さうになりました。きつと、天地の神々様からの贈り物でせう。
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今回はここまでにいたしませう。次回は、神戸編をお届けいたします。どうかお楽しみに。(続)
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宣伝となり恐縮ですが、日本学協会発行の『日本』に「万葉集古義に学ぶ(十一)」を。
望楠書房発行の『維新と興亜』に「くにおもふうたびと 橘曙覧 上」をそれぞれ書かせていただきました。
前者は、防人歌を土佐の万葉学者である鹿持雅澄が如何に解釈したか。後者は、橘曙覧先生のお歌についてです。お手に取つてお読みいただけたら幸甚です。
また、今夏は久しぶりに千早鍛錬会が開催されます。参加をご検討いただけたら幸甚です。
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