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あなたは何が好きですか?

鳩の羽根が放射状に地面に散らばっている。ビニールハウスの中のシクラメンはまだ葉も小さい。もうすぐ6月。今年は遅いのか、田んぼも水を張る準備を始めている。光が強すぎてカメラが持てない。


頭の中を仕事中心、恋愛中心、家族中心に動かしていたら、なんだか限界が来た。
「帰りが遅い」「会えるの?会えないの?」「辞めるらしいよ」
自分がどこにいるのか分からなくなる。
ずっと散歩をしていたい。道端のカモミールの香り、草に当たる光、そんな中にだけ自分が見える気がする。小さい頃そういう風に過ごしてきてしまった。友達と遊ぶより1人で本を読んだり、庭にいる鳥の観察をしているほうが好きだった。元来まったく社交的な性質ではない。

なのに、大人になって人と接することばかりしている。
人に答えを求めることは見返りがない。というか、努力でどうかなるものがない。
時間、タイミング、その時の相手の感情、そんな計算して上手くいくものもない。

電車の中で鳥の図鑑をお父さんと熱心に見ている少年がいた。ページにはたくさんの付箋が貼られていて、表表紙も擦れている。嬉しそうに鳥の話をする、その子の顔をお父さんは嬉しそうに見つめている。没頭できる何かがある人はそれだけで一生分の宝物をもう貰っているようなものだと思う。
小さい頃、好きなものがたくさんあった。
朝になるまで星を見つけて、世界にいる9,000種類の鳥の名前を覚えようとした。
紅茶にハマったし、学校サボって渋谷の小さなミニシアターに行くほど映画も好きだった。ファンレターを手渡しして、出待ちをするほど憧れた野球選手もいた。

今それほど夢中になれることがありますか?

20歳で写真に出会った。
MINOLTAのα7000。
多趣味な祖父から譲り受けた。今まで見えていた世界が色を変えて見えた。夢中になった。ずっと首からカメラを下げていた。自分の瞬きでシャッターが切れればいいなどと思っていた。写真屋のおばちゃんが呆れるくらい撮っては現像に行った。何でも撮りたかった。


答えに詰まったら写真で答えを出す。
ちょっとまた自分なりのやり方で試行錯誤してみるか。


ROLLEIFLEX 3.5F Xenotar Kodak T-max400
“日々彼是”より



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