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旅立つ日を選べるとしたら。

20年を共にした愛犬が旅立った。

ある友人がこんなことを言ってくれた。

毎年訪れる命日が、幸せな日であるように。
悲しみが少しでも癒されるように。
彼の優しいはからいなのかもしれないね。

それはちょうど仕事を終えた頃で、母からの電話に応じることができた。
時折起きていた発作の最中ではなく、普通に1日を過ごし、最期に2度鳴いて、一番世話をしていた叔母がちょうど居て最後に抱き上げた、と。

春のきざしを少しずつ感じられる、2月のある木曜日。
夜が明けると、否応なく明るい気分にさせられるような晴れだった。
1日だけいつも通りに仕事をし、笑うことで、気分も紛れた。
日曜日、お別れの日は暖かく、集まった家族が自然と他愛ない話がはずむ、うららかな日だった。

家族にとってこれ以上にない、彼が旅立つにふさわしい日だった。
沢山の視線と手によって守られてきた彼が、きっとみんなのことを想って選んだ日だ。


そして彼の命日は、私の大切な人の誕生日だった。
冒頭の言葉は、そう聞いた友人が贈ってくれた言葉だ。
私は、彼のそばに居た家族たちに感謝と尊敬の気持ちがいっぱいで、
彼との最期の時間も、感情も、思い出も、その家族たちのためにまずはあってほしいと思っていた。
だから、この言葉をきいて、泣いてしまった。

そうだよね。
私も、あなたのことが大好きだった。
私にとって、あなたは特別な存在だった。
ものすごくさみしい。
もう一度、触れたい。
もう一度、会いたい。

家族のだれにもこのことを言ってないけど、
"彼のやさしいはからい”は私だけの秘密で、
私と彼とのあいだの約束で、
そうやって信じて、毎年この日を過ごしたいな。

ありがとう。本当にありがとう。
ずーっとずっと、大好きだよ。


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