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私のパーフェクトデイズ


私は随分と前の日々に、記憶の旅をした。


先日遂にパーフェクトデイズを観ました。

映画を観た後、フッと微笑みながらため息をつくような、暖かくてそして寂しげな気持ちになった。

自分の中にあるパーフェクトデイズ。

貴方の中にあるパーフェクトデイズ。

人生の中で自分と向き合う時間が途方もなく長いように感じる。誰も自分からは逃げられやしないのだと。
そして誰も他人のパーフェクトデイズを覗くことは出来ないのだと。

それは、自分の見ている世界が誰のものにもならないこと。ひょっとしたら”世界”は他のどこかにあって、自分はその”世界”と隔離されている存在なのかもしれないと疑う瞬間がある。そんな時、自分がまるで水槽に泳いでいる魚のように感じて、たまらなく心細く、孤独になる。

それでも私達は、今この瞬間に見ているものや感じていることを根気強く信じ続けなければいけないのかもしれない。

今を信じ続けるのも難しいのに、誰が未来なんかに自信や希望が持てるのだろうか。



未来の日々の美しさを想像することは難しかったけど、過去の日々の美しさのかけらはまだ私の中に沢山残っていた。記憶というサングラスを通して蘇る思い出は本当に綺麗だ。

私の過去のパーフェクトデイズに存在した沢山の人にありがとうとごめんねを言いたい。

大切な人を傷付けた記憶、たまらなく胸を締め付けられた辛い記憶。今にたどり着くために手放したもの、その時の自分で精一杯愛した人たち。もう私の日々には登場しないけれど、この世界のどこかで元気にしているといいな。

今という時間の中に存在する小さな幸せ達。私たちはどんどん迫ってくる近しい未来に対向するのに必死で、つい今あるものに心を開いたり耳を傾けることを忘れてしまう。

過去の記憶はあまりにも簡単に変えることが出来てしまうから、字体を変えたり、フィルターをかけたりと、時間が経てば、きっと全てがパーフェクトなものに変わる。

最期には、きっと絶望も歓びも全部パーフェクトだ。

だから絶望も愛しい日々も美化して、そして大切に箱にしまってベッドの下に隠しておこう。そうしてその綺麗に彩られた過去を希望に変えてまた明日も頑張ろう。



過去はいつも私の味方だった。


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