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#33『フェアルーン』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「隠し通路のヒント」

本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発のプランナーやプログラマー、ゲーム制作を志す方、アイデアのインプットのための引き出しとしてご活用ください。

前回:#32『フェアルーン』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)「最初は敵にやられない」
前々回:#31『フェアルーン』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「行けない場所に何かが見えるワクワク」

今回勉強するのは「隠し通路」の仕掛けを作るときのポイントと注意点です。

ゲームの紹介

『フェアルーン』は、インディーゲームスタジオのスキップモア制作の謎解きRPGです。

現在は『フェアルーン』『フェアルーン2』その他がセットになった『フェアルーンコレクション』が、Switch/Steamで発売されています。
(それより更に前にブラウザゲーム版や3DSもありました)

ゲーム内容は『ゼルダの伝説』(初期の2Dのやつ)をライトにしたような作りで、RPG風の2Dフィールドを探索しながら敵を倒し、様々な謎や仕掛けを解いていきます。

アクション要素はあまり強くなく、敵とのバトルは体当たりをするとレベル差のみで勝敗が決まるシンプルなルールとなっており、謎解き部分がゲームのメインといっていいでしょう。

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『フェアルーン』(©Flyhigh Works/SKIPMORE/ESQUADRA)


さまざまに隠された「隠し通路」

『フェアルーン』は探検型のRPGですが、バトルよりも、どちらかというと謎解きの探索部分がメインのゲームとなっています。

アイテムを使った謎解きも多くありますが、マップに隠された「隠し通路」を通らないと先に進めない、といった謎も多く登場します。

例えば、
・木が立ち並んでいる森の中に、一本だけ通れる木が隠されている。
・行き止まりのような壁の中に、一箇所だけすり抜けられる壁がある。
といった具合です。

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通り抜けられる木(※幹の部分がないことに注目)
フェアルーン公式サイトより)

よくよく見るとパーツの一部分が欠けているなど通常の壁や障害物とは違ったところがあり、気にしていないと見逃してしまうが怪しんでよく目を凝らせば見つけることができる、といった具合です。

プレイヤーの観察眼注意深さを問われるゲームデザインと言えるでしょう。


かつては多かった(?)隠し通路

こうした隠し通路は、ファミコン時代の2DグラフィックのRPGにはよく見かけられました。

例えば、『ドラゴンクエスト2』の暗闇の先に隠れている重要人物や、『ファイナルファンタジー3』では、隠し通路の先にレアアイテムやお金が入った宝箱があるなど。

当時としては限られた2Dグラフィックの中で、プレイヤーをびっくりさせるための仕掛けだったのかもしれません。3Dのゲームが主流になってからは、あまり見かけなくなった要素かもしれませんね。


隠し通路を仕掛ける注意点

この「隠し通路」要素は、マップ移動中に謎解き的なスパイスを与えることができます。しかし使い方を間違えると逆効果になってしまう場合も。
どういった注意点があるのでしょうか?

1.ノーヒントの隠し通路を多用しない

外見上全くノーヒントの隠し通路を多用すると、プレイヤーは隠し通路が気になって、マップ移動中に全ての壁に体当たりをしながら進まなければならなくなってしまいます。

楽しさを狙ったはずの隠し通路が、ゲーム中の全ての壁をチェックしながら歩くとなると、単なる苦行になってしまいます。

本作のように、よく見れば視覚的に分かるようにしておくことは、プレイヤーにストレスを与えないためにも必要な点でしょう。
(※ただ『フェアルーン』では、一部のレア隠し要素はノーヒントで隠されていたりもしますが)

たとえば『ゼルダの伝説』シリーズでは、ヒビ割れの入った壁を爆弾で壊すことで通路が現れるギミックがあります。もし、このヒビ割れの目印が一切なかったらどうでしょう?

プレイヤーは怪しい壁も怪しくない壁もとりあえず全部爆弾を仕掛けてみないといけません。それは相当なストレスになってしまいそうです。


2.隠し通路がある雰囲気を出す

また隠し通路を配置する場合には、「いかにもこの辺に隠し通路がありそうだな……」という雰囲気を出すことも重要です。

例えば、
・森に向かって続いている道路が、その先で不自然に途切れている
・壁の前に、意味ありげに2体の石像が飾られている
・何かありそうな神殿に入ったのに、行き止まりの部屋しかない
のような具合です。

プレイヤーが「ん、おかしいな……何かありそうだぞ」と違和感を感じれば、あとはそこにある隠し通路を探して気づいてもらえるという狙いです。


3.隠し通路を出すなら序盤から終盤までまんべんなく

ゲームに「隠し通路」要素を入れるなら、全体を通してまんべんなく仕込みましょう。

開発序盤の最初の方のマップには意気込んで色々な隠し通路を入れたものの、開発終盤になるにつれ締め切りに追われたり、余裕がなくなったりして、ゲーム後半には隠し通路が全然登場しなくなるといった場合が考えられます。

プレイヤーの立場で考えると、ゲームの序盤に「あ、このゲームは隠し通路が沢山隠れてるゲームなんだ!」と学習をしたら、その後も必死に隠し通路を探すことになります。

ところが実は途中からは一切隠し通路が出てきませんとなると、必死になって探していた労力は一体何だったんだと裏切られたような気持ちになるでしょう。


これらのように「隠し通路」の配置一つを取っても、気配りがあるとないとでは、ゲームを気持ちよく遊んでもらうための快適さが変わってきますね。

考えてみよう

あなたの開発しているゲーム、構想しているゲームでは「隠し通路」の要素を盛り込むことができるでしょうか?

隠し通路の先にはどのような報酬を用意するのがよいでしょうか。(お金やレアアイテム、やりこみ要素など)

また、隠し通路の存在が、逆にプレイヤーに「探させるストレス」を与えてしまってはいないでしょうか。改めてチェックしてみましょう。


プログラマーの視点

本作のようなマップチップを用いた2DRPGでの隠し通路について。

プログラム的には、似た見た目のマップチップを2種類用意しておき、一方は通行できない壁、もう一方は通行可能な壁と設定しておくことで隠し通路は表現できます。
後ろをすり抜けたように見せるために、主人公キャラとの表示順序の調整もしておくと良いでしょう。

また、暗闇の中を歩けるというタイプの隠し通路もあります。これも通行可能な暗闇と、通行不可能な暗闇の2種類を用意しておけば対応できます。

ただ製作時に注意が必要なのは、隠し通路を置くはずじゃなかった箇所に「通れる暗闇」を置いてしまう、といったミスです。

そのため、開発途中のデバッグビルドのときだけ、
・隠し通路の見た目が分かるチップセットを使う
・プログラムで「通れる暗闇」の上には目印を描画する
など、開発時にミスを起こさないための工夫があるとよいでしょう。

皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。

本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。

この連載が、ゲーム開発のインプットに役立つと感じていただけたら、是非評価やシェアをよろしくお願いします。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。


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