#21『MOAI - My Own Ark Island』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「タップでカメラ操作」
本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。
ゲーム開発のプランナーやプログラマー、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。
前回:#20『MOAI - My Own Ark Island』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)「確定する前に結果プレビュー」
前々回:#19『MOAI - My Own Ark Island』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「スワイプ操作での位置確定」
ゲームの紹介
『MOAI - My Own Ark Island』は、小さな島に建物を配置していき、得点を重ねていくスマホ用のカジュアルパズルゲームです。
MOAI - My Own Ark Island / Fatline Games
本作は一人用のボードゲームのようなルールとなっていて、手持ちの建物を島に配置していくことで、配置場所に応じて得点を獲得していきます。
例えば「鍛冶屋」の配置得点は、
・「岩」の近くに置くとボーナス+2点。
・「倉庫」が近くにあると更に+5点。
・ただし「鍛冶屋」同士が近くにあると-5点。
のように、建物同士の相互関係で決まってきます。
プラスの相互作用を狙いながらも、マイナスの相互作用を出来るだけ起こさないように配置場所を選ぶのが、本ゲームの頭を使うポイントですね。
得点が一定になるごとに追加の建物を引くことができますが、得点が足りなくなるか、島の中にそれ以上建物を配置できなくなったらステージは終了。
規定ポイントに達していると次の島に進める、というゲームの流れになっています。
(※注:本作は、Steamで配信されている『ISLANDERS』というゲームとのルールの類似点が指摘されているようです。興味があればそちらのタイトルもチェックしてみてください)
タップでカメラ操作
本作は、島の中に建物を配置していくゲームです。
その際には島をぐるりと色々な方向から眺めて検討したり、崖の出来るだけギリギリの位置に配置するように画面をズームしたりと、カメラ(視点)を操作することがあります。
本作のカメラ操作方法は、
・左右スワイプ …… カメラの左右回転
・上下スワイプ …… ズームイン、アウト
・長押し後にスワイプ …… カメラの上下左右移動
となっており、視点切り替え用のボタンUIを配置することなく、タップのみでカメラ操作を完結させています。それにより、画面上のUIは非常にスッキリしたものとなっていますね。
難点があるとすれば「長押し後にスワイプ」という操作がちょっとやりづらく、長押ししたつもりが回転操作になってしまう誤操作がよく発生します。
ただ、カメラの上下左右移動自体があまり行わない操作なので許容範囲と言えるでしょう。
コントローラーやキーボードがある場合
SwitchやPS4、あるいはPC版の場合にはコントローラーやマウス・キーボードがあるため、カメラの操作は比較的実装しやすいです。
左右のアナログスティックの組み合わせが一般的でしょう。
更にLRボタンにズームなどを割り当てたり、LRを押しながらスティック操作の組み合わせのように、様々な操作を実現できます。
PC版の場合も、マウスの左クリックと右クリックの使い分けや、ホイールの組み合わせ、キーボードとの組み合わせなどが使えますね。
スマホ版の場合
一方、本作のようにスマホタイトルでは、タップに割り当てられる操作が少ないので、カメラ操作には工夫と厳選が求められます。
・一本指でのタップ、スワイプ
・二本指以上のタップ、スワイプ
・二本指でのピンチイン・アウト
・ダブルタップ(からのスワイプ)
・長押しからのスワイプ
・画面上部と下部のようにエリア分け
・etc...
などの方法があると思いますが、操作方法が多すぎると混乱しがちです。
他に、操作モード切り替え用のUIボタンを配置する方法もあります。
操作がシンプルになりますが、画面がごちゃつくのと、素早い操作は難しくなるデメリットがあります。
本ゲームの場合は、カメラの上下方向の回転は不要なため(島以外を眺めることはないので)カットされていますが、そのように操作を絞り込むことも大切になります。
カメラ操作を考えてみよう
あなたの遊んでいるゲームや、開発しているゲーム、構想しているゲームで、2D/3D問わずにカメラ(視点、マップ表示など)を操作させるシーンはあるでしょうか。
その場合、今より操作方法を絞り込んでシンプルにすることは出来るでしょうか。
あるいは、操作モード切り替えボタンを配置した方が親切でしょうか。
また、もしスマホ版やコンシューマ版に移植をすると考えたときに、どういう操作方法にするべきでしょうか。
そのときにはどのような制約が出ることが考えられるでしょうか。
■プログラマーの視点
カメラ操作はプレイヤーの快適さに大きな影響を与えます。
しかし、実際にゲームを動かさないことには、どんな操作が快適なのか分からないものです。プログラムによる調整と試行錯誤が必要になるでしょう。
一発で快適で完璧なカメラ操作の仕様が上がってくるとは考えにくいです。
プランナーやデザイナーと早い段階から連携し、ときには仕様策定の段階から相談に乗りながら調整をしていくのが良いでしょう。
皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。
本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。
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