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備忘録 こんな授業したよ① 推測のミニ・レッスン

 私が担当する1年生のあるクラスは「勉強が嫌い」な生徒が8割。

 国語が好きという生徒が3割という状況です。RWを楽しそうにやってはいるのですが、年に1度のアンケートによれば国語に対して否定的なイメージの生徒が7割。この結果には度肝を抜かれました。何で?いつもの反応と別人レベルで乖離がありました。

 RWを振り返ってみると・・・うん、一部の生徒を除いて、レターエッセイの提出は未達の子が多い。書いたものを私は決して否定はしない。けれど、改善に向かおうとする意識や読みの深まりはまだまだ・・・時間がかかるクラスなのだろう、待とう、と考えていました。

 が、ちょっと待てよ、と私の中でささやきが生まれました。

 もしかしたら、この子たちは「読めていない」んじゃなかろうか、という疑いがむくむくと大きくなったのです。私が前提としている程度の読みの力が無いんじゃないだろうか。いや、もっと早く気づけよ、大丈夫か私。そう思ったら、確認したくなりました。

 そこで、ちょうど残っていた教科書教材の「少年の日の思い出」を授業で取り扱うことにしました。

 通読後、内容についての〇✖クイズをしました。多くの生徒が7割正解レベル。つまり、正確に内容を把握する力がちょっと怪しい、危なっかしい。細部まで目が行っていない「わかったつもり」状態なのではないかと感じます。

 テキスト全体を読んだ上で「エーミールをひどい子だと考えるか」という問いに三角ロジックで答えてもらう問いには、複数の根拠や情報の関連付けで答えられた生徒が3割。あとの7割は、一場面を取り出して判断する程度の答え。

 また、この作品における「エーミール」の姿は「僕(客)」の目線で描かれた、僕の主観で語られた姿であることにも気づかなくてはいけません。ですが、子どもたちは、それに触れることが、ほとんどありませんでした。

 「エーミールの態度は大事なものを壊されたのだから当然だ」「普通の反応だと思う」「僕が謝ってるのだから許していい」と、自分の主観で語るだけの子が多数だったのです。作品全体を読んで、情報をつなげながら精査するには程遠い感じです。

 子どもが望んで読んだ作品・授業ではないということも確かなのですが、それにしても情報を活用して、関連付けて読むことができていなければ、自分好みの本であっても表面を舐めているだけだと推測できます。

 これがレターエッセイ未達や、内容の浅さの原因かもしれません。読み聞かせのような、問いを言語化したり、思いを語ったりという経験が圧倒的に足りない子どもの集ったクラスなのではないか、というのが私の見立てです。

 そこで「僕(客)はどんな人?」という課題を与え、根拠を複数抜き出してから、推測するというワークをやってみました。「僕(客)」の方に目線をチェンジです。

 書き出すのは面倒なのですが、友だちと一緒に探し物ゲーム感覚でやっていいよと言うと、それなりに頑張りました。(ICT端末があればコメント機能を使ってやれるのですが、まだGIGAが始まりません。)

 こうして「僕(客)」の情報を複数得てから、どんな人物だと言えるかを推測すると「自分の感情を抑えられない人」「他人と自分を比較していじけている人」などなど、抽象化した考えが出てきます。そこで「その証拠は?」と訊くと、自分たちが抜き出した根拠が具体的証拠となって自分の考えを支えていることに気づきます。

 その後、もう一度「エーミール」に目をやると、「エーミール」が「僕(客)」の主観によって書かれていることに気づく子が出てきます。(別のクラスでは、こうした授業をしなくても、そういう目線の子が出てきてインフルエンサー的に周囲に見方を伝えていったのです。)

 これまで、誘導、解説型の授業をしっかり受けてきた(ふりをしてきた)場合、情報を自分で見つけたり、言葉を言い換えたり、具体と抽象を行き来したり、証拠を揃えたりということを自分で行った経験が少ないのではないかと考えています。

 つまり、聞いて、ノートに取ったけれど、何もわかっていない。そのまま大きくなってしまった・・・のかもしれないです。

 「エーミール」と「僕(客)」を比較する情報が得られた生徒たちは、どうにも気持ちが噛み合わない2人の登場人物に、問題の解決方法、僕へのアドバイス、物語のその後、レターエッセイ、などのクリエイティブな活動に移ることができました。現在、成果物の作成中です。

 これを、自分の選択した本の読みに転移できるといいのですが。来週からまたRWで支援していきます。2月は蔵書点検で図書館が使えないので、教室にて、公共図書館から借りだした絵本で、絵本尽くしのRWを予定しています。子どもたちに不足している「読み聞かせ」「考え聞かせ」をたっぷり実施します!

 他に、何かいいアイディアがありましたら教えてください。


 最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。

 

 

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