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とある電車の中で

こないだ、電車の中で素敵なことがおこりました。いや、起きてること自体は全然素敵でないかもしれないけど、日頃満員電車の状況を冷静に面白いな~と思いながらおっさんのお腹に挟まれてる私からすると(?)、素敵だった。

私の隣に立っていた20代草食系と思われる男性が、もう、それはものすごい勢いで立ち寝をしていた。で、もう崩れ落ちそうだったから、私の目の前の席が空いたときにトントンして、「座った方がいいですよ。」と前の席を勧めた。

だけど、その男はなんの優しさの発揮なのか「いえいえどうぞ」と私に譲り返してきた。私が渋って説得していると、その席の隣の小太りの男性も加勢してくれて、だけど「どうぞどうぞ」の一点張り。

その席は誰も座ることのないまま数駅過ぎたのだけど。ぐわん、と大きくその人が倒れそうになり、向こう側にいたおばさんと仕事のできそうなお姉さんも、「心配なので、座ってください!」「あなたが座ればみんな安心するので!!」とかなり強めに説得し、渋々その男は座った。

さっきの隣の小太りの男性は、知り合いかと間違われるくらい優しくて、その男のキャリーバックを支え続け、「どこで降ります?寝てたら起こしますんで。」と下車駅を握った。

途中席から床に崩れ落ち、それを助けているうちに、周りの乗客どうしで相談が始まり、誰かが「非常停止ボタン押しますか?」と聞き、「いや、それほどじゃないわよ」と答え、結論は「その人が降りる駅のちょっと前に起こし、どうにか降ろす」となった。

途中その男を説得して座らせたおばさんは「よろしくおねがいしますね。お先に。」と降車し、新たなダンディーなお兄さんも心配そうに加わり、ついにその男の駅が近づく。

仕事のできそうなお姉さんがトントンしたり耳元で声をかけても起きる気配をみせなかったため、私は男の膝をバンバンとかなり強めに叩き起こした(笑)駅に着いたとたん、打ち合わせたわけでもないのに、誰かがキャリーバックを運び、私と誰かがその男を支えながら降り、誰かが駅員さんを呼びにいった。

そんな最高なチームは、駅員さんにその男を引き渡して、お互いにおじぎをしたあと、何事もなかったかのようにそれぞれに散っていった。停車中のたった数秒のできごとだった。私は、このおせっかいな刹那のチームがすごく好きになった。

別に、放っておいてもよかったその男。実際、私たちの周りで物凄い顔で見ていた人、知らんぷりで音楽や本に没頭してる人もいた。みなさんがその車両に居合わせたら、どうしたでしょうか?

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