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玉川可奈子の秋休み 越前・丹後編
いつもお読みいただき、ありがたうございます。玉川可奈子です。
最近、上野にある寿湯に行くことがあります。少し狭いのですが、良い銭湯です。鶯谷の萩の湯の系列です。
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また、休みがあればすぐにどこかに出掛けてゐます。
人生は運と勢ひと諸富祥彦明治大学教授の本にありましたが、まさに「勢ひ」で乗り残した私鉄及び第三セクターの路線に乗りに行つてゐます。
恐らく、年内には、皇国内の鉄道の全線完乗を達成するでせう。
今回もその中の一つです。相変はらず盛りだくさんです。長いです。一万文字に近いです。
どうか、最後までお付き合ひください。
金沢へ
仕事後、六時になつたと同時に更衣室に走り、二分で着替へ、最寄りの駅へ走りました。職場から駅までの距離をわづか二分で駆け抜け、列車に乗り、新宿駅へと急ぎました。
新宿駅で、湘南新宿ラインに乗つたところ…あまりの混雑に驚きました。グリーン車に乗り、なんとか座ることができ、大宮駅まで行きました。
私の隣の席には、ワークマンのジョイントバックパックを机に置いて、黙々と読書をするおぢさんがゐます。
けふは北陸新幹線かがやき517号に乗り、金沢駅まで行きます。
最近、職場の人から、
「玉川さん、次はどこに行くの?」
などと聞かれることも増えました。
大宮駅に着きました。駅弁を買ひ、18番線ホームで待つてゐると、W7系が来ました。JR西日本の車両です。
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十九時四十九分、かがやき517号は大宮駅を発車しました。次、北陸新幹線に乗るときは、来年の三月。敦賀駅まで開業したときになるでせうか。
旅立ちの前日、阪神タイガースが甲子園で讀賣を倒し優勝しました。とても気分が良いです。おーん。
金沢駅までおよそ二時間。読書をしたり、駅弁を食べたりして過ごしてゐました。
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車窓は真つ暗で何も見えません。しかも高崎駅を出てからは長いトンネルばかりです。知らない間に安中榛名駅を通過してゐました。
車内を見回してみると、荷物棚にはカート付きのキャリーケースがたくさん置いてあります。前にも書きましたが、アレ、ほんたうに邪魔ですよね。ミニマリストの玉川には、夜逃げをする人のやうに見えます。
私は三列席の窓側に座つてゐますが、隣には中年のカップルがゐます。二人は特に会話をすることもなく、それぞれ携帯電話の画面に夢中になつてゐます。
二十一時五十一分。金沢駅に着きました。すごく混んでゐます。カップルに学生、外国人…。
さういへば世間は三連休でした。
けふは、駅前のアパホテルに泊まります。
このホテル。懸賞論文をやつてゐますが、出来レース感がして応募する気にもなりません。その世界で有名な人ばかり受賞してゐて、しかも内容も面白くありません(何故かリンクを貼れません)。
https://ajrf.jp/ronbun/
部屋には、『理論近現代史学 本当の日本の歴史』なる名前負けも甚しい書籍が。チラリと中を見ましたが、読む価値はありません。それにもつと良い近現代史の本はいくらでもあります。
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それはともかく、アパホテル金沢駅前はなんとサウナと天然温泉が付いてゐます。早速、お風呂に行きました。
露天風呂に癒されました。ぬくぬくです。そして、寝ました。
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越前鉄道と福井鉄道
翌朝…。
朝風呂を楽しみ、ホテルを出た私は、ただちに駅に向かひました。旅のはじまりは、しらさぎ4号です。ホームに行くと、早くもラーメン二郎級の行列ができてゐました。
ちやうど、あいの風とやま鉄道の車両が停車してゐました。
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大伴家持が越中の国司だつたとき、土地の言葉である「あゆの風」を『万葉集』に残してくれました。そしてそれを用ゐた素敵な社名です。
東の風 いたく吹くらし 奈呉の海人の 釣りする小舟 漕ぎ隠る見ゆ (『万葉集』巻十七・四〇一七)
家持の歌です。
その列車が回送として去り行き、特急しらさぎ4号が入線して来ました。
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運良く、進行方向左側、窓側の席を確保しました。車内放送で、
「本日、指定席は満席です」
と流れてゐます。
ところで、職場の人から、
「玉川さん、良いナアー明日は金沢なんて。美味しいものたくさん食べられる!」
などと言はれましたが、実態はこんなもので、名物といふ名物も、観光地といふ観光地も訪ねてゐません。金沢は、ただの中継地点でした。
しらさぎ4号と開業前の北陸新幹線
七時四十八分、しらさぎ4号は出発しました。
北陸本線のこの区間は、見どころといふ見どころは特にありません。私の目の前にはしばらくこれから開業する新幹線の橋脚が続きます。
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目を遠くに向ければ、あしひきの山々が霞んで見えます。
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今、走るこの路線も、新幹線開業後は第三セクターに形を変へます。いふなれば、JRに見捨てられます。鉄道国有法以前のわが国に戻りつつあるのかどうかは何ともいへませんが、並行在来線の切り離しはなんだか胸が痛みます。
なほ、国民からも見離されたら、廃線になります。三江線のやうに…。
小松駅では、「ぽーぽぽぽっぽぽぽぽ ぽっぽーぽぽー」の発車メロディを聞けました。
見どころがないといつても、田舎の景色を眺めてゐるのは楽しいものです。
小さな村の鎮守の神様に秋の実りを捧げる村祭りの準備をしてゐるのを見たとき、この景色を絶やしてはならないと心から思ひました。
福井駅に着きました。デッキには人だかり、ホームにも自由席狙ひの人がたくさんゐました。
福井といへば、尊敬する橘曙覧先生をはじめ、橋本景岳先生など国史上きはめて重要なる人物の生まれた地であり、その関係するところも残つてゐますが、かつて訪れてゐますので、先を急ぎます。
なほ橘曙覧先生は、「維新と興亜」に書きました私の論稿「くにおもふうたびと 橘曙覧」を、また橋本景岳先生は、平泉澄先生の『先哲を仰ぐ』(錦正社)をお読みください。
駅が大きくなりました。
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また、三月の開業を待つかのやうに、新幹線改札の準備が進んでゐました。
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「海ゴミのない自然豊かな福井の未来の姿」、その感性にぬくぬくです。
えちぜん鉄道
平泉寺の先生の御宅へお伺ひする際に何度も乗つた、えちぜん鉄道の福井駅にやつてきました。
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いつもこちらに乗つてゐたので、けふは違和感があります。
すぐ目の前に、新幹線の駅ができるので、なんだか圧迫感があります。けふは、勝山駅ではなく、三国港駅に向かひます。
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けふは三国芦原線に乗ります。
いつも乗つてゐた勝山駅行きの列車を見送り、次にあらはれた三国港駅行きに乗りました。
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美人なアテンダントが車内をめぐつてゐます。黒い腕時計をしてゐたので、チープカシオを付けてるのかと思ひきや、ダイソーのデジタル時計でした。
なほ、美人といへば、玉川、黒木華さんのやうな女性に憧れてゐます。
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福井口駅で、セーラームーンのTシャツを着た奇天烈な格好をしたおばさんが乗つてきました。彼女は、先頭で前面展望を楽しんでゐます。
そして、ここから未乗区間に入ります。
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田原町駅は、福井鉄道とすぐに乗り換へができるやうになつてゐます。東京メトロの銀座線に同じ名の駅があります。あとで、福井鉄道に乗り換へます。
ここで奇天烈なおばさんは降りて行きました。
しばらく住宅地の中を走ります。日華化学前駅で、異臭を放つおぢさんが私の斜め前に座りました。慢性鼻炎の私の鼻を貫通するにほひです。
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次は新田塚駅、ここは大学の後輩と来たことがあります。
由来の新田義貞公は、吉野朝に仕へた忠臣です。上野国出身の公が何故、福井なのでせうか。それは、この地で討死されたからです。新田塚は、公の兜が江戸時代にこの地で発見されたことにより史跡となりました。
公の御霊は、藤島神社に祀られてゐます。
奇しくも、藤島神社は橘曙覧先生の旧居のあつた足羽山に鎮座してゐます。
曙覧先生は新田公のことを、
あはれなり 思ひの外に 都出でて 北へ落ち行く 雁のはてはて
と歌ひ、情を寄せてゐます。
なほ、公について詳しくは、平泉澄先生の『物語日本史 中』をどうぞ。
ところで、いはゆる南北朝時代について理解のない人が多い気がします。マア、売れつ子作家の本郷某のやうな史家もどきがいふやうなことが主流ですから仕方がないのでせう。
「太平洋戦争は侵略戦争」などといふ論外な話はあまりにも幼稚ですが、楠木正成公や新田義貞公、さらには名和長年や児島高徳たち忠臣を知らないのも問題でせう。
ついでに、建武中興を「建武の新政」と呼ぶのは、大東亜戦争を「アジア太平洋戦争」とか「十五年戦争」と呼ぶくらゐ見識のないことだと私は思ひます(蛇足ですが、明治維新を革命といふ「一流の」文化人がゐました。これも見識のないことですね)。
中角駅の手前で、九頭竜川を渡りました。
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景色が田園風景になり、田んぼの他にもそばの白い小さな花も見えました。
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福井県はそばどころ。大根おろしを乗せた越前そばはなかなか美味しいですが、けふは食べてゐる余裕はありません
鷲塚針原駅では、反対側ホームに福井鉄道に直通する急行列車が停まつてゐました。
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下兵庫こうふく駅は木造の素敵な駅舎で、駅の周囲は田んぼ、そして山といふ何ともいへないところでした。
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番田駅といふ面白い駅名の駅を経て、遠くにホテルのやうな建物が見えてくると間もなくあわら湯のまち駅に着きました。
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JRの芦原温泉駅は、詐欺に等しい駅名ですが、こちらの駅はまさに湯のまちに通じてゐます。
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子ぎれいな三国駅、そして三国港市場が見えてくると、終点の三国港駅に着きました。
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三国はかつて即位前の継体天皇がをられたところとして知られてゐます(継体天皇を継体大王と表記されてゐることを福井県でたびたび目にしますが、これもアホ過ぎます)。
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三国港駅は木造の素敵な駅舎。
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そしてすぐ近くには海。なんともいへない良いところです。
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これで、えちぜん鉄道を完乗しました。三国港駅は東尋坊の最寄りです。
東尋坊といへば、サスペンスの聖地であり、かつ自殺の名所として知られてゐます。前者はともかく、後者は福井県出身の大学の後輩が否定してゐました。何故なら、
「東尋坊から飛び込んでも死にません。地元の子供が飛び込んで遊んでゐますから」
とのことです。本当の自殺の名所は東尋坊から少し離れた海岸だとか。
福井鉄道
さて、再びえちぜん鉄道に乗り今度は田原町駅に向かひます。
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来た列車で折り返します。
田原町駅から福井電鉄に乗り、たけふ新駅を目指します。田原町駅周辺は、見た限り台東区のソレと違ひ仏壇屋さんはありませんでした。
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これからこの列車に乗ります。
さういへば、朝から職場の人からもらつたブラックサンダー至福のバター味以外、何も食べてゐません。
田原町駅では、目の前にゐた福井鉄道の列車に乗りました。車両は、昭和五十五年につくられたもので、四十年を超えてゐます。
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全線完乗のため福井駅を通る必要があり、福井駅を通過する急行に乗らず各駅停車に乗つてゐます。福井駅北口では何やら開発事業が行はれてゐました。
福井駅で進行方向が変はります。ふと、車内を見たら、吊り革にカニがゐました。
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そして福井城址大名町駅でみたび進行方向が変はりました。ここから武生方面に走り出します。
桜の名所、足羽川を渡りると進行方向左手に由利公正の像があり、右手にはわづかに足羽山が見えます。
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花堂駅は、JRの越前花堂駅と少し離れてゐます。
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ベル前駅といふ珍妙な駅は、駅前にベルといふショッピングモールがあり納得しました。
江端駅で行き違ひ列車と交換しました。
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あつちの車両にも乗りたいですね。
世俗の喧騒を離れ、仕事を忘れ車窓を眺めていました。
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浅水駅は、あそうずと読みます。ここで、えちぜん鉄道の車両が待つてゐました。
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泰澄の里駅は、近くに平泉寺白山神社を開いた泰澄が生まれたといふ泰澄寺があるのにちなむさうです。
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素敵な駅名ですね。
駅前はそばの花が咲いてゐました。
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鳥羽中駅、神明駅、さらに西山動物園の近くにある西山公園駅などを経て、西鯖江駅に着きました。鯖江といつたらメガネ、鯖江の国産メガネ、欲しいです。
日野川を渡り、家久駅に着きました。福井鉄道も残りわづかです。かつて西武生と呼ばれた北府駅(きたごと読みます)を経て、終点のたけふ新駅につきました。
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やつぱり低床型は格好良いですね。
当時の県庁に相当する国府があつた場所です。
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また、越前に流された中臣宅守を思ひ狭野茅上娘子が、
君が行く 道の長手を くり畳ね 焼きほろぼさむ 天の火もがも (巻十五・三七二四)
と歌つたことが『万葉集』の巻第十五にあります。
私も、大切な人を無事を思ひ、「天の火もがも」と歌へるやうな恋をしたいと願つて伊ますが、叶ひさうにありませんし、ちりひじの数にもあらぬ身、すでにあきらめてゐます。
小浜線
無事に福井鉄道を完乗し、一安心。
JRの武生駅まで歩き、ここで立ち食ひそばをいただきました(今庄そば)。私の好きなにしんそば(500円)です。年季を感じさせるおばあさんが作つてくれました。
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にしんそば。おそばの上ににしんの甘露煮が乗つてゐるだけといへばそれまでですが、この甘露煮とつゆが絶妙に合はさつて、とても美味しく感じるのです。ついでに、130円の手作りおにぎりも買ひました。後ほどいただきます。
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武生駅で看板を見てゐたら、来年のNHK大河ドラマは紫式部が主役だとか。
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玉川、今から断言しますが、絶対に低視聴率に終はるでせう。何故でせうか。毎度つまらないからです(さらにいへば、ジャニーズとか、露骨に有名どころの大根役者を使ふからです)。
マア、NHKはぶつ壊した方が良いでせう。
一応、公平に評価すると、NHKでまともなのは「ダーウィンが来た!」だけです。泣けます。
なほ、大相撲中継は虫もとひ舞の海秀平とかいふ風見鶏を解説から馘にしてくれればヨシ!
武生駅から敦賀駅まで普通列車で移動します。
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車内は、部活帰りの中学生が五月蝿いです。中学生から高校生にかけての大切な時期を、部活ごときに費やすのはもつたいないですね。部活神話から早く脱しないといけないと思つてゐるのですが、これをいふと炎上するんですよね。みんな、洗脳されてゐますから。
秘境駅で知られる南今庄駅では、何故か数名の物好きな客が降りてゐるのを見ました。
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これだけでは伝はりませんが、駅前はほんたうに何もありません。
長いトンネルを抜けると、次は敦賀駅です。
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敦賀は、氣比神宮。
そして、後醍醐天皇の皇子である恒良親王をお祀りする金崎宮が鎮座します。
『万葉集』にも敦賀は歌に詠まれてゐます。笠金村の三六六番歌がそれです。
ここから十五年ぶりくらゐでせうか。小浜線に乗ります。
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一番線にひつそりと停車してゐる車両に乗り込み、進行方向の右側に座りました。出発間近に、部活帰りの中学生がゾロゾロと乗つてきて、にはかに車内が五月蝿くなります。
定刻十三時十八分、列車は東舞鶴駅に向けて出発しました。終点まで、約二時間。しばらく田舎の景色の中を走ります。
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東美浜駅を過ぎたあたりで、青々とした若狭湾がチラチラと見えてきました。
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ところで、先ほど武生駅で買つたおにぎりを食べてみたら…
「うわー酸つぱい!!」
梅干しが入つてゐました。
私、実は酢とか酸つぱいものが大の苦手なのです。発想を転換して、熱中症予防と、疲れを軽減させるクエン酸だと理解し、美味しくいただきました。
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美浜駅からは、雲一つないひさかたの空の下、天地のそきへのきはみともいふべき若狭湾の水平線がよく見えました。
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気山駅から美浜駅までの間は、この路線の白眉、三方五湖の景色が楽しめます。
最初に見えるのは、池のやうな久々子湖。
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潟湖で、汽水です。気山駅を出て、一瞬、菅湖が見え、三方駅の前に三方湖が見えます。
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それぞれ、遠くから少しだけ見えるだけですが、素敵な景色です。
三方駅から再び海から離れます。そして、少し眠くなりました。程よい日差しと列車の揺れ、日頃の疲れと昨夜の睡眠時間の短さからウトウトしてゐると、列車は間もなく小浜駅でした。小浜駅では五月蝿い中学生が一斉に降りて行きました。
小浜駅を出て、勢浜駅までの間、再び海が見えるやうになります。小浜湾です。
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加斗駅から若狭本郷駅の間も海の景色が素敵です。
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遠くには、青葉山の姿も見えます。若狭本郷駅に着く直前、青戸大橋を見ることができました。
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さらに、若狭和田駅から次の若狭高浜駅までの間、車から手を振る子がゐたので、振り返してあげたら嬉しさうな顔をしてゐました。車窓からは見えませんが、道路の向かふは海です。
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三松駅では、青葉山が近くに迫るやうに立つてゐる姿がよく見えます。
終点の東舞鶴駅に定刻に着きました。すぐに、綾部駅行きの列車に乗り換へます。これを西舞鶴駅まで乗り、西舞鶴駅から京都丹後鉄道の完乗を目指します。
京都丹後鉄道
田辺城跡を横に見て、西舞鶴駅に到着。ただちに、京都丹後鉄道のホームへと向かひます。
窓口で2,500円のワンデーパスを買ひました。
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さういへば京都丹後鉄道はWILLERが経営してゐます。
豊岡駅行きの列車に乗ります。
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十五時三十七分、発車。車庫にキハ85系が停つてゐました。
座席のカバーが丹後ちりめんなのが衝撃でした。
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カバーに注目。
次の四所駅であかまつとすれ違ひました。
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人が写り込んで心霊写真みたいです😨
そして、老人の団体が乗り込んできました。私の隣にも元気なおばさんが座りました。話してみると、ツアーで関東から来たやうで、宮津駅で降り舟屋を見てから城崎温泉に一泊するさうです。明日は天橋立に行くとか。
私も山手線に轢かれたら、城崎、否、効能ゆたかな玉川温泉に湯治するでせう。
由良川橋梁
東雲駅を過ぎてから、由良川沿ひを走るやうになります。丹後神崎を出てから、間もなく由良川橋梁をわたります。
ここでの風景は、宣伝等でよく使はれます。
まるでいさなとる海の上を行くがごとき思ひがします。車窓からですが、ご堪能ください。
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この路線の白眉でせう。
由良の門を 渡る舟人 梶をたえ 行方も知らぬ 恋の道かな
『小倉百人一首』の曽禰好忠の歌が思い出されます。私はつねに、「行方も知らぬ恋の道」に迷つてきたものです。
由良川に いかかる橋を 渡る日は 風な吹きそね 道にさやらむ 可奈子
丹後由良駅は森林太郎の小説『山椒太夫』にちなむ土地と看板にありました。
丹後由良駅から栗田駅の間は、木々と若狭湾が交互に車窓に現れます。
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栗田駅でツアー客が降りて行くと、車内はもとの静けさを取り戻しました。
天橋立
宮津駅に着くあたりでは、夕日に照らされた宮津湾がとても美しく、わづかな時間でしたが心を奪はれました。
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宮津駅の次は、天橋立駅です。車窓から一瞬だけ松原が見えました。
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一応、日本三景の全ては見た、ことになりませうか。
天橋立といへば、小式部内侍の、
大江山 生野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
の歌を思ひ出します。「小倉百人一首」にも収められよく知られてゐませう。三つの地名が詠まれ、ふみに「文」と「踏み」が掛けられてゐます。
私には、このレベルのとても歌は作れません。そして、まさに「まだ踏みもみず 天の橋立」のままです。
天橋立駅で多くの乗り降りがあり、車内の座席は七割方埋まりました。
小さな湖のやうな阿蘇湾の景色を見つつ、豊岡方面へ列車は走ります。
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右側の松林、すなはち天橋立が見えるでせうか。
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ひさかたの 天橋立 踏みもみず 阿蘇の浦辺に 吹ける秋風 可奈子
夕暮れの丹後路
岩滝口駅からしばらく海を離れ、夕陽の丹後路をひた走ります。
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景色を見る限り、京都といふ感じはなく、まるで山陰の一地方にゐる感じがします。
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夕陽が浦木津温泉駅を出てしばらく行くと、一瞬だけ夕日に照らされた日本海が見えました。ちやうど、日が西に沈みはじめ、日の光がけふの終はりに最高の輝きを放ち出してゐます。
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小天橋駅に着きました。民家の向かふには、久美浜湾がありますが駅からは少ししか見えません。かぶと山駅を経て、次の久美浜駅に着く直前、久美浜湾が顔を出しました。写真に収められませんでしたが、見事な景色でした。久美浜駅で、特急はしだて8号とすれ違ひました。
そしてコウノトリの郷(旧、但馬三江)駅まで九キロ近い距離を経て、少しずつ薄暗くなる中、豊岡駅に着きました。
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折り返して天橋立駅に向かひます。
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来た時に見た景色とは違つた趣きがあると感じました。たとへば、小天橋駅あたりでは、来るときにあまり見えなかつた久美浜湾がそれなりによく見えました。
さて、再び天橋立駅に着きました。ここから、特急はしだて10号に乗り、福知山駅を目指します。車両は287系です。
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無事にはしだて10号に乗りました。今回、使用してゐる京都丹後鉄道ワンデーパスは、特急に乗ることができ、指定席の空いてゐるところに座つてね、もし人が来たら代はつてね、といふものです。とりあへず、適当な席に座りました。
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列車は、進行方向に背を向け、福知山駅を目指して出発しました。車内はガラガラです。私の乗つてゐる車両には、私を含めて二人しかゐません。
さすがに外は真つ暗で景色はよく見えません。宮津駅で四分間停車し、進行方向を改めて出発しました。はしだて10号は順調に走り抜け、福知山駅に定刻に到着しました。これで、京都丹後鉄道を無事に完乗できました。
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さて、私はここから綾部駅まで行き、駅前のビジネスホテルに泊まります。朝からひたすら電車に乗つてゐたのでさすがに疲れました。
次は、京都編ですが、ちよつと癖のある京都編です。どうかお楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがたうございました。(続)
宣伝で恐縮ですが、日本花卉文化株式会社様のマガジンに、以下の記事を書かせていただきました。併せてお読みいただけたら、幸甚です。
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