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アフロ田中は定型発達のイフを追体験させてくれるユートピア漫画

アフロ田中シリーズが好きです。この作品は等身大の、定型発達の人物たちのユートピア漫画だと思っている。
友達と何年も上手くやれる、職場の仲間たちとワイワイ上手くやれる、家族や夫婦ときちんとコミュニケーションが取れてて上手くやれている。
中退、上京、さすらいシリーズではモテなさとかどうしようもなさとか性欲とそれにまつわる失敗とかがたくさん描かれるけど、そこの凡人具合が逆に身近に感じさせてくれて、もし凡人の自分が定型発達で二十代の男だったらこんな感じなんだろうな。。。という幸せなイフの夢を見させてくれる。
しあわせ〜結婚シリーズあたりは、定型発達の中でも難易度が上がってきてて、なんだかんだで結婚して奥さんは専業主婦で子供を育てているという、少し前の「普通」を今この時代に実践してる、今の日本でこれはすごいことだと思うよ。
結婚できるほどの信頼関係と対人関係を築ける、相手方家族ともコミュニケーションができる。子育てに至っては、夫婦間の衝突が時おり描かれるけど、何とか落としどころを見つけて夫婦で前に進めている。(マンガだけどこれってできない関係性の夫婦が大半なのではないか。どっちの忍耐によって成り立つ関係とか。)

ということで、アフロ田中は全ての濃度の発達障害者に加えて、(診断が出てなくても)他者のコミュニケーションや家族との関係にコンプレックスを抱える全ての人にとって、もし自分が定型発達だったら。。。の幸せなイフの夢をリアリティを持って追体験させてくれる、ユートピア漫画だと思うのです。(2度目。)

そんなイフのユートピアを眺めながら、作中の人たちと同じタイミングでビール飲んだりするのが楽しい。自分もそこの仲間に入れてるようで。

ところで、アフロ田中の作中人物たちのような普通の人、いわゆる定型発達の人々と、それ以外の発達障害とかも含めたコミュニケーション能力不足の人々と、世の中はどっちのほうが多いと思いますか。

※ちなみに私個人で言うと発達障害の診断は出ていない(特に診察に行ったこともないですが)のだが、診断の出ていないコミュニケーションコンプレックス保持者でもある。雑談ができない、雑談が苦痛、集団内で発言して空気を悪くする、多人数での会話を止めてしまうなど。もう小学校低学年の時から嫌というほど味わってきてるし自覚してる。
こんなキャラがもしアフロ田中の世界に行ったら、たぶん作中では「うーん…変わった奴」と言われて腫れ物扱いになるに違いない。
なので私は自分のことを定型発達「外」と自認してる。

世の中的には発達障害が文字どおり障害とされ、病院で治療を受けるものとされてるので、実際はアフロ田中的な定型発達のほうが多数派なんでしょうね。

でもたまに妄想する。本当は世の中は定型発達「外」の人間の方が多いんじゃないか。。。ということを。

この世の中の社会の仕組みは、本当は限られたごくごく少数派の定型発達の人(ニュータイプ)たちが、自分たちだけが理解できる明文化されてないルールで強固にガチガチに縛り作り上げたんじゃないのか、と。
じつは多数派の定型発達「外」の人たちは、コミュニケーション円滑な人間たちの前では全く持って無力。この定型発達強者たちの作り上げたコミュニケーション社会において、必死で定型発達に擬態しないと生きていけない。
この難を抱える多数派が1つになれば社会の下剋上が起きるかもしれない。しかしコミュニケーションに難がある人間同士で、「1つにまとまる」ことなどできるはずが無い。出来てたら定型発達(ニュータイプ)の仲間ということなのだ、アフロ田中の住人になれるのだから。。。

と、時々そんな妄想をしている。

そこでもう一つ漫画で、もしかして定型発達「外」の下剋上展開になるのかな?!と期待して読んでる漫画が、まどめクレテック「生活保護特区を出よ」という漫画。
社会で能力不振と判断された者は、隔離された生活保護特区という離れ小島に強制移住させられ、そこで生活しなければならないという近未来?パラレル日本の話。
高校生の主人公が特区行きのレターを受け取ったところからスタート。この第一話の絶望感がすごい。

ただ、うーんどうも今のところ3巻まで出てて、自分の思ってたような定型発達「外」たちの下剋上という話にはなってない。主人公と特区住人が労働に取り組んだりや祭に向けた準備を行うなど、日常を何とか送りつつ心を通わす物語になっている。
ちなみに特区の人たちはみんなそれぞれ鬱とか問題を持ってるけど、多人数で暮らしていける最低限の社会性は持っている。やはりコミュニケーションに難があるという部分は登場人物が多いと描きにくいのかなあ。
今後は、主人公の亡祖父、かつて特区に居た学者、というので展開がありそう。(下剋上演出に入ってくれるかもしれない。)
もしかしたらすごい下剋上が起きるかもしれないので、これからも読もうと思う。


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