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#20『MOAI - My Own Ark Island』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)「確定する前に結果プレビュー」

本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発者や、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。

前回:#19『MOAI - My Own Ark Island』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「スワイプ操作での位置確定」

ゲームの紹介

『MOAI - My Own Ark Island』は、小さな島に建物を配置していき、得点を重ねていくスマホ用のカジュアルパズルゲームです。

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MOAI - My Own Ark Island / Fatline Games

本作は一人用のボードゲームのようなルールとなっていて、手持ちの建物を島に配置していくことで、配置場所に応じて得点を獲得していきます。

例えば「鍛冶屋」の配置得点は、
「岩」の近くに置くとボーナス+2点
「倉庫」が近くにあると更に+5点
・ただし「鍛冶屋」同士が近くにあると-5点
のように、建物同士の相互関係で決まってきます。

プラスの相互作用を狙いながらも、マイナスの相互作用を出来るだけ起こさないように配置場所を選ぶのが、本ゲームの頭を使うポイントですね。

得点が一定になるごとに追加の建物を引くことができますが、得点が足りなくなるか、島の中にそれ以上建物を配置できなくなったらステージは終了。

規定ポイントに達していると次の島に進める、というゲームの流れになっています。

(※注:本作は、Steamで配信されている『ISLANDERS』というゲームとのルールの類似点が指摘されているようです。興味があればそちらのタイトルもチェックしてみてください)

配置確定前のスコア表示

本ゲームは、建物を配置するごとにスコアが加算されるのですが、位置の「確定」を行う前に、何点獲得できるのかという結果が表示されます。

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獲得できるスコアがプレビュー表示

これによって、自分が納得いく結果になるまで位置を調整してから、満を持して「確定」ボタンを押すことができます。

もしも、この事前のスコア表示のシステムが無かったらどうでしょう?

・どの建物に相互作用を発生するか調べて、記憶する必要がある。
・獲得スコアの合計を、脳内で計算する必要がある。
・範囲ギリギリの建物が、本当に範囲内か確認が必要。
・「確定」操作をした後に期待したスコアを得られなかったらガッカリ…。

きっと、かなり遊びにくいゲームになってしまうことでしょう。
(※記憶力や計算力、注意力といった別のゲーム性が生まれてこないわけではないですが、一人用パズルゲームとしてはあまり適していないかと)

何か操作を確定する前に、結果をプレビュー表示してあげることは、親切になることが多いでしょう。

もちろん、RPGのバトルシーンで「次の一撃で倒せるか倒せないか分からないドキドキ感」や、育成レースゲームで「出場するレースで1位を取れるか分からないドキドキ感」のように、結果を先に出したら興ざめの場合もありますが……。

他ゲームでのプレビュー例

例えばRPGの武器屋では、武器を買う前に攻撃力が何ポイント上がるのか下がるのか、結果が表示されているのをよく見かけますね。

もし、装備を買った後にしかパラメータ変化が分からないシステムだと、買ってみたら今より弱い武器だったからロードしてやり直し……のようにストレスが溜まることと思います。

他にも、『ファイアーエムブレム ヒーローズ』では、戦闘後の敵味方のHPがどうなるか、結果がプレビューできるシステムになっています。(他のFEシリーズと異なり確率の要素が排除されています)

その結果、
「このユニットだと倒すのに1足りないのか……。じゃあ、先に支援効果をつけて……」
というように、まるで詰将棋のごとくユニットの動かし方を考えることに特化したゲームデザインとなっています。

バトル前から結果が分かるのはドキドキ感がないと言えばそうなのですが、スマホゲームに適した、誰でもカジュアルに遊べるシステムという意味では良いデザインと言えるでしょう。

落ち物パズルゲームでは、ブロックを落とした先の位置が表示されているものもあります。このようなプレビューは、ユーザーの誤操作(隣の列に落としてしまった!)を防ぐため、操作性の向上にも繋がりますね。

確定する前に結果表示、を考えてみよう

あなたの遊んでいるゲームや、開発しているゲーム、構想しているゲームで、このように結果を先にプレビューさせた方が親切な箇所はないでしょうか。

■プログラマーの視点
結果を先にプレビューさせるということは、実際にバトルをしたり、アクションを起こしたりする見た目の処理とは別に、「結果判定」のロジック処理だけをきちんと独立させて分離しておく必要があります。

(必要に応じて、ではありますが)メンテナンス性の向上にも繋がるので、演出部分と結果判定部分を分けたコードを作ることも意識してみましょう。

皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。

本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。

他の連載記事はハッシュタグ「#ゲームデザインの引き出し」からどうぞ。

(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)