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宙に参る(そらにまいる)が面白くなってた!すごい

「宙に参る」の新刊が出てた。この漫画は最初に1巻読んで、まぁ…面白いけど、この主人公のキャラ、こういう感じのストーリーのまんま行くんだとしたらちょっと…合わないな…と思って続きを買ってなかったものです。

あらすじ


内容はSF。未来科学技術の設定や小ネタが盛り沢山。設定に妥協のない、ハヤカワSF文庫みたいなハードなSFです。夫を亡くした未亡人が自作の息子(ロボット。AI搭載)とともに遺骨を持って地球まで旅をする。けど、この未亡人がなんだかとにかくスーパー技術者でネットの海を漂う草薙素子もびっくりのハッキングやら何やらを駆使する凄い人なので、その技術を突き止める勢力に狙われたりする、というお話。SF的な描写や会話の中に、今と繋がった先なんだろうなっていう日常の習慣とかが出てくるのが魅力です。 

1巻で挫折

魅力ではあるけど、1巻を読んだとき、こういうハード設定モノにありがちな、キャラ置いてけぼり問題がどうにも引っかかって読み進められなかった。

SFファンとかには大絶賛されてたんだけど。でもSFファンとか、あと推理小説ファンとかって、SF世界をどれだけ破綻なく作り込んでるか・どんなに度肝を抜くトリックが仕掛けられてるか、だけを評価して、キャラクターはあんまり重要視しない人多くないですか?

その結果、例えばお爺さんなら「〜〜は〜〜なんじゃ。」という喋り方させとけば良いだろうみたいなステレオタイプお爺さんが出たりする。作者の膨大な知識を語らせるうんちく系女子は、男勝りキャラ、頼りがいのある男先輩口調キャラのことが多い。(そんなに男勝りにさせたいならもう男キャラでいいじゃん?と思う)

そういう、都合よく当てはめられたキャラクターを見るとげんなりして、作品に入り込めないんだよ。。。

「宙に参る」の未亡人キャラも、やっぱりよくあるハードボイルド男勝り口調。

ハードボイルド口調&仕草
「てぇハラだろう」が男勝り口調

キャラのハードボイルド具合が上滑りすぎて気になってしまった。(←1巻のみ読んだときの感想。)ハード推理小説とかハードSFファンは気にならないのかもしれないけど、生きたキャラは非常に大事なのだ。私にとって。

新刊まで読むと、上滑りと思われたキャラ設定が自然に活きてくる

今月、新刊発売に合わせて既刊がセールになったから全巻買って読んでみた。読み進めると、主人公のキャラ付けに納得感が出てきて、なおかつすんごい面白くなってました。主人公未亡人のちょっとやり過ぎハードボイルドキャラ設定の方に、ストーリーが追いついて、合致してくるんです。

4巻表紙

最新巻はもう、この未亡人キャラの(待望の)説明に終始してるし、これまで小出しにしてた設定と破綻がないし、納得感も凄いし、そうかこれが…!こういうことか!こういう意味だったのか作者!すげぇ!!ってなりました。私のように1巻で挫折した人も頑張って4巻まで読んでほしい。

それから未亡人と絡みがあったりなかったりで展開される、SF時代の日常ストーリー、みたいな話もすごく味わい深い。SFの技術とかは全く詳しくないけど、SF自体は好き。。。という程度の私でも付いていける。AIにも寿命がある、とか、プログラミングを駆使して死後に新曲を発表するバンド、とか。作り込まれた未来の世界観の破綻をハラハラ心配せずに安心して楽しめます。

蛇足・おっさんの願望女キャラについて


ただまあ、ストーリーの面白さとは別に、最近、「男作者が自慢の知識を女子キャラに語らせる系のマンガ」についてよく考えることがあって。上でも書いたけど、うんちくを語らせる系女子はなんで男勝りキャラになりがちなのか。
なんか作者の理想の女、「おっさんを凌駕する知識・技術を持ち頭脳明晰で、かつ危険なシーンにも場馴れしてるハードボイルドな女」が理想ごと透けて見えるんだよな。

宙に参るで気になったことは、未亡人のキャラに加え、取り巻く人間関係に、亡夫以外に男が登場しないこと。バディ的立場の元上司も女性。自分も既婚なのに主人公にこっそり恋心を抱いていた元同僚も女性。敵勢力のうち銭形警部みたいな立ち位置のキャラも女性。(近い男性登場人物だと息子がいるけどAIだし、人間年齢だと小学生くらいっぽい。)

敵勢力のボスだったり男キャラは何人も出てくるけど、主人公と親しく絡むような関係ではない。思うに。。。「おっさんを凌駕する知識・技術を持ち頭脳明晰で、かつ危険なシーンにも場馴れしてるハードボイルドな女、でも恋愛関係は夫に一途でそれ以外浮いた話はない女」がこの世の中で至上、という価値観なのかもしれない。

だからたとえ未亡人が一方的に好かれてたという過去の話でも、男から好かれてたのはNG、レズ的展開ならOK。ただの上司部下の関係でも、二人で飲みに行くのに男とはNG、でもレズ的バディ展開なら安心セーフ。

この、女子しか出さない≒レズ的展開ならOKというのは、最近の女子擬人化マンガの特徴と言うか流行りなんですかね。女子しかでてこない「地元最高!」とか「ぱちん娘。」とか。うんちくマンガだと「瑠璃の宝石」とか。どれも全部面白くってオススメ。

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