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安定をのぞんでいただけだった私が、熱い想いのフリーランスになった理由

元々、何かになりたいと思っていた。どんなことをするか?よりも「何かになりたい」という、いわば自分にタグづけをしたい感覚の方が強かった気がする。

理学療法士っていう仕事は全く知らなかったけど、医療系専門職というのは、高校生だった私にはタグとしてもわかりやすくて、すぐにこれだ!とベクトルが向いた。今考えたら、すごい単純…


ものすごく理学療法士に憧れてたわけではなかったから、学生時代に実習の白衣を着てすごくテンションが上がってる友達を見て、「そんな感情になれるの羨ましいなぁ」と思うほどだった。
理学療法士という仕事への情熱を持ちたいとか、憧れの場所にいけるというようなワクワクは全くなく、どちらかというと「病院に就職できることでの安定感」「病院で働く人としてのステータス」的なものの方がモチベーションになっていた気がする。

理学療法士になる人の職場選びとしては、その先のキャリアを考えて、いろんな経験ができる規模の大きい病院を選んだり、スポーツがやりたい人は専門的なクリニックを選んだりと、割と先を見据えて最初の就職先を選ぶ人が多い。
私は理学療法士としての就職というより、日々の生活を満喫できる社会人としてのスタンスで、「その手段としての理学療法士」という認識だったので、就職先の選び方も、ライフワークバランスが優先。

  1. 残業が多くないか

  2. 干渉しすぎない人間関係か

  3. 休みは不定休ではないか

そんな辺りで選び、給料はそこまで高くはないものの、定時が早くて残業もなく、少人数で動きやすそうな所に就職ができた。


私生活を優先させて選んだので、結婚しても働きやすく、給与も安定していたため、昭和のサラリーマンのごとくこのままずっとここで働き続けるんだろうな〜と思っていた。が、転機が訪れる。


長男の出産。
妊娠して産休を取り育休を取り、1年ほどで復職した。子供がいても働きやすく、特にそこに不満もなく、あえていうなら職場が家から遠いことくらい。

フルタイムで復職したため、子どもが小さいと家庭で子どもと接する時間がほんの数時間しかない生活。でも、これも特に問題だったわけではなく、続けていたらいつかは慣れるだろうと思っていた。

転機となったのは…私自身の問題だった。
出産と同時に出てきた腰痛、尿もれ、いつまで経っても消えない骨盤周りのグラグラ感。体のトラブルは産後だからあっても当たり前なんだろうとは、当時は何の疑いもなく思っていた。でも、なぜ腰痛があるのか、なぜ尿もれになるのか、なぜ痛みがある人とない人がいるのか、なぜいつまでも骨盤周りがグラグラなのか…

このままじゃまずいのか…それともいつかは自然に治るものなのか…整体に行った方がいいのか…
と、ここまで考えた時に、ふと思った。

なぜ、私は理学療法士なのに、産後の体のことが何もわからないんだろう?


今思えば、この時のこの疑問で、はじめて「理学療法士の本質」に気づかされた気がする。今までは「社会人としての一つの手段」としか認識していなかった理学療法士という資格だったが、ここではじめて「人の体を変えることができる知識と技術を持っている人」という本来の資格としての力に気づいた瞬間。

理学療法士の知識と技術で、この産後の体をなんとかすることができるんじゃないだろうか?

むしろ、みんなどうしてるんだろう?揉んでもらっても治らない痛みやトラブルだってたくさんあるはずなのに、みんな我慢して生きているのかな…
ある程度体の知識がある私でも、こんなにわからなくてもがいて大変な思いしてるんだから、他にもたくさん辛い思いをしてる女性がいるんじゃないかな…

でも、日本の産婦人科で理学療法士がリハビリを提供しているという話は当時は聞いたことがなかった。診療点数になっていないものは医療という枠組みではないから、産婦人科に理学療法士がいないのは当たり前といえば当たり前だった。
リハビリテーション科があって、リハビリ室があって、理学療法士や作業療法士が常勤でいて、保険点数として項目があって、それで初めて医療になる。

その状況にないんだから、産婦人科でのリハビリはそりゃないはずか…とすぐに納得はしたけど、なぜ保険点数になっていないのか?なぜ必要とされてないのか?なぜ学校でも習わなかったのか…
今の制度においての意味合いは理解できても、必要性を自分で感じてしまった以上、なぜないのか?という単純な問いには答えが出せずにいた。

ないものはない。いきなり産婦人科に「理学療法士として雇ってください」とも言えない。そもそも、学校でも産婦人科学を学んでないから知識がない。それでは信用もされない。でも!でも!!!理学療法士の体を評価するスキルと治療の技術は絶対この分野にも必要なはず!!

そこから、すっかり忘れてしまっていた解剖学をもう一度勉強しつつ、新しい分野に飛び込んでとにかく勉強を始めた。勉強をはじめたら、少しずつ周りのママたちの体をみるようにもなった。みるならただというわけにもいかない…

ライフワークバランスを重視して選んだ職場だったが、当時は副業ができず、すでに事業として少しずつはじめていた私は仕事を辞めざるを得なかった。

ここから私はフリーランスの道を歩き出す。


安定をのぞんでいただけだった私が、いつのまにか「体をみるプロとしての道」を選んでいた。

#この仕事を選んだわけ

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