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お嬢様はお仕置きが好きが思ってたよりなんかすごい

お嬢様はお仕置きが好きという少女漫画の皮を被った官能エロ漫画がある。
あらすじは、純粋無垢の無知な箱入り培養お嬢様がお隣のかっこいい幼馴染の家庭教師から様々な調教をされるというものです。密かに片思いしているお隣のかっこいい夏樹くんが、じつはお嬢様のことが昔から大好きで、自分好みのえろえろマゾヒストになるようにあの手この手でちょっとずつ官能体験を与えていくという官能調教物語。見た目は少女漫画風エロ漫画ではあるけど、作者が最初から意図してたのかどうかわからないが、キャラの設定が活かされ、ときどきギャグ漫画みたいになっている。

二人はわりと早いうちに両想いの恋人同士になるのだけど、そこからもラブラブ調教物語が続く。お嬢様の無知とか夏樹くんの無限の愛と変態欲とか、二人の少しズレた上流階級思考とかが大真面目に描かれるほどギャグ度が深まっていく。

物語上、二人が初めてセックスをすることが一つのクライマックスになる。この二人は5巻の終盤になるまでセックスしていない。それに近いことは色々するけども。(エロ漫画なので各話にそういう状況が挿し込まれる。)

そこまでの盛り上がり方はすごく良くて、ここで!ついに!!ようやく!!!というカタルシスもあって、とても楽しい読書体験だった。

でもその後、結婚という第二章に続くストーリーを描いた6巻で、もう買うのやめようかなって正直思ったの。

官能小説としてはセックスするまでがもう完璧過ぎて。あの無知の純粋無垢なお嬢様がこんなにえろえろにされてしまって、自ら求めるまでになるなんて…!と、夏樹くんと同じ感動を味わったのだけど、その後、シーンが転回しても同じことを繰り返すのか?お嬢様は相変わらず無知で純粋で、無垢がエロに置き換わっただけで、このままなのか…?それって、読み進めて面白いのかな…?と私は思ったの。

もともとお嬢様の世間に揉まれてない具合、社会慣れしてなさ具合はあんまり感情移入しにくい。夏樹くんに常に導かれ守られる、ステレオタイプなお姫様の役割として楽しめたけど、これこのまんま続くのかなあ。って。ただの消費されるエロ漫画じゃん。いやエロ漫画だけど。これまでは良いとして、この先も成長しないお嬢様を見るのは飽きるし退屈である。自立心とか。。。ないのかなこの子。。、まぁかわいいけどさ。

そう思ってて、でも惰性で7巻買いました。そうしたらそんな私の感想を見据えていたように、桃ちゃん(お嬢様)に自我が芽生えていた。アホみたいな恋するだけのお嬢様から、少しだけ考えるお嬢様になってたんです!

いや今までもお嬢様のモノローグはこれでもかって出てきてたんだけど、好きだとかどうしましょうとか夏樹くんのために〜しなくては、とか、あとエロいときのエロい心の声しかなかったんだけど、初めて自分を客観的に見て、自身を省みるモノローグが登場してきた。そこに感動した。

また夏樹くんの方はこれまで同様にストーリー回しの重要な役割を担っている。お嬢様を大事に思う気持ちを軸にあれやこれやと考えて起こす行動が一見突飛なものばかりなんだけど、大金持ちで容姿端麗・頭脳明晰な変態王子が大真面目に考えたらこうなる!ていう図式が、過去話で確立されてるから全然不自然じゃない。しかも愛が深まっていくように描かれていて、最新8巻はもう…ほんとに…作者天才なんじゃないのって思ってる。

そう、最新8巻がもうすんごくおもしろい。変態だけど騎士として完璧な夏樹くんの変態性が桃ちゃんに受け容れられるという、夏樹くんサイドの神展開。で、その裏でお金持ちとかお嬢様とか純愛とか調教とか、そういう物語だからで何となく納得していた二人のズレっぷりが、ギャグを越えて狂気を帯びてきている。SMシーンは最初から狂ってたといえばそうかもしれないけど。相変わらず桃ちゃんも夏樹くんも、大真面目にかわいくてカッコよくてえろえろで官能小説なんだけど、自我が芽生えたお嬢様は思ったより狂ってて、変態夏樹くんもやっぱりほんのり狂っていて、この先どんなことになるのか、作者はどこまで描けるのかと目が離せない。

と、ここまで書いてこの漫画はエロ漫画ではなくて少女漫画だったのかもしれない…!と思い至りました。
お嬢様の成長、という軸の話の展開は少女漫画だとすれば王道、というか納得のストーリー展開だからです。自分がこの漫画を勝手に「少女漫画の皮を被ったエロ漫画」と認識していたからこそ、1人でうぉー!お嬢様に自我が芽生えた!と盛り上がったわけだけど、これを最初から少女漫画だと思って読んでいた読者にとっては当たり前の、驚くことなど何も無い当たり前すぎる展開なのかもしれない。。。

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